118話 ひま

「ひまだ〜」


 9月。退院した俺はいつものように学校に行った。今日は始業式とかホームルームとかで終わった。午前中だけで午後から部活。


「ほらほら、文句言わないの。祐くんは今週いっぱいは部活禁止。1カ月はボール投げるのもダメだからね」


 あのあと進たちにめっちゃ文句というかなんというかいろいろ言われた。これに関しては俺が100%悪いので何も言えなかった。


 そしてみんなで俺の今後について議論され、さっき葵が言ったようなことになった。満場一致の結果だった。ちなみに俺に投票権はなかった。


「でもこんな暑い中みんな頑張ってるのに俺だけこうやって木陰で休んでるのってすごい落ち着かないんだよな」


「そんなこと言ってもダメだからね。今は大人しくゆっくりしててよ。春香ちゃんに言って祐くんが動かないかちゃんと見ておいてもらわないと」


 いやいや、そこまでする必要ないでしょ。どれだけ信用されてないのよ。


 葵はいちおうグランドに行ったけどチラチラと視線を感じる。練習に集中してください葵さん。


「はぁ、本当にひまだ」


「それは私がいつも暇してるってことかな?」


「うわぁ!」


 ニュッと出てきたうちのマネージャー(進の彼女)雨宮さん。


「いや、そんな意味で言ったわけじゃないよ。こうやってみんながやってる間何もすることなくてね」


 雨宮さんは全然暇人じゃない。ドリンクを作ってくれたり、バッティングの時トスをあげてくれたりetc etc。


「なら休んでも良かったんじゃないの? みんな部活休んでと良いよって言ってなかった?」


 確かに言われたけどもそれで、じゃバイバーイはさすがに無理だ。みんなが頑張ってるのね。


「いちおうグランド顔は出さないと俺がね」


「ふうーん。ただ神子戸くん初めてでしょ。こうやって外からチーム見るの」


 そりゃ初めてだ。小学、中学、高校と自慢じゃないが部活も休まなかったし試合にも1年生でも出てたし。だからここで休んでるのがすごい違和感。


「でも外からじゃないとわからないこともあるよ。中からじゃ分からない私たちのチームの欠点っていうか弱いところがね」


 中からじゃ分からないチームの弱いところ。雨宮さん進といる時はすごいデレデレらしいのにこうやってみるとなんか普通にすごい人だな。


「神子戸くんが失礼なこと考えてるっぽいけどまぁいいや。私はノック始まるらしいから玉出し行ってくるから」


 雨宮さんはグランドに行ってしまった。そしてノックが始まった。いつも通りの風景。


 と、思ったんだが…



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