50話 お昼寝

 部活を終えた後の帰り道。俺はいつものように葵と帰っている。今では日常化したけどこの登下校の時間のたわいもない話をする時間も俺は好きだ。


「今日の最後のホームルーム地獄だった」


「あはは、そうだね。私もちょっと恥ずかしかった」


 それは今日の帰りのホームルームでのことだ。いや、もっと前にあったことから言った方がいいかな。



 ◆◆◆



 いつも通りの昼休み。俺たちは中庭の樹の下のベンチでいつものように弁当を食べていた。夏の日差しを木の葉が防いで柔らかい光を届けてくれる。風も吹いてとても気持ちいい。


「「ごちそうさまでした」」


 食べ終わった後、葵は「はい」と言いながら自分の太ももをポンポンする。葵は良く俺に膝まくらをしてくれるのだ。


 昼休みはあと20分。俺は葵の膝の上で寝ようとした。ふわっと甘い香りがする。俺が葵の太ももに頭をつけたくらいでふと思った。


「葵って俺が寝たら何してるの?」


 思わず口に出してしまった。これはミスだ。


「ん?そうだね、私は祐くんが寝たら何してると思う?」


「まさか、ただぼーっとして無駄な時間過ごしてないよね」


 もしそうだったら、名残惜しいけどやめないと。迷惑とかはかけたくないしね。


「無駄な時間なんて過ごしてないよ。ずっと祐くんの寝顔見てるの。ときどき頭撫でてあげるとね祐くん、とっても嬉しそうな顔するんだよ」


「そ、そうなんだ」


 とにかく迷惑とかはないのかな?ただそんなことをしてるとは思ってもなかった。


「寝ちゃってもいいよ、祐くん」


「それじゃお言葉に甘えて」


 俺はそう言って葵の膝の上で寝てしまった。



「ん?」


 あれ?いつも葵が起こしてくれるのに...俺は時計を見てびっくりした。後2分で授業がはじまってしまう!


「葵、起きろ!授業始まるぞ!」


「ん〜ゆうく〜んないすぼ〜る」


「どんな夢見てんだ...ってそんなことより葵!」


 起き上がった俺は葵の肩を揺らす。


「ふぇっ?祐くんどうしたの?」


「どうしたのじゃない!もう授業始まるぞ!」


 俺はそう言って葵の手をとって教室へ走った。




 なんとか教室へ戻った俺たち。もう担当の先生は来ていた。教室の生徒も大半が教科書を読んだりして授業に備えていた。俺たちに気づいた先生はニヤニヤしながらも俺たちのことを何か言うことなくそのまま授業は始まった。それで終わったかと思ったのに...




 そのまま放課の前のホームルームになった。そして先生の話も終わった。だがしかし


「そういえば神子戸、お前には春が来たらしいな」


「えっ?せ、先生今は夏です!春は過ぎました!」


 何を言ってるんだ。分かるけどわかりたくない。


「そうか〜、まぁ熱々らしいからなぁ。たしかに夏か」


 やばいみんなの目線をめっちゃ感じる。


「先生、そろそろその辺でどうにか」


「ん?あれだけイチャイチャしてるんだからちょっとはいいよなぁ」



 ◆◆◆



「ほんとまさか先生にあんなこと言われるなんて」


「ほんとね。私もびっくりしたよ。確かに5時間目の授業は私たちのクラスの担任の先生だったけど」


 俺は逃げるように部室に向かったのを覚えてる。


「やっぱり私が寝ちゃったから」


 葵は自分が寝たから授業にも遅れそうになったし、今回先生に茶化されたのも自分のせいだと思ってるらしい。そんなことないのに。


「今後から1日交代でそうする?」


「えっ?」


 葵の目が光った。めっちゃ嬉しそう。


「俺ばっかりだったらやっぱり悪いからさ。どうかな。葵が嫌じゃなければいいんだけど」


「いやじゃない!むしろ私も祐くんに膝枕されてみたい!」


「そ、そう」


 葵も乗ってくれたので明日は俺が葵に膝枕することになった。


「明日すっごく楽しみ!」


「あ、もう家着いた。早いなぁ」


「それじゃあ祐くんまた明日ね!」


「うん、また明日葵。バイバイ」


「うんバイバイ!」


 そう言って俺たちはそれぞれの家に帰った。




 50話まで書くことができました。これからもよろしくお願いします!

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