51話 試合開始!前
ミーンミーン
夏の日差しが今日も暑い。今日は夏休み最初の土曜日。そう、俺たちの新チームになって初めての公式戦。まぁ、先輩が1人引退して葵が来てくれたからメンバーがすごい入れ替わった訳じゃないけれど。
場所はコダマスタジアム。山の中にあって自然豊かでとてもいい球場だ。ちなみに小学校最後のあの試合をしたところもこのコダマスタジアムだったりする。思い出の場所ってことかな。
今は試合が始まるまで後10分くらいあるので各自バットを振ったりストレッチしたりして試合に備えている。と、思ったら応援に来ていた彼女とかと喋っていやがった。
これが試合前とか大丈夫?仕方ないらいつもより少し早いけどいつものしようか。
「集合!」
俺が声を出すとともにみんなが俺の周りに集まる。その目はさっきの楽しそうな目ではなく、戦う人の目だ。さっきのきゃっきゃうふふな雰囲気はなかった。
俺を中心にして円陣を組む。葵も少し遅れて円陣に入る。俺を中心にマネージャーを入れて10人の小さな円陣が完成した。
俺は声のトーンを落としていう。
「いいか、この初戦絶対勝つ。俺たちの持てる全ての力を賭して目指すは優勝。準備は出来てるか?」
「おう!!」
「よし...行くぞぉ!!」
「おー!」
みんなが人差し指を空に向かって一斉に挙げた。
これは中学校の時に俺がキャプテンになった時に進に最初はノリでやらされたのが結構いい感じになったので大会のたびにやるようになった、いわばルーティーンみたいなものだ。
「いや〜やっぱり祐輔の声気合い入るわ〜」
みんな気合いが入ったようでバットを振ったり、キャッチボールをするために円陣を離れていく。俺も準備をしようと思ったが、葵が固まったまま動かないことに気づいた。
「どうした、葵。まさか具合でも悪い?」
「はっ、ううん。大丈夫。それより祐くんちょっとこっち来て」
「え?あ、おい」
葵に引っ張られてダッグアウトに連れてこられた。
「本当にどうしたんだ、葵?」
「さっきのはなに!」
「え?さっきのって円陣のこと?もしかして変だった?」
「ちがう!」
「なら何なんだ?」
「さっきの祐くんの目とか口調だよ!なんなの今の!すごいキュンキュンしたし何でいつもしてくれないの?」
あれ気合い入れるためのやつだったのに変なスイッチ入ってないか?試合始まる前からすごいことになった気がする。
「あれはいつもはしないよ。恥ずかしいし。」
「えー、私すっごく好きなのに」
「しょうがないな」
俺は葵の耳元で囁くようにさっきの口調で言った。
「好きだよ葵、試合頑張ろうな」
「ふぁ〜うん!私も大好き。試合頑張ろうね」
すごい喜んでるけどそんなにいいもんかなぁ。
だいたい試合本当にこんなのでよかったっけ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます