49話 終わり

 その後、文化祭は無事に終了した。片付けもみんなの協力によってあっという間に終わってしまった。その時の俺は眠すぎてあんまり意識がなかったけど。


 少しぼーっとしながら中庭を眺める。中庭では全校生徒の3分の2くらいの生徒が残って後夜祭が始まるのを待っていた。後夜祭とは文化祭の後に行われる二次会みたいなものだ。参加は自由で去年は俺も参加した。


 することは単純で体育祭で踊ったダンスをもう一度踊ったり大声で校歌を歌ったりする。あとはまぁいろいろと。


 コンコン


 生徒会室のドアがノックされた。俺はどうぞと答えて入ってくるのを待つ。誰が来たか知ってるので構えておく必要もない。


「失礼しまーす」


 そうやって入って来たのは葵だ。


「どうしたの?祐くん。後夜祭には出なくて良いの?」


「今日はずっと人混みの中だったからさ。ちょっと葵と静かな所で2人きりになりたかった」


「そっか。私もちょっと疲れちゃったかも」


 そう言って葵は俺が座っている椅子の横に腰を下ろした。



「ありがとな、葵。あの動画先輩たちすごく喜んでくれたよ。俺1人じゃ絶対できなかったな」


「ううん。私は祐くんの力になりたかっただけだよ。ただ、困ったことがあったら次はもっと私を頼ってね」


「その時はお世話になろうかな。でも葵も何かあったら言ってくれよ。何を置いてでもすぐ駆けつけるからさ」


 葵の「うん」と言う返事を最後に生徒会室に静寂が訪れた。ただそれは喋ることがなくて黙っているんじゃない。ただ手を繋いでお互いが静かに今日のことを思い出す。


「そういえばクラスの女子が今度の試合観に来てくれるって」


 沈黙を破ったのは葵だった。お互い今日のことをしっかり思い返し終わったタイミングだった。


「それは負けられないな。俺と葵の最初の高校での試合なんだし」


 そう言って俺はさっきより少しだけ強く手を握る。最近ずっと手を繋いでいるけどドキドキはやっぱり治らない。


 〜〜〜♭


 中庭から音楽が流れてくる。あ、これ体育祭で踊ったやつだ。もう懐かしいとか思っちゃったけど。クラッシックで体育祭って言うより文化祭で踊れば良かったのでは?と思うほど穏やかな感じのダンス。


「私まだこの時はあっちの学校いたから踊れないんだよね」


 そうだ。葵はこのダンスの振り付けは知らない。でもそんなことどうでも良かった。


 俺は葵の正面に立った。そして右手を差し出す。


「俺と踊って貰えますか?」


「でも。私踊れないよ?」


「そんなこと気にしなくていいよ。ただ気ままにさ。俺もあの振り付けはしないよ。2人だけの特別な感じでどう?」


「んもうっ!祐くんのそんな所ほんと私大好き」


 なんとも嬉しいことを言ってくれた葵は俺の手を取ってくれた。あとは音楽に合わせて好きなように踊るだけ。


 先輩に教わった踊りじゃなかったけど俺たちはしっかり2人だけの踊りを踊りきった。


 ◆◆◆


「それじゃあね祐くん。また明日。絶対今日は早く寝てよ!2日連続徹夜なんだからね!」


「わかってるよ。それじゃおやすみ葵」


 葵と別れたあと俺は家のソファーにダイブした。ほんとはこのままで寝ても良かったけど鈴が


「お兄ちゃん!ちゃんとお風呂入ってベットで寝てないと葵さんに言っちゃうよ」


 と言われたのでしっかりお風呂入った後、俺は寝た。


 と鈴が朝起きたら教えてくれた。

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