89話 Happy Birthday (7)

 喫茶店を出た後は目的の場所に行くだけだ。日も沈んですっかり暗くなってる。うん、いい感じだ。


 しばらくすると目的の場所についた。やってきたのはとある公園。入場料はもちろん無料。中に入ると見えてきたのは大きな噴水。俺たちが住んでいる西日本の中でも最大の規模らしい。


「すごい...」


 葵の口からそんな言葉が漏れる。俺も初めて見たけどすごいと思う。この公園は1年くらい前にできたので葵も知らないと思う。テレビとかで見たかもしれないけど、やっぱり行ったことはなかったらしい。


 ライトアップされていてかなりロマンチックな感じがする。葵は噴水に見惚れているようだった。


 その隙に鞄から葵のプレゼントを取り出す。光り輝くローズゴールドカラーとブラックのペアペンダント。葵は気に入ってくれるだろうか。少しの不安とドキドキと共に俺は葵を呼んだ。


「なに?」と葵が俺の方を振り返る。そっと近寄って葵の前にプレゼントの箱を差し出す。


「誕生日おめでとう、葵。これは俺からのプレゼント。受け取ってくれると嬉しい」


 葵はハッと俺の顔を見た後、嬉しそうにはにかんだ。そして俺の差し出した箱をおずおずと受け取ってくれた。


「う、嬉しい祐くん...ありがとう。私、本当に幸せ者だよ...」


 ニコッと笑顔を見せてくれる葵。俺はこの葵の笑顔が大好きだ。俺の方まで笑顔になってしまう。


「開けてみてもいい?」


「もちろん」


 葵はゆっくりと箱に飾ってあるリボンを外し、そっと箱を開けた。


「祐くん、これは?」


「ペアペンダントだよ。前に夢シティに行ったときに見つけて、葵の誕生日プレデントにしたいなって」


 葵はペンダントを手に取って眺め始めた。


「すごいきれい。ハートの中に1と2が入ってるけどどういうことなの?」


「それは葵、もう意味分かってるだろ?」


「ふふふ。そうだね。でも私たちにしか分からないよ」


「葵と俺さえ分かれば良いよ」


 パズルの部分に文字を彫ってくれるサービスがあった。普通はみんな英語で「I love you 」とか

 短く文だったりお互いの名前を彫って貰うらしいんだけど俺はそうはしなかった。


 1と2。これが意味するのは俺たちの背番号。1が俺で2が葵だ。店員さんもどういう意味?みたいな感じだったけど他の人に分かってもらわなくてもこれは俺たちが分かっていれば良い。


「祐くん、付けても良い?」


 葵が1つのペンダントを持って俺に尋ねる。1と彫られたローズゴールドカラーの方。迷いなくそっちを選んだ。もちろんそっちが俺が葵に付けて欲しいやつだ。


「貸してみて」


 俺はペンダントを受け取って葵に付けようとした。でも付けようとするには首に手を回さないといけないわけで、そうすると自然とかなり葵と密着してしまうわけで...


 緊張しててが震えてしまう。早く付けないといけないのに。10秒くらいしてようやっと付け終わった。普通これくらい一瞬で出来るものなのに。


 一歩離れてちゃんとできてるか確認する。


「どうかな?葵」


「うん。祐くん本当にありがとう。とっても良い!これ付けてると祐くんが私を見守ってくれてる感じがする」


 そうやって笑った顔をみてやっぱり葵の笑顔は最高だと実感した。

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