12話 妹と帰り道


 ケーキを食べ終わって今は家に帰る途中。服買って髪切ってケーキ食べてと部活以外でここまで動くことは久しぶりだ。


 やっぱり鈴には感謝してもしきれないな。俺のためにここまでしてくれるなんて。


「鈴、今日は本当にありがとな」


「それさっきも聞いたよ〜」


「いや、それでもやっぱり言っておきたかった」


「そう?ならどういたしまして」


 こう見ると鈴もやっぱりかわいいな。言わないけど。そして他愛もない話をしながら家への道を進んで行く。





 ようやく家に着いた。すると横にいた鈴が俺の前に来た。


「お兄ちゃん」


 いつもより強い口調になった鈴に少し俺はビビった。


「なんだ?鈴」


「葵さんのことお兄ちゃんは好き?」


「え?」


 ちょっと前までなら迷わず即答した質問。だが今は答えることができなかった。葵には俺じゃない他の好きな人がいる。それを思うと何も言えない。


「そう。お兄ちゃんいい?今からすっごく大事なこと言うよ?」


「ああ。なんだ?」


「逃げないで。そして諦めないで。大丈夫。お兄ちゃんがどれだけあの夏から頑張ったか鈴は知ってる。今のお兄ちゃんは小学校の頃よりずっとカッコいいし魅力的だよ」


「え?」


 俺は言葉を失った。さっきから何も言えてないじゃないかと言うツッコミは遠慮してもらいたい。ただ鈴の言葉がすっと頭に入ってきた。


「鈴が言いたいことはそれだけ。よしお兄ちゃん家入ろう?」


「ん、あ、ああそうだな」





 鈴に言われたあと俺は自室で鈴の言葉を繰り返し思い出していた。


 そこでようやく自分の気持ちを知った気がした。


「俺はやっぱり葵が好きだ」


 そうだ。俺は葵が好きだ。ほかに好きな人が居るからなんだってんだ。ちゃんと自分の気持ちを伝えないで何落ち込んでいる神子戸祐輔。そんなの振られた後でいいだろう。ならあとは覚悟を決めるだけだ。


「俺は明日、葵に告白する」


 葵と離れ離れになって4年とちょっと。その間の努力は誰にも負けない自信がある。明日その努力がどうなるんだろうな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る