83話 Happy Birthday (1)
部活も終わって今は部室の前にある広いスペースのちょうど木陰ができてるところ。葵の誕生日パーティーをするために部室にはマネージャーさんたちも揃ってる。ちなみに先生まで参加することになった。
「それじゃ、みんなコップは持ったかな?」
みんながジュースの入ったコップを持って葵を真ん中にして円を作る。わざわざ大きめのビニールシートを出してお菓子の袋を開ける。これが春だったらお花見だって言われるだろうな。
「ここは彼氏の神子戸くん、音頭とって」
マネージャーの雨宮さんが俺を指名した。一斉にみんなが俺の方を向く。
「それでは...葵!17歳の誕生日おめでとう!乾杯!」
「「カンパーイ」」
同じ光景を少し前に見た気もするけど。前と違うのは主役はみんなじゃなくて葵ってとこかな。こうやって葵の誕生日を祝えるのも5年ぶりか。この5年で結構みんな変わったなぁ。
俺がしみじみそんなことを考えてると雨宮さんがヒソヒソと言ってきた。
「ねぇ、ねぇ神子戸くん。葵ちゃんにプレゼントするもの決めてるの?まさかこのお楽しみ会みたいなのだけとかいわないよね」
「そんなわけないだろ。ちゃんととびっきりのを用意してるって」
「さすが神子戸くんだね。ここまで愛されてる葵ちゃん羨ましいよ」
「いやいや、何言ってんの。雨宮さんにも進がいるだろ」
進と雨宮さんは人前では大人しいけど、2人だけになるとめっちゃイャつくらしい。進情報。
「あはは。そうだね。私はすすむが一番だからね」
俺、何を聞かされてるんだろう。まさか惚気話とか聞かさせるのか。
「それで、葵ちゃんには何をあげるのかな?キスだったり?」
「そんなわけないだろ!アホか!」
この人なかなかやるな。結構グイグイくる。
「ちょっと〜祐くん何話してるの?」
ここで主役の葵が俺のところにやってきた。両手にはお菓子の小袋。なんというか無邪気な子ども感が出てる。それもまた可愛い。
「神子戸くんちゃんとね...」
「はい雨宮さんちょっと黙っとこうか〜」
いや、あれは絶対言っちゃいけないんだからまじで頼むよ雨宮さん。
「むぅ。祐くんが春花ちゃんと仲良い。ちょっと羨ましい」
「いや、これは違うよ!?」
まって俺は浮気とかしたわけじゃない。
「でも大丈夫。私は祐くんが他の女の子と喋ったりしても羨ましいけどダメとは言わないから」
「葵ちゃんさすが、いい奥さんになれるよ」
「えへへ。そうかなぁ。私、いい奥さんになれるかな」
絶対なれる。それは確信してる。俺はそう思う。
「この実は人気者な神子戸くんをずっと射止めてた葵ちゃんなんだからなれるよ」
「そういえばその祐くんモテモテな話私聞いてない」
「いやそんな話じゃなくて別の話しよう」
「じゃあ、私がしてあげる」
「いや雨宮さん、進と喋ってください!」
「すすむとはいつも喋れるもん」
あぁ、この人すごい。進のやつやるな。
俺は空になったコップのジュースを注ぎに行くと言って逃げた。
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