44話 生徒会室
文化祭2日目。俺は葵と生徒会室に来ていた。今は朝の8時30分。文化祭が始まるまであと30分ある。今日徹夜で作った動画が学校のパソコンでも観れるか確認しているところだ。
ガラガラ
そこに生徒会長の佐々木さんが入ってきた。葵が俺の制服の裾を引っ張って(私ここに居ていいの?)と、聞いてきた。たしかに生徒会室に一般の生徒が入ることはない。もし、佐々木さんが何か言って来たらその時は言い返そう。
「あなた」
佐々木さんが口を開く。
「神子戸くんの彼女さんね?」
「「?」」
俺たちは顔を見合わせて拍子抜けした表情をした。ただ葵は真面目な顔になって
「そうです!私が祐くんの彼女です!」
やっぱりこうやって言ってくれるのって嬉しいけど恥ずかしい。何回目でも慣れない。
「それであなたたちは何をしているの?」
「完成した動画の再確認です。葵も動画編集を手伝ってくれたのでここにいます」
あの動画は先輩には秘密なので全部は言えないけど仕方ないよね。
「そうなのね。若宮さんもありがとう」
「え?どうして私の名前を?」
葵が不思議がる。俺もなんで佐々木さんが葵のことを知っているのか気になる。
「それは、神子戸くんの彼女ってみんな気になるもの。誰に告白されても首を縦に振らなかった神子戸くんのね」
「あの、その辺で止めてもらっていいですか?」
「あなたたちの関係もいろいろ聞いたわ。すっごく素敵だと思う」
まさかの佐々木さんは止まってくれなかった。それどころか葵が佐々木さんに混ざってガールズトークが始まってしまった。けっこういろんな人の恋バナ情報を聞いてしまった。
とりあえず佐々木さんにバレないように動画のチェックは終わった。
「こっちは終わったんですけど佐々木さんはどうして生徒会室に?」
今、佐々木さんは葵と喋っていただけで何もすることはなかった。
「ちょうど生徒会室の前を通ったらあなたたちの声が聞こえたから。それだけよ。じゃあ、私は文化祭の開催宣言をしに行くから。2人とも本当にありがとう。動画期待してるから」
佐々木さんはそう言って生徒会室を出て行った。
「佐々木さんどうだった?」
とても楽しそうに喋っていた葵に聞いてみた。
「すっごくいい人だね!それに祐くんの生徒会でのこととか、私たちのこと応援してくれて」
「そっか」
たしかにあの人はめっちゃいい人で頭も回るし誰からも好かれてるいるからなぁ。
「でも。私の知らない祐くんのことたくさん知ってた。それがとっても羨ましい。」
「…。たしかに葵に全部見せることはできないけど1番俺のことを知ってるのは葵だよ」
これは本当だ。1番自分の表情を出したのは葵の前だ。進とかの前で苦しい時でも苦しい顔を見せることはなかった。
「なんでかな。俺、葵の前だったら悔しかった時泣いちゃうんだよ。小学校の時とかも」
「私も祐くんの前だけこんなになっちゃう」
しばらく見つめ合った。
「ただ今より十二条高校文化祭2日目を開催いたします」
ただ佐々木さんの放送によってこれ以上何かあるわけではなかった。ただ葵と手を繋いで生徒会室を後にした。
「さぁ。葵俺たちもいこう」
「今日は祐くん離さないよ!」
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