42話 私を頼って

 私はベッドで今日のカーブの試合のハイライトを見ていた。


 今日は文化祭。祐くんと一緒に文化祭を楽む予定だったのに祐くんは生徒会の仕事があって一緒にいられなかった。


 とっても楽しい文化祭初日だったけれどやっぱり物足りなかった。でも明日は一緒に回れる。私はそのことでウキウキしてる。


 その時メールの着信音がした。差出人は祐くん。私はとっさにメールを開く。そこに書いてあった内容を見て私は絶望した。



 ◆◆◆



 俺は少しだけベットに腰掛けてスマホを見つめていた。葵に送ったメール。本当は明日直接言わなければいけないもの。


 でもそれはできなかった。葵が悲しむ姿を見たくなかったから。これはただの自己満足だ。ただ葵から逃げただけ。そんな自分が情けない。


「一緒に回りたかったな」


 誰もいない部屋に俺の声だけが響く。俺は自分の机の上にあるパソコンを見つめた。今日頑張れば終わる予定だった。でもあのフォルダを見てしまったら...


「ほんとごめん。葵」


 ここにはいない葵に謝罪する。ちゃんと面と向かって言わないといけないんだけど。


「ほんとだよ祐くん!絶対明日まわるんだから!」


「え?」


 バーンと俺の部屋の扉が開かれる。


 そこにはパジャマ姿の葵がいた。


 俺はそのまま葵にベットに押し倒された。


「どうして...」


「え?」


「どうして言ってくれなかったの!?大変だから手伝ってって。私言ったじゃん!何かあったら手伝うって」


「葵...」


 俺は答えることができなかった。これは俺の仕事で、葵に手伝ってもらえるものではないと思ったから。そして迷惑は絶対かけたくなかったから。


「本当はそろそろ編集は終わるんだ」


「え?」


 葵がならどうしてと言う顔をした。


「でも、このフォルダ見てさ。撮影とは関係ない日常風景。こっちの役の先輩もいいけど、素の先輩もみんなに見てほしいと思って。これを編集しようと思ったらたぶんほんとギリギリまでかかると思ったから」


 俺はこのどっちもを全校生徒に見てもらいたかった。


「だから、明日一緒に回れる時間がない。ごめん葵...」


「ならどうして、どうして私を頼ってくれないの!?さっきも言ったじゃん!大変なら手伝うって!」


「葵に迷惑はかけられなかったんだ」


「私!祐くんからお願いされて迷惑って思ったことない!私じゃ祐くんの力になれない?」


「そんなことない!」


 俺は葵の肩を掴んだ。その時俺と葵の目が合う。その目は潤んでいた。


「私は祐くんの力になりたい」


俺は何変なこと考えてたんだろ。葵は手伝ってくれるって言った。そして葵と一緒に文化祭周るためにちゃんとお願いしたらよかったんじゃないか?手伝ってくださいって。


「葵。手伝って欲しい。これが完成したらその時は俺と文化祭一緒に回って欲しい」


「うん!さっそく始めるよ!」



 ◆◆◆



 葵は一度自分の家に戻ってノートパソコンをとりにいった。


「ほんと葵には感謝だよな」


 俺のためにここまでしてくれるなんて。


「おまたせっ」


 葵がノートパソコンを携えてやってきた。


「そういえばなんで入れてるの?家に」


「え?前に祐くんのお母さんが合鍵くれたんだよ?」


 俺知らない間にやっぱりいろいろ起こっているようだ。


「それじゃはじめよ?私は何したらいい?」


「とりあえずチェックと文字入れて欲しい」


「わかった」


「ありがとな、葵」


 自分1人で乗り切ろうとして葵を悲しませてしまった。でも葵は俺を手伝ってくている。俺は1人じゃなかった。そのことが嬉しかった。


「さぁ祐くん!今日は徹夜だよ!明日絶対一緒に回るよ!」


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