52話 試合始まった


 もう試合開始直前。お互いのチームがベンチの前に並んだ。球場が静かになる。風の吹く音すらも騒々しい。


 そこに4人の審判が現れた。


「集合!」


 主審の声と共に両チームがバッとホームに集まる。並んでみて思った、人数の差が半端ない。こっちが9人なのに対して相手は18人。この光景にも慣れたけどね。相手の顔を見ると少しニヤついてる奴らもいた。いちおう準決勝までは前の大会でも行ったんだけどな。ただ舐められてると思うと腹が立つ。でもそんな俺の気持ちも主審の「礼!」の声で綺麗に吹き飛んでいった。


 1番 ショート  風間 進

 2番 セカンド  山本 宗一郎

 3番 ファースト 大森 比呂

 4番 レフト   鈴木 誠

 5番 ピッチャー 神子戸 祐輔

 6番 サード   出水 俊介

 7番 ライト   北沢 悠真

 8番 センター  忍田 幸平

 9番 キャッチャー 若宮 葵


 これが俺たちのメンバー表だ。相手はわかんない。


 俺たちは後攻なので先に守備に着く。今俺は葵と2人でマウンドにいた。


「いよいよ始まるな、葵」


「始まるんだね、祐くん!思いっきり投げて良いからね」


 そう言ってホームの方に行ってしまった。


 5球の投球練習が終わって1番バッターが打席に入る。


「ふー」


 小さく息をはいた。ついに始まるんだなぁ。


「プレイボール!」


 球審の声によって試合が始まった。


「さぁ、始めよう」


 大切な第1球目。サインは要らない。もう投げる球は決まってた。葵がミットを構える。俺はそのミット目掛けて投げ込むだけ。軽く振りかぶって右足を大きく前に出す。(左ピッチャーだから)

 そして指先に力を込める。


 パーンッ!


 乾いた音が球場全体に広がる。「ストライーク」

 初級はストレートど真ん中。指にかかったとても良い球がいった。


「ナイスボール」


 葵が声をかけてくれる。他のみんなも「良いよ!」とか「コース甘いんじゃない」とか言ってくれる。なんだか小学校の時に戻ったみたいだ。


 2球目。葵とサインを交わし投げ込む。インコース低めにストレート。うん。今日の俺は調子いいっぽいな。


 3球目はカーブ。タイミングをうまくずらして当てただけのバッティング。ショートの進がうまく捌いて1アウト。


「ナイスショート!」と声を掛けたら「祐輔めっちゃ楽しそうじゃん」と返ってきた。よく分かったな。今俺はめっちゃ楽しい。葵も「祐くん良いよ〜」って言ってくれる。うん、やっぱハードボール最高だわ。


 2番バッターをストレートで詰まらせてセカンドゴロに打ち取った。これで2アウトだ。


 3番バッターが右打席に入る。こいつ中学の時けっこう活躍してるやつじゃなかったか?名前は、

 あー、思い出せないや。でもこいついい感じに雰囲気を出してるな。

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