62話 試合終了

 次のバッターも抑えてあと1アウトで俺たちの優勝が決まる。さっきまでの不安はもう完璧にどっかへ行ってしまった。今は集中してバッターと対峙出来てると思う。


 あと1つ。


 体力ももう限界に近い。疲れたし、お腹空いたしで早く家帰って寝たい。ユニフォームも汗でびっしょりだ。でもそれはこいつを抑えてから。


「6番 サード村田くん」


「さぁこい!」


 言われなくても来てやる。そして次は俺たちが勝つんだ。


 1球目ボール。うん、いい感じに投げれてはいる。葵も「いいよ」ってジェスチャーで教えてくれてる。バックのみんなを信じろ。俺は1人じゃない。2球目低めのカーブでストライク。


 3球目少し力んでしまってまたボール。流石に少し緊張してるのかも。まぁだからなんだって感じだけど。4球目アウトコースのストレートが決まってツーストライクツーボール。


 あと1球。ストライクなら勝ち。打ち取っても勝ち。あと一歩まで来たんだ。葵と約束した俺たちの夢まで後少し。


 俺はセットポジションにつく。そしてゆっくり足をあげる。葵のミットから目を離さないようにその一点だけを見て、大きく足を踏み出す。この一球に自分の全てを注ぎ込む感じで指先に力を入れる。そして最後に俺の葵大好きだっていう気持ちを込めて。


 渾身の1球が放たれた。


 そのボールは俺の想いを込めた1球はバットにかすることなく、俺の気持ちを受け取って欲しい人に受け止められた。


「ストライク!バッターアウト!ゲームセット!」



「...か、勝った...」


 ついについに勝った。「やったぞぉ!」と叫んでガッツポーズをしようとした瞬間目の前には葵がいた。


「祐く〜ん!!!やった!やった!私たち勝ったんだよ!」


 そう言って飛びついてきた。さっきまで疲れてだけど今はそんなのどうでも良くてただこの喜びを分かち合いたい。


「祐輔!」


「祐輔やったなぁ!」


 みんながマウンドに集まっておしくらまんじゅうみたいにして手をあげて喜ぶ。こいつらおの陰だよ。ほんと。


 そのあときちんと礼をして試合が終了した。その時に握手したのは相手の最後のバッターの村田くんだった。


「いや、今日はやられたよ。もう打てる球はなかったね。特に最後の球。あれはやばい。たぶん全国でも君ほど投げれる人はいないよ」


「そりゃありがと。次も勝つからよろしく」


「それは残念ながら無理だね。次は俺たちが勝つんだから」


「絶対負けないからな」


「こっちこそ。それでキャッチャーの女の子は君の彼女なの?」


「な、なぜそれを!」


「あはは。そりゃなんとなくわかるよ。あれだけお互いを思ってるのがこっちまで分かるんだから」


「まじか。恥ずかしくなってきた」


「このリア充め。おっと長く喋りすぎたね。早く彼女の方へ行ってあげなよ。一個言っとくけど次は本当に勝つから覚悟しといてよ」


「それはこっちのセリフだ」


 そう言って俺たちは別れた。俺らだけ喋りすぎたのは確かだった。


 ベンチに戻るとみんな笑顔だった。その中で葵は1番の笑顔を俺に向けてくれた。


「祐くんやったね私たち!本当に嬉しいよぉ」


「泣くなよ、葵」


 嬉しさのあまり泣いてしまいそうな葵。俺はそっと葵を抱きしめようとして...やめた。


 たぶん汗くさいから。危ない危ない。こんなとこでテンション下げたら最悪だもんな。


「むっ」


 しかし葵の方から俺に抱きついてきた。葵はぜんぜん汗くさくなくて逆に花のいい香りまでした。なぜなんだ。


「ちょっ葵、俺汗くさいから離れてっ」


「そんなの気にしない」


「俺が気にするの!」


「これは祐くんの頑張りだよ。汚くないし問題ないもん」


 そう言って俺にさらにギューっとしてきた。もういいや。俺もこうしたかったのは事実だし。俺も葵を抱きしめた。


 その時の周りの視線がうふふだったのは言うまでもなかった。



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 お久しぶりです。九条 けいです。テストも無事終わりましたのでまた定期的に更新頑張ります。これからもお願いします!感想、応援、星、待ってます




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