26話 お昼休み(2)
今俺は葵と中庭の木陰の下のベンチでお弁当を食べていた。もう弁当もあと少し。
「今日の数学どういうことなの?sinθ、cosθ?」
「あぁ、あれは単位円を考えて...」
たわいもない話なのかよくわからない会話を広げていた。
勉強の話になってから甘い話は一切ない。勉強はとりあえずついていけてるから問題ないけど。
「葵って数学苦手?」
「そうなんだ。中学までは良かったんだけど高校の数学難しくて」
「わかるな〜。特にバカ出身の俺は」
そうそう。中学から高校に入ると急に数学が難しくなる。進学校だからかなのかも知れないけど。
「祐くんはすごいよ。すっごく頑張って。よしよし」
葵は弁当箱を置いて俺の頭を撫でてきた。ブワッと体温が高い気がする。だいたいよしよしは俺たちの歳でするもんじゃないし。なのにこうなるとかやばいな。葵は全然よゆーそうだった。
「私も祐くんと同じ大学行けるように頑張らないと」
「俺は葵と同じ大学ならどこだっていいよ。理系がいいけど」
俺はそんなにここがいいとかは思わない。点が高い方が選択肢は多い方がいいけど、葵と同じならどこだっていい。
「ダメだよ。自分の行きたいとこに行かないと。私は違う大学でも近くなら同棲とかできるしそれも良いかなって...」
あぁ、葵は俺よりしっかり将来を考えてるのね。
なんか同棲とか聞こえたけど?
「葵さん同棲って?」
もちろん意味は知ってるけど。
「え?あ、あの、やっぱり将来は一緒に暮らしたいな、とか」
葵があたふたしてかわいいけどそれどころじゃない。俺今プロポーズされた!?
「ま、まぁ将来のことはまたゆっくり考えよ。でも私もちゃんと勉強しなきゃ」
「なら、俺の家おいでよ。一緒に勉強しよう」
「え?祐くんの家で!?」
たぶん葵に教えることならできると思う。
「あ、でも部活後とか汗かいてるしお風呂入らないといけないし。家隣同士って言っても」
「そうだったなぁ。ごめん配慮に欠けてた」
「ううん。祐くんは私に勉強教えてくれようとしただけだし問題ないよ」
「ありがと葵。でもならなかなか一緒に勉強する機会ないな」
「うんそうだね」
まぁこればっかりは仕方ないけど。
「あ!なら私がお風呂入った後祐くんの家に行くのはどうかな?私12時くらいまでなら大丈夫だよ」
うん。ぜんぜん大丈夫じゃないよね。男女が夜の12時まで一緒はアウトと思う。
「夜にかわいい女の子が出歩くのは良くないよ。隣だとしても」
俺は真っ当な意見で抵抗した。なにかの拍子に俺の理性が壊れるかも知れないし。ぜったいそんなことしたくないし。
「私の家に来てもらうのは申し訳ないし、どうしたらいいのかなぁ」
葵は何やら考えているようだがここは弁当を食べてスルーされてもらわないと。最初は俺が言い出したことなんだが。
「あ!そうだ!祐くん今日祐くんのお家にお泊りできないかな!」
「い、いや。そこまでしてやらなくても。俺は葵と入れるのはいいんだけど葵のお母さんとかも困るだろ?」
「そっか。急は悪いよね」
「うん。今度お互い時間が合えばやろう」
「うん。楽しみにしてる」
そうだ。俺たちは焦らなくても大丈夫。もうぜったい離れないから。
俺はそんな気持ちを込めて弁当箱を置いてフリーな葵の手をそっと握った。
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