32話 野球観戦に行こう(5)
試合開始です!
ウグイス嬢の声が球場に響く。それと同時にカーブの選手がグランドに散っていく。
俺たちは一塁側砂かぶり席なのでかなり選手との距離が近い。めっちゃ興奮する。
横の葵も試合が始まってからはずっと試合に見入っている。ずっと俺の手をぎゅっと握っているけど。
「いい試合だね祐くん」
「あぁ。めっちゃいい試合」
5回終わって0対0。素晴らしい投手戦だ。お互いほぼランナーを出すこともなく完璧に抑えている。
試合を見ながら食べる予定だったフライドポテトが全く減ってない。いい試合過ぎて食べることも忘れてしまった。
「私たちもここで試合出来るかな?」
「そりゃ県大会勝てば出来るだろ」
ハードボールの中国大会の準決勝、決勝はこのスタジアムで試合を出来る。プロの選手が試合をしている舞台に俺たちも立てるわけだ。
「んもう!そういうことじゃないよ!行きたいねって話なの!」
俺の返答に不満だったのか葵がぷりぷり怒ってる。
「分かってるよ葵。大丈夫。俺たちなら絶対行けるよ。約束しただろ?」
全国大会に出場して優勝する。俺たち部員全員の目標であり小学生の頃からの約束。
県一位になれば全国大会に出場出来るものもあれば、中国大会で上位に入らないと行けないものもある。
「俺たちなら絶対行ける。俺には最高の仲間がいて、マネージャーがいて。そして俺とバッテリーの葵がいるんだから」
普段なら絶対言わない言葉だけど何故か今はスッと言えた。
「そうだね祐くん。私も最高のみんながいてくれる。それに私が受けるボールは大好きな祐くんのボール。うん。私も絶対行けると思う」
葵からもすごい気持ちが伝わってきた。そうだ。俺たちは約束を目標を達成したい。
「葵」
「祐くん」
「ビールはいかがですかぁ!」
「「うわぁ!」」
ビール売りのお姉さんの元気の良い掛け声にハッとした俺たち。危なかった。下手したらこんな人前でキスするところだったかも知れない。ナイスだビール売りのお姉さん。まだ俺たちがキスをすることはないんだから。葵もしっかり約束を覚えてくれてるなら。
その後も投手戦は続いた。7回表終わって0対0。今年1番の試合かもしれない。
今はホームのカーブのラッキーセブン。球場全体が真っ赤になって球団歌を歌う。もちろん俺たちも風船片手に歌う。
歌が終わってみんな一斉に風船を飛ばす。プシューと言う音を立てて風船が飛んでいく。
「すごいよな。何回見ても」
「そうだよね。とってもきれい」
結局7回のラッキーセブンも攻撃が繋がずそのまま回は最終回の9回の裏に入っていった。
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