66話 葵は可愛すぎる
一旦家に帰ってから「let'sバイキング」に行くって事でみんなはそれぞれ家に帰っていった。また残ったのは俺と葵の2人。
「祐くん、優勝おめでとう」
「葵もね。おめでとう」
2人顔を見合わせてどちらともなく笑った。でもなんだかずっとソワソワして落ち着かない。葵からもそんな感じが感じられる。
「祐くん、今ここ誰もいないよ」
俺たちは球場の外のランニングコースの横のベンチで親が来るのを待っていた。周りには誰もいなくて俺たちだけの世界みたいだ。
そしてそっと顔を近づけて来る葵。でもここは人がいないとはいえこんな場所でするのはかなり恥ずかしい。
「葵、やっぱりこんな人前はさ、やめたほうがいいと思うよ」
「むぅ、私何回しても足りないくらいなのに」
葵さんなんだか積極性高くないですかね?とは思うけど、葵の気持ちは分からないでもなかった。
自分の大好きな人とキスしたんだ。もう約束を果たした俺たちに止める理由はない。葵もそう言うのを分かって言ってるんだと思う。
「ちょっとならいいよね?」
「あ、いやちょっ」
葵はさっきみたいにほっぺに軽くキスした。ふふーんとしてやったりな顔をしながらも幸せそうな顔もしていた。葵って百面相かよと思ってしまったのはここだけの話で誰にも言ってはいけない。
「葵、人前はアウト」
「祐くん、私がキスしたの嫌だった?」
少し、瞳をウルウルさせてる上目遣いでそんな事を言ってくる。あぁそれはせこい。もともと嫌な訳ないのに。
「いや、全然嫌じゃない...むしろ嬉しいんだけど...」
「嬉しいな。そう言って貰えて。ならこれからたくさんしても良いよね。大丈夫。人前でするのはこれで最後だから。でも2人きりの時はね?」
やばい。もともと葵に恋してたのにもっと葵にハマっていきそう。目の前にいる葵が可愛すぎる。
「お兄ちゃーん!葵ちゃーん!おめでとー!」
少し離れたところから駆け寄ってきたのは鈴だった。危なかった、もしあんなシーン見られてたら俺の兄としての尊厳が崩れ去っていくに違いない。
「鈴ちゃんありがとう。私たち勝ったよ。みんなの応援のおかげだよ」
「そうかな?でも最後の回はすごかったねぇ。お兄ちゃん、もっとしっかりしないといけないよ。あの時私、すっごく緊張して見てたんだからね。まぁその後はかっこ良かったよ」
「いろいろありがと鈴。まぁでも優勝だぞ?すごいだろ」
「すごいよお兄ちゃんたち。広明のバッター全然手が出てなかったからね。私の横で友達も一緒に見てなんだけどお兄ちゃんのこと良いなって言ってたよ?」
「え?」
「...鈴ちゃん。その女の子って誰かな?」
ちょっと葵が怖い。そんな敵意剥き出しの表情出さなくても良いんじゃない?
「大丈夫だよ葵ちゃん。その子にもちゃんとお兄ちゃんと葵ちゃんのこと言っていたから。最初は勝負するとか言ってたけど、試合終わった後、なんか諦めてたよ。あの人には勝てないって」
「そりゃそうだよ!祐くんと私は深い深い愛で結ばれてるんだから!」
やめてくれ葵。嬉しいけど恥ずかしい。
「ふーん?お兄ちゃんたち、昨日と雰囲気ちょっと変わったね」
「「え?」」
「まぁ私の勘だけどね。なんかそんな感じがしたんだ」
すごい。鈴の勘すごいな。それとも俺たちが分かりやすい?
いろいろしているうちに親父たちも来て俺たちの優勝を祝福してくれた。
さぁ、家に帰ったら2日連続の打ち上げに行こうかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます