95話 Happy Birthday (13 Last )

 今、ベットで葵と一緒に寝てる。それだけならまだ良いけど今は正面からガッチリホールドされている。さっき俺がやってしまったので目が完全に覚めたらしい。


「祐くん良いじゃん!さっきみたいにキスしてよ。そうじゃないと私ちゃんと寝れないよ」


 抱きついて上目遣いでそう言ってくる葵。あざとい。上目遣いってまじで破壊力やばい。ただ、まだ俺は葵が寝ていると思ってキスしたり、カッコつけたセリフを言ったのを聞かれたという恥ずかしいダメージから立ち直れていない。


「あぁ、恥ずかしい。まじで恥ずかしい。穴があったら入りたい。そのままずっと出たくない」


 ちなみに寝込みを襲おうとしたって言うのはすぐに撤回された。あれはちょっとからかいたいだけだったらしい。


「んもう。祐くんそんなに恥ずかしがらなくても良いよ。私が寝たところでそういう事を言ってくれるのはダメだけどね」


 いや、寝たところで言っても良いではないですかと言いたかったけどたしかに「好き」とかはちゃんと本人が起きている時に言うってのも納得だしここは黙っとこう。


「寝そうになってた時とはいえ祐くんも私とまだキスしたかったんでしょ?なら良いじゃん。祐くんしようよ〜」


「いや、そう言うわけじゃないんだけど」


「ならどんなつもりで私にしたの〜?」


 そう言われると何も言えない。俺もなんだかんだ言ってもうちょっと、ほんの少しだけ、したかったのかもしれないと思ったから。


「ほらほら〜。祐くん黙ってどうしちゃったの〜?」


 葵がたぶん俺の思ってること分かっていて、からかってくる。悔しいので俺も少しやり返す。


「ふぁ〜もう俺はすっごい眠いから寝ちゃお」


 それを聞いた途端に葵が慌てだす。


「ちょっと待ってよ祐くん!この流れはどう考えてもキスの流れだよ!?それにさっきのでキスしたいスイッチが入っちゃったんだから!」


 どんなスイッチだよと思いながらも、俺は寝たふりを続ける。いずれ諦めて寝てくれるだろう。


「ふーん。祐くん寝ちゃったんなら、祐くんが私にしたみたいにいろいろしちゃっても良いよね。あんなこととかこんなことしても祐くんは寝てるから分かんないよね」


 葵が俺に抱きつくのをやめて上体を起こす。目を瞑っているので実際に見えてはないけど。俺の耳元に葵の吐息を感じる。いや、近い近い!でもここで目を開けたら葵の思う壺。いろいろ言っても葵はしてこないはず。


「ふぅっ」


 耳に息を吹きかけられた。一瞬ビクッとしたけどなんとか耐えることに成功。俺の精神力はかなり高いらしい。


「よしよし、祐くんしっかり寝てる、寝てる。それじゃ...」


 口元に吐息が。まじでするつもりなのか?


 と、思ったのにいつまで経ってもなんの感触もない。ほんの少しだけ目を開けるとそこにはニヤニヤした葵の顔があった。


「あれ〜祐くん寝たんじゃなかったの?」


「やられた。葵あれはずるすぎ。俺が起きてるの分かってやってただろ」


「そりゃそうだよ。あのままキスした方が良かった?」


「いや、やっぱりちゃんとしたいかも」


 寝てる時にされてもなんか寂しい。ちゃんとお互い感じ合える方がいいと思う。


「じゃ、しちゃおっか」


「うん」


 そう言って俺たちは数回、し続けた。葵はキス魔だとか言ったけど俺もそうなのかもしれないと思いました。


「Happy Birthday 葵」


「うん、ありがとう祐くん」

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