85話 Happy Birthday (3)
「ただいま!」
葵は元気よく庭でバーベキューの準備をしている葵のお父さんと俺の親父に挨拶をした。
「おうお帰り、葵。祐輔君もお疲れ様だね」
「あ、はい。もう準備してるんですね」
「そりゃ、2人ともお腹空いただろう。はやく食べさせてあげたいからね」
「そういうことだから祐輔も葵ちゃんもシャワー浴びてきて。もう15分もしたら肉を焼き始めるぞ」
親父にそう言われたので俺たちも一度別れてシャワーを浴びることにすることにしたんだが...
「私、今は祐くんと離れたくないし、一緒に浴びる?」
「は?」
いや、そんなことするわけない。そんなことしたら俺が恥ずかしくて死んでしまう。ほんとそういう俺を試すみたいなことをするのはやめて欲しい。俺がじゃあ良いよとか言ったらどうするつもりなんだよ。
「今日なんでもしてくれるんでしょ?なら、それお願いしてもいい...?」
やってしまった。そんなことまで考えてなかった。ふつうにそんなこと思ってもいなかった。
「そ...それは流石にダメです」
「むぅ!良いじゃん!」
「なら、前にしてもらったマッサージ俺がしてあげるからそれで勘弁して」
「え?祐くんが私にマッサージしてくれるの!?やった!なら今日は我慢する!」
やべっしまった。妥協案としてそれはそれでやばい。はやく訂正しないと。
「ごめん、間違えた。今日一緒に寝るだけって言おうとしたんだよ」
「え?私にマッサージしてくれた後一緒に寝てくれるの!?もう誕生日最高だよ」
「え!?ちょっと待って何言ってんの?」
葵、頭がやばい。俺が訂正しようとしたのになんかめっちゃ加わってるんですけど。マッサージは昔先輩にしてたからできない訳ではない。それどころか上手いとまで言われた。
でも葵にするのはわけが違う。俺は女の子にマッサージしたことはない。まして葵にしたら尊くて死ぬ。
「それじゃ、デートとそのあとのマッサージも私すっごく楽しみにしてるね!」
俺がこれ以上何もいう暇もなく葵は家の中に入っていった。
「あら、祐輔くんお帰りなさい」
俺が玄関前に立ち尽くしていると葵のお母さんが入れ違いくらいで家から出てきた。手には肉だったり野菜だったりと盛り沢山のカゴを持って。
「あ、葵のお母さんいま帰りました」
「そろそろバーベキュー始めるからね」
俺は返事をして自分の家に帰ろうとした。のだが
「そういえば今さっき葵が家に入ってきたとき、すごい顔をニヤつかせて帰ってきたんだけど祐輔くん何か知らないかしら?本当に嬉しそうな顔だったのよ」
「いや、俺にはわかんないです。部活で軽く誕生日パーティーしたのでそれじゃないですか?」
「ほんとかしら?あの子の親をして17年になるけどそれじゃない気がするのよねぇ」
この人毎回誤魔化そうにも鋭くて誤魔化し切れてない気がする。
「それと今日のバーベキューの後はあなたたち2人の時間だからね。もしもの時はホテルに泊まっても構わないから。そこで大人の2人になるのも良いかもね」
「それはしません!!」
まじでアウトだろまじで。俺はそこまでしたいわけじゃ...なくはないけどそういうのはまだ早いと思う。
「ふふふ。とにかく楽しんできてね。楽しいのが一番だから。それじゃ私は材料を運ぶから」
葵のお母さんはそう言って庭の方へ行ってしまった。お泊りで大人の2人...
いかんいかん。そんなことを考えてたら、葵がせっかく楽しみにしてくれてるのに。
「シャワー浴びてこよ」
俺は熱くなった頭を冷やすためにも風呂場へ急いだ。
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