47話 ソフトクリーム

 長かったシフトも終わり(1時間しかやってないが)ようやく葵と回れる時間が来た。


「祐くん」


 エプロンを脱いだ葵が俺の元にやってきた。


「どこに行きたい?おばけ屋敷?それとも何かたべる?」


「うーん。私は一回全体を回りたいな」


 俺もその意見に同意して学校を回ることにした。俺の横にいる葵が歩き出した後しっかり手を繋いでくる。


「ふふん。そういえば私たちこうやって文化祭一緒にいるって初めてだね」


 確かにそうだ。小学校6年生で離れ離れになって再開したのが今年だから中学、高校とそういう機会はなかった。最近、葵がずっといてくれるお陰でこの4年間の空白が埋まっていく感じがしてた。


「そうだよな。ずっといた感じしてたけど初めてはまだまだ考えたらいっぱいあるな」


「そうだよ。まだまだ私たちのしたことのない初めてでいっぱいだよ」


「ならそれを俺たち2人でこれからたくさん経験していけたらいいな」


「うん!私はずっと祐くんの横にいるからね!」


「なんかそれプロポーズ見たいだな」


「ふえっ?そそそ、そんなこと...あるもん!私はずっと祐くんと一緒にいたいの...祐くんはいや...?」


「そんなわけない!俺だっていつまでも葵といたいんだ!葵がそうやって言ってくれて嫌なわけない!」


 これは俺の本心だ。いつまでも葵と居たいって思える。


「そっか。私とっても嬉しいな」


「葵」


「祐くん」


「はーいそこのめっちゃいい雰囲気のお2人さん」


 俺たちの中に入ってきたのは比呂だった。ちょうど比呂のクラスの2年4組の近くだったらしい。


「そこのお2人さんソフトクリームはいらないかい?」


「私たべたい!」


「さすが若宮。そうなったら彼氏の祐輔も買ってくれるよな?」


「そうだな。暑いしちょうどいいかも」


「まいどっ」



 ◆◆◆



 比呂の呼び込みによって買ってしまったソフトクリームだったけど食べてみるとめっちゃ美味しい。


 俺はバニラにしたのだが乳臭くなく、バニラエッセンスのいい香りがして舌触りもとても良かった。これを150円で売ってるってかなりすごいな。ふつうに倍の値段でも買うな。


「祐くん。祐くんのバニラどう?」


 葵が買ったのはチョコレートだ。2人ともスタンダードなやつだ。


「このバニラめっちゃうまい!」


「ちょっと食べさせて!祐くん!私のもあげるから」


 ソフトクリームの交換ってかなりハードルが高い気がするんだが。だってさいろいろやばいじゃん。ほら。


「スプーンか何かないか探してくるよ」


「その必要はないよ!えいっ!」


 そういうと俺の持っていたソフトクリームを葵がペロッと舐めた。


「んー!このバニラ味が濃くて美味しい!」


「あ、あ葵?」


 やっぱり葵がすることはレベルが高い。こんなのバカップルしかしないだろ。


 まさかたまに思ったけど俺たちってバカップル?

 もはやバカップルの定義も分からん。


「祐くんもどうぞ」


 そう言って葵が俺にソフトクリームを差し出す。


 これ断ったら男じゃないな。


「んっ」


「ちょっと!祐くん食べ過ぎだよ!」


 あ、チョコレートも美味い。まじでどこから仕入れてるんだ?


「んー!」


 葵が何か言いたそうに唸ってる。それを察した俺は


「あーん」


 葵に追加でソフトクリームを食べさせた。


「祐くんのそういうところも私好き」


 周りからキャーとか聞こえたけど気にしないでおこう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る