86話 Happy Birthday (4)

 シャワーを浴び終わって俺は庭へ出た。葵も着替え終わっていて焼いているお肉を見ながら楽しそうにしていた。


「祐くん!はやくこっちに来て!すごくいい匂いがするの!」


 たしかにもう焼いているお肉のいい匂いがあたり一面にしている。この匂いだけでご飯食べれる。いや、無理だ。ちゃんと肉を食べてご飯食べたい。


「それじゃ、葵!誕生日おめでとう!」


 葵のお父さんの大きな声でバーベキューが始まった。口々にみんな葵におめでとうとか言ってる。俺ももちろんおめでとうと言ったよ。


「葵、17歳は人生の中でもすごく楽しい時なんだからしっかり楽しみなさいよ。最高の彼氏さんがいるんだから最高の1年にすること。これは私からの宿題よ」


「うん!私は祐くんと最高の1年にするから!宿題なんて言われなくても祐くんと居れば最高なんだから!」


「葵は恵まれたな。こんな良い彼氏いないぞ、普通。祐輔君を大切にしろよ」


「うん!私とってもとっても祐くん大切にする」


 俺を恥ずかしくて死なせるつもりなんだろうな。自分の親に見られてて。


 でも俺もそんなのは気にすることもなく、葵の隣に行って焼けたお肉を自分の口に運んだ。やばい。めっちゃ美味い。これ絶対いいとこのお肉だろ。


「はい、祐くんあーん」


「あーん」


 あ、このお肉も美味いな。さっき食べたのがカルビだったからこれはハラミかな。


 ん?おれどうやって今の肉食べた?


 横にはお皿を俺の顔の近くまで持ってきてすごくニコニコした葵がいる。周りでは親たちがニコニコ。無意識にうちにやられてしまった。


「どう?祐くん。家でバーベキューもいいよね」


「そうだね。めっちゃ美味い。遠慮なくたくさん食べれるってのが特に」


「それじゃ、次は祐くんの番ね」


「何が?」


 言いたいことはわかるけどささやかな抵抗。いや、本当は抵抗する必要はないけど。


 葵はそれを分かってか、俺に向けて口を開けた。


「しょうがないな」


 俺は周りに見られて恥ずかしかったけど葵にあーんした。



 ◆◆◆



 その後お腹いっぱいになるまでお肉を食べ続けて、今はお片付け。しっかり片付けるのも大切。葵には休んでて良いよって言ったのにちゃんと手伝ってくれてる。


「祐くん!こっち終わったよ」


「オッケー!こっちも終わるから休んでて」


「私も最後まで手伝うよ」


 そう言って金網を洗っていた俺の横に来て一緒にゴシゴシ洗ってくれた。


「お母さんから出された宿題クリアできそう?」


「もちろん!最高の1年にするよ。祐くんと一緒にね」


 まだ一ヶ月あるからいろんなところに行きたい。葵の宿題達成のためじゃなくて、俺たち2人のために。





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