63話 予想外のこと
閉会式が終わってロッカールームでみんなが着替え終わって外へ出たあと、俺は1人ロッカールームに残っていた。葵も別室で着替え終わったところだろう。ちなみにこの後葵がこのロッカールームに来るっていうイベントは発生しない。ただ自己嫌悪に陥っていただけだ。
試合の時は吹っ切れていたけれど今、落ち着いてさっきの出来事を振り返ってみるとあの場面で「もしかしたら葵がいなくなってしまう」なんて思ってしまったということ。俺は葵のことを信用し切れていなかったのだろうか。あれだけ言ってくれたのに、ずっと一緒だって。俺はちゃんとその言葉を聞いていたはずなのに。
「はぁ、俺って最悪だわ」
でもそろそろみんなのところに戻らないと。遅くなると迷惑になるし。俺が席を立とうとしたところでドアがノックされた。遅いからって誰かが呼びに来たのかなと思いながら「はい」と返事をすると失礼しまーすと入って来たのは葵だった。
「どうした葵。もうみんな呼んでる?」
「ううん。みんな彼女さんたちと喋ってるよ。先生もまだ来そうにないの」
「そっか。じゃあ葵はどうしてここに?」
「祐くんのそばに居たかったから」
「そうなんだ」
そのままベンチに座った俺たち。でも会話はなく、静かな時間がしばらく経った時、俺は葵に言った。
「ごめん、葵」
俺は謝った。葵はどういうこと?みたいな顔してるけど。
「葵が何回も一緒にいるよって言ってくれたのに俺あんなこと思って。なんて言ったらいいのか」
葵は聞き終わった後そっと俺の前に立った。そして座っている俺と目線を同じにする様に屈んだ。
「祐くん、目瞑って」
俺は言われるがまま目を瞑った。もしかしてビンタでもされるのか。まぁそうなっでも仕方ないけど。
チュッ
でも俺が考えていたのとは全く別のことを葵はしてくれた。
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