【わたしと花子さん】6









確かに私も、本当に便所飯している子なんて見たことない。

まあ、もともと人目につきたくなくて行われていることな訳だから目撃者が居ないのも当然だけど、



「でも花子さんには言われたくない。そっちのが、よっぽど伝説でしょう。それにねぇ」



私は一つ息をついた。



「そう悪い物でもないでしょう。『個室』って言われたら良い感じのレストランみたいじゃない?」



「そんな面白いユーモアが言えるなら、友達の一人くらい出来そうだけどなぁ。なんでかね?」



返事の仕方がわからず黙る私に花子さんは、今度は別のことを聞く。



「お弁当、自分でつくってるの?」



「え、あ、うん」



「これ、美味しそうだね」



とりつくね?」



花子さんはつくねを見つめたまま、こくりと頷いた。



「……つくね、好きなの?」



「うん。好きだった」



過去形。



「こんなことになるんなら、もっと鶏つくねを食べておけば良かった」



どう、返事したらいいんだろう。

「じゃあ、食べてみる?」そう聞いて良いんだろうか。

それは、無神経ではないだろうか。



「それ、食べて見てよ」



悩んでいたら向こうから喋ってくれたので、私はこれ幸いとばかりに鶏つくねを口へ入れた。



「どんな味?」



「え?」



「ほら、早く教えてよ」



「……よく、わからない」


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