97話 花火大会
「祐くんどうかな?」
「うん、いつも通りめっちゃ可愛い。でもこういう格好ってなかなかないから新鮮さがすごいある」
今日は8月の上旬。俺たちが住んでる市の花火大会の日。旅行に行くとになったけれどそれだけが夏のイベントではない。うちの市は毎年恒例で花火大会を打ち上げるイベントがある。結構大きいものでかなりの人が観にくる。市を挙げての一大イベントだ。
「えへへっありがと。祐くんも良いねクールな男性って感じがするよ」
花火大会といえば浴衣ということなので浴衣を着て花火大会の会場へ向かう。カランカランとする下駄の音がすごく風流だ。
「私、久しぶりだな。ここの花火大会。引っ越しちゃったからその間見てないんだよね」
「あぁそれ俺も」
「へ? どうして? 中止だったの?」
「いや、毎年盛大に行われてたよ。家まで花火の音が聞こえてきたもん」
「なら、どうして?」
「いや、ただ葵がいなかったから…花火は葵と見たかった」
葵がいなくなった小6の夏は落ち込んで行けなくて中学からは他のハードボール部のやつも彼女出来てしまって俺いける雰囲気なかったし。
「なら、私たち花火大会は久しぶりなんだね。うーん! そうなったらもっと楽しみになっちゃったよ!」
下駄をカランカランさせて俺の手を引っ張る葵の姿はなんて言うか、変わったようで変わってなかった。
「着いたね〜なんか懐かしいな」
河川敷に屋台が並んで良い匂いをさせている。人もかなりいてやばい。でもなんか屋台からいい匂いもしてる。
「祐くん祐くん! 私、たこ焼き食べたい!あとねあとね! 焼きそばも食べたい!それにそれに!」
葵がちびっこのように目をキラキラさせて早く早く! と急かす。
「ほら、離れないように」
そう言って離れていた手をギュッと握りなおす。横で子供たちが走って俺たちを抜かしていく。
「私たちもああやって来てたよね。はしゃぎ回ってね。それで迷子なっちゃったんだよね」
そんな時もあった。あの時は葵と逸れて俺もかなり焦った。小3と俺はあの時調子に乗って俺たち2人で行けるっていってしまったので本当に怖かった。
「あの時見つけて貰って嬉しかったなぁ。祐くんと離れてすごい怖かったし不安だった」
あの時河川敷の階段に座って泣いていた。わんわん泣いていたわけじゃないけど一雫頬を伝ったあの時を俺は忘れない。
「大丈夫。今日は絶対離さないから。俺から手を離すなよ?」
「あ、今の祐くんすごいかっこいい! よし! まずはたこ焼きだ! 行くよ祐くん!」
俺の手を引っ張って屋台の方へ駆けって行く葵についていきながら次はどこいこうかなとか俺も考えていた。
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