92話 Happy Birthday (10)
「ふぅっ。えへへこんばんは、祐くん」
俺はヘッドホンを外して驚きのまま葵に聞いた。
「い、いや急に何してるんだよ!?」
「祐くんの部屋開けて呼んでも返事してくれないし、目瞑ってるけど起きてるっぽかったからそういうことかなって」
いたずらっぽく笑う葵。確かに葵が俺の部屋に来たことなんて気づかなかったけど、そういうことじゃない。
「いろいろ言いたいことはあるんだけど何故ここに葵が?」
「だって祐くんマッサージしてくれるって言ってたから。それなら祐くんの家に行ったほうが良いよねって思ったの」
そう言えばそんなことを言った覚えがある。葵がボソそっと「マッサージとか関係なく今日は祐くんと寝るつもりだったけどね」って言ったのは多分空耳だろう。それ以外ないな。
ただ、マッサージされるのはまだしも葵にマッサージするなんて。でも1つ分かったことがある。葵はキス魔だ。かなり重症の。まぁそれは良いんだけど。
「それじゃ、祐くんお願いしまーす」
葵はなんの躊躇もなく俺のベッドにだいぶした。
「本当にするつもりなの?」
「そりゃもちろん。私、すっごく楽しみにしてたんだよ?」
ここまで来たら葵が何を言っても引かないってことは分かってるので俺は覚悟を決めてマッサージをすることにした。マッサージの心得はあるので失敗はしないと思う。
「それじゃ、始めるよ」
俺はそう言って前回葵が俺にしてくれたみたいに足の方から揉んでいく。
そこでびっくりした。葵はキャッチャーをしていて足腰はかなり鍛えられている。でも今すごく柔らかい。
「へぇ。すごいな」
「ん?どうしたの?祐くん」
少し口から漏れてしまったらしく気になったらしい。俺が思ったことを言うと葵が不満げに言った。
「祐くんは私をなんだと思ってるの?確かにキャッチャーしてるけどそんな筋肉カッチカチじゃないもん。私は女の子なんだよ?祐くんのことが大好きな女の子なんだからね」
膨れっ面の葵を見ながら俺は反対の方の足を揉んで言った。葵が言った言葉の破壊力が凄すぎて顔を背けるにはちょうどよかった。
「はふぅ、祐くん上手いね」
足しかしてないのにすごい気持ちいいらしい。しばらくして足を充分にマッサージし終わった。
「はい、終わったよ葵」
「え?祐くんまだ足しかしてもらってないよ」
「いや、それ以上は無理だよ!?俺が恥ずか死ぬ!」
「いいじゃん、いいじゃん!」
葵が言うことを聞いてくれないので足の方にいた俺は葵の頭の方へ移動した。
奥義を見せる時が来たみたいだ。
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