67話 待ち時間
車に揺られて家に帰ってきた。車の中でも今日の試合のことについていろいろ言われたけど、やっぱり優勝って嬉しい。2位と1位では大違いだ。
◆◆◆
シャワーを浴びて服を着る。なぜか服を選んでくれるのは鈴だけどやっぱりセンスが良いので鈴に今後もお願いしようと思う。本当は自分で選ぶのも考えたんだけどもファッションはやっぱりよく分からない。
「お兄ちゃん。いってらっしゃい」
鈴に見送られて俺は家を出て行った。今回は葵のお母さんが送迎をしてくれるそうだ。
「あら、祐輔くん。こんにちは。早いわね。そうそう優勝おめでとう」
「ありがとうございます。それで...葵は?」
少し早く来たのもあるけど葵の姿が見当たらない。もう車に乗ってるのかとも思ったけどそうでもなさそう。
「あの子ったら、今着ていく服ですごい悩んでるのよ〜。祐輔くんに良いの見せたいとか言っちゃってね。まぁだからもう少し待っててあげて」
「あ、はい。分かりました。でもそんなことしなくても葵は可愛いんだからなぁ。やっぱり女の子ってそういうのに気にするのかなぁ」
「うふふ。祐輔くん、ひとりごとが漏れてるわよ」
うっわ。やばい。流石にそれはやってしまった。葵のお母さんの前でそんなことを言ってしまうとかもう家帰りたい。
「ありがとね祐輔くん」
「え?」
「私の娘にちゃんとそこまで接してくれて。そういえば今日、葵が帰ってきてからやけに機嫌が良いんだけど祐輔くんなにか知ってる?」
「え?」
流石にこれを言うのはまずい。っていうか葵のお母さんも俺に聞かなくてもいいじゃん!そんな質問何があっても答えられない。
「た、たぶん今日優勝したのが嬉しいんだと思います。最後のアウトとってからすごい嬉しそうに俺の方に来てくれましたから」
「あら、そうなのね。てっきりキスでもしたのかと思ったわ。口元押さえてずっとニヤニヤしてたのよあの子」
「いやー、俺にもわかんないですね...とにかくそう言うことです」
「分かったわ。この話は終わりにしましょう。昨日の宣言通り優勝するなんてね。広明って確か全国大会にもよく出てるわよね」
今思うとそうなんだよな。あの全国大会常連の広明に勝つって...すごいな。
「なんて言うか、譲れないって思いました。この大会は絶対に勝たないといけなかったので」
とは言っても次の大会でもガチで頑張るけど。全国大会いくってみんなの長い間の夢だから。
「体には気をつけてね。若いからって無茶すると体を壊すわよ。ストレッチとか、試合後にはマッサージを受けたりするのよ。そうだ。今日、葵にマッサージさせに言っておきましょう」
「え?」
いやいや、なんかとんとん拍子で言ってるけど葵ってそんなスキルないよね。
「祐くんお待たせっ!」
玄関から葵がようやく出てきた。でもやっぱり可愛かった。さすが葵。
「それじゃあ、祐輔くんこの話はまた後でね」
まだ続いていたんですか。まぁなんだかんだでこの話はもう終わっただろ。
「それじゃあ、いきましょう」
俺たちは打ち上げ会場へと向かった。
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