106話 写真

「まずはあれに乗ろうよ!」


 カチューシャをつけた葵が指差したのは「海底2万マイルン」水中を移動していくアトラクションらしい。待ち時間は…お、待ち時間0分!というわけで俺たちは元気良くアトラクションに乗り込んでいった。


 ◆◆◆


「すごい楽しかったね〜!」


 やばい。めっちゃ楽しかった。少し怖いキャラが出てきたけど迫力があってめっちゃ良かった。これは次も期待出来る。


「次はどこいく?」


 マップを見ながら相談するが、どこに行っても楽しい気がする。


「ならさ、どこに行くか考えないで適当に着いたところのやつにしよ。広いんだしさ、それでも楽しそうじゃない?」


 葵の提案にみんなオッケーして俺たちはぐるぐる回ることにした。


「じゃ、ここだね。私たちが最初に着いたアトラクション」


 いろいろ歩いてついに到達した。ただ回ってるだけでもすごい楽しい。本当の夢の国ってこんな感じたんだろうなって思う。


「えーと待ち時間はと…2時間か」


 まだ開園して1時間くらいしか経ってないのに。やっぱり人は多い。


「私は良いけど祐くんと鈴ちゃんはどうかな?」


「俺は全然大丈夫。むしろ乗りたい」


「鈴もお兄ちゃんと同じ」


 そう言うことで2時間待つことになったんだけど全然苦じゃない。楽しいまである。なので2時間3人で楽しく喋りながら自分たちの順番が来るのを待っていた。



 ◆◆◆



「祐くん、私ちょっと怖かったかも…」


 葵まさかの少しダウン。ジェットコースターだったんだがそんな怖い感じはなかった。スピードがあって楽しかった。ただ世界観がすごいしっかりしていて、待つために並んだところとか、ジェットコースターが走ってる時とかいろいろ凝った細工がしてあった。横にいる2人も「すごいね」とか言ってた。


「葵、大丈夫か?具合が悪くとかない?」


「うん、大丈夫。心配してくれてありがとう」


 なんの問題もなくて良かったけどあれだけ言ってた葵がこうなるのは意外。


「それより、んー! 祐くんとの写真いっぱい!」


「葵ちゃん今の待ち時間だけですごい撮ってたよね。私もとも結構撮ってたけど」


「そりゃ1枚1枚が私の大切な思い出になるからね。たっくさん撮っておいて損はなし!」


「お兄ちゃん愛されてるね、このっ!」


 鈴に痛くないひじ打ちを食らった。兄をからかうのはやめてね。


「これは祐くんフォルダに入れてと…」


「ん?」


 なんだ今の「祐くんフォルダ」とは。初めて聞いた怪しげな名前。


「葵。そのフォルダってなんだ?」


「え?それはその…こんなの…です…」


 見るとただ俺も葵が一緒に撮った写真が保存されてるだけだった。と思ったら


「なんで俺の寝顔写真まであるんだ」


「え?それはその…いつものキリッとした感じとか真面目な感じと違って可愛かったから。絶対消さないからね!」


 肖像権とは。と言いたくなるけど、まぁ葵がここまで言ってるのでこれ以上言わないことにする。


 でも絶対俺も葵の寝顔写真撮る。だって可愛いもん。

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