99話 旅行へ行くよ

「鍵は閉めた?」


「オッケーオッケー」


「それじゃ行こうか」


 お盆になりました。予定していた旅行の日。今の時刻は8時くらい。前に焼き肉を食べに行った時みたいにみんなで車に乗って行くのかと思ったら。


「タクシー使うって大丈夫なの?もうお金めっちゃ使ってない?」


 わざわざタクシーを呼んで駅まで行くらしい。確かに荷物とか多いし妥当かもしれないけど、うちってそんなにお金持ちじゃないよね。


「どうした祐輔。何か心配事か?」


「いや、なんでもない」


「お金なら心配することないぞ。この夏はボーナスをたくさんもらえたんだ。それに母さんも仕事で祐輔と鈴音には迷惑かけてるところもあるからな。今日は一切気にせず遊んでよろしい」


 なんか今日の親父は神に見える。朝に両親がいないのも迷惑とか思ったことはない。


「祐くん、おはよう」


 俺が親父を崇めている間に横の家の葵も出て来た。スーツケースをゴロゴロ言わせてうちの方へやって来る。


 うん、今日も可愛い。俺と目が合うとニコッと笑って首に付けたペンダントを見せてくれた。俺もペンダントを見せてながら服もアピールする。


 この服は葵の誕生日の翌日に葵から貰ったもので、俺と同じくサプライズで夢シティで買ってくれたらしい。


 ヘビーウェイトTシャツに黒スキニー。出かける前に鈴に聞いた総評は


「Tシャツのブルーグリーンが、夏らしい爽やかな印象を演出してるね。お兄ちゃんすごい大人っぽい。東京でナンパされないように。それにしても葵ちゃんすごいセンス良いね。私よりお兄ちゃん知ってるかも」


 だった。なかなかに葵のことを褒めていた。そう言えば鈴と張り合ってるようなこと言ってたような。


「どうかな葵。前に一緒に夢シティで見たやつだけど実際こうしてみると」


「うん。すごいかっこいいよ。やっぱりナンパされないように私がしっかり祐くんを守らないと」


「いやいや、葵の方がめっちゃ可愛いから。俺がナンパから守らないと」


「はいはい。お兄ちゃんたち朝からイチャついちゃダメだよ〜。タクシーも来るし行こう」


 見るとほんとに家の前にタクシーが来ていた。まさかの三台も。2家族一緒だからって奮発するね。


 そのあとタクシーに乗って駅に行きました。




「今日人多いね」


「そりゃお盆だから」


「お兄ちゃんお兄ちゃん! 新幹線来るよ!」


 駅のホームにやってきた。うちの最寄りの新幹線が停まる駅は残念ながらめっちゃでかいわけではないので通過するものもある。


 ジューンとキンキンする音を立てて新幹線が通過するのに鈴はすごいはしゃいでいる。鈴は新幹線に乗るのはどう2回目なのでこんなのがすごい楽しいらしい。


「お兄ちゃんすごいね! すごく速い!」


 まるで小学生の男子みたいに目をキラキラさせてる。


「祐くん、楽しみだね」


「あぁ、めっちゃ楽しみワクワクが止まらん」


 この二泊三日とっても最高になりそう。

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