56話 やられたらやり返す
俺は急いでシャンプーして、体洗って洗顔して風呂場を出た。服を着ようと思ったらあったのはお出かけ用の服だった。しかもあの、葵との初デートの服が。
(お兄ちゃん、今日はその服を着てね)
ご丁寧に置き手紙まで添えられていてこれを着るしかないってことを実感した。でもその服以外まともなのがない俺は素直に着ることにした。
「あ、お兄ちゃん出てきた。うん、やっぱり鈴の目に狂いはなかったね。カッコいいよ!」
「うん、ありがとな鈴」
「あら、祐輔上がったのね。さぁ行きましょう」
「え?どこに?」
「いいから行こっ!お兄ちゃん」
玄関を開けると葵の家族がいた。あれ、まさか俺以外みんなこれからどこか行くの知ってた感じだな。
「若宮さん、行きましょう」
親父が声を掛けて車にみんな乗り込んだ。大きい車だから7人全員乗ることが出来たけど本当にどこ行くんだ?
車に乗ること15分。着いたのは焼き肉店だった。
「なぜに焼き肉?今日誰か誕生日だっけ?」
うちでは誰かが誕生日の場合焼き肉を食べるのが定番なんだけど今日誕生日の人は誰も居ないはず。葵の家族含めていなかったと思うんだが。
「今日はね、打ち上げよ!」
葵のお母さんがテンションアゲアゲで言う。
「え?今日何かありましたっけ?」
「今日勝ったでしょ。その打ち上げだよ。みんな知ってたんだよ」
「あぁなるほど...ってなら明日も勝ってから行こうよ!」
思いっきり葵の発言に突っ込んでしまった。
「まぁまぁいいじゃない。明日勝てば良いだけの話よ」
「いや、お母さんそんな余裕じゃないですよ」
うちのお母さん優勝するのがどれだけ大変なのかわかってるはずなんだがなぁ。いとも簡単に言ってくれるな。
「まぁそんなことはどうでもいいから早く入りましょ」
どうでも良い事じゃないと思うけど明日も勝てるようにしっかり食べよっと。
◆◆◆
「どうしてこうなった?」
大人数で行くとあるあるの席を2つに分けるやつ。大人テーブルと子供たちテーブルに分かれたのは良いんだけど何で俺が鈴と葵に挟まれているんだ。
「あの、俺あっち行こうか?」
俺たちの正面には誰もいない。片方に3人というバランスの悪い状況。
「「ダメ」」
横のテーブルから温かい視線が送られてくる。何なんだよあの目線。
そっちがそうならそれだって負けない。
「すみません。特上カルビ3人前で」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます