90話 Happy Birthday (8)

 葵にプレゼントを渡して喜んでもらえたようで良かった。あとはブラックのペンダントを俺が付ければ終わりだな。そういうことで箱の中に残るもう1つのペンダントに手を伸ばそうとしたのだが...


「それはダメ」と葵に箱を遠ざけられてしまった。


「もう、祐くんたら。祐くんだけずるいよ...私もペンダント付けさせてあげたい」


 ペンダントの紐の部分を両手で持って葵が一歩、俺の方へ距離を詰める。そしてゆっくり腕を首に回していく...


 のだが、さっき俺が葵に付けた以上に近い。そんなに近くなくても付けられるよねって思うんだが。


「うーん。なかなか付けられないなぁ。難しいなぁ」


 絶対うそだ。何回も付けては外してを繰り返してるもん。ただそんなことをされ続けるといろいろまずい。女の子の柔らかさだったり...etc、etc。


 とまぁ危険な状態だったりする。


「葵、もうさすがに出来ただろ?」


「うん。こんな感じかな」


 ようやく葵が離れてくれた。まだ感触は残っているのだが。


「うんうん。祐くんも似合ってる似合ってる」


「それなら良かった。それじゃ...そろそろ帰ろうか。ちゃんと葵にプレゼント渡せたし、この噴水を2人で見れたし」


 俺が考えていたプランは全部できた。後に喜んでもらえるか不安だったけどすごく喜んでくれて。葵の笑顔が見れて俺は俺も満足だ。


「え?祐くん、もう帰っちゃうの?」


「まだ、どこか行きたいところとかある?あるなら今日はとことん付き合うよ」


 俺の当初の目的は終わったけど、葵がどこかに行きたいって言うのなら、俺は最後まで付き合ってあげたい。今日は葵の誕生日だし。そうでなくても出来るだけ葵の要望に応えたい。


「行きたい場所とかじゃなんだけど...」


「ん?どうした?なにかある?」


「もう、絶対分かってるでしょ!」


「だってここけっこう人いるよ!?めっちゃ勇気いるんだけど」


「なら、勇気出してよ...それとも祐くんは私としたくない?」


 いやなわけない。そういうのじゃなくてここは前みたいに人が周りに居ないわけじゃないから。もししちゃったら絶対注目の的なわけで...


「分かった。俺も勇気出すよ。俺だって葵としたい」


「んっ...」


 俺が言ったの瞬間、間髪入れずに葵は俺に抱きついてキスして来た。驚くほど柔らかい感触が俺の体全身を駆け巡る...前回したのとは全く違う。長い時間ずっとそんな感じだった。


「ふぅっ」


「祐くん...もっと、もっとしたい...」


 そう言って腕を首に回して口を近づける。そのまま何回も葵とキスをした。





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