71話 マッサージ

なぜか急に葵にマッサージされることになった。身体のケアは大切だし、何より葵が譲らない感じがしたので大人しくうつ伏せになる。


「それじゃやっていくね。痛かったりしたら教えてね」


そう言うと葵は俺のふくらはぎを揉み始めた。強すぎず弱すぎず。なんとも絶妙な揉み加減。ただ少しくすぐったい。


「葵、マッサージうまいね。どこかでやった?」


「お母さんに将来の旦那さんが疲れて帰って来たときにしてあげるためにってよく教えてくれたの。それでお父さんで練習したんだ」


「ふーん」


葵のお母さんって毎度毎度すごいな。いろいろなスキルを持ってる気がする。


「気持ちいい?祐くん」


まだ足しかして貰ってないけどこれはかなりクセになるかも知れない。


「めっちゃいいよ。ただ人に触られることなんてないから足だけでもけっこうくすぐったいかも」


「なるほど。祐くん敏感なんだね」


「そうかもね」


右足が終わったら、次は左足。ゆっくりゆっくりしっかりやってくれてる。


「将来の旦那さんにやってあげる予定だったのにもうしちゃったなぁ。本当はもっともっと腕を磨いてから祐くんにしてあげたかったんだけど」


「こんな上手いマッサージを受けられるなんて葵の旦那さんは幸せだな」


「そうだよ。私は祐くんを幸せにしてあげたい。だからこういうのも頑張って練習したんだよ?」


顔が赤くなったのがわかる。危ない。今うつ伏せじゃなかったら確実に真っ赤な顔を見られていただろう。たぶん、いや、俺は確実にこういうストレートなことを言われると照れてしまうらしい。


「なら、俺も葵を幸せにできるようにもっと頑張らないと」


そう自分自身に言い聞かせるように言った。ここまで俺のことを考えてくれる人なんているだろうか。絶対世界中を探しても葵だけだと思う。


「もう祐くんったら。そんな祐くんにはもっとマッサージしてあげる」


葵は俺に跨って背中をグッグッっと押し出した。やばい。足とは比べ物にならないくらいくすぐったい。


「あ、ちょっ!葵ストップストップ!」


「じっとしてて祐くん。最初はくすぐったいかもしれないけどだんだん慣れたら気持ちよくなるから」


そのままくすぐったいのを我慢していると葵の言った通り慣れて来た。そうなるとわかる。葵がほんとに上手だと。足の時より葵の優しい手つきを感じれる。


だけどもう限界。睡魔が俺を落とそうとしている。もっとマッサージされてたいのに。


「祐くん眠たいなら寝てもいいよ。昨日今日とたくさん投げたんだしこのまま寝ちゃって」


「それならごめん。もう限界...」


「うん。おつかれ様祐くん。今日は最高だったよ。これならもよろしくね。祐くん大好きっ」


俺は葵の手の温もりに包まれて夢の中へ吸い込まれていった。


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