【わたしと花子さん】5









私はこのときようやく確信した。

彼女は私が作り出した幻覚などではない。

私からは絞り出しようもない、主義主張の持ち主だったからだ。



でも、そうなると、新たな疑問が胸に沸く。




「一体何の為のバイトなの?時給を貰って、どう使うの? 霊界は貨幣経済なの?それに、あなたみたいな雇われ花子はここに居る理由があるけど、じゃあ、元祖花子はなんでトイレにいたの?元祖がトイレに居たから、その系譜けいふを受け継いで花子さんはトイレでバイトしてる訳だよね?」



私の勢いに、花子さんは驚いた顔で半身、引いていた。



「真面目ー。そう言われない?」



「……あ、ごめん。興奮すると、つい、早口になっちゃって」





ー変わってるね。

ー真面目だね。

ー頭の回転早いアピールか知らないけどさ、早口、気持ち悪いよ





いつか言われた言葉がよみがえる。

出会って五分もしない間に、初対面の少女にまで言われてしまった。



「ごめんね。私、喋り方、直さなきゃ」



「なんで謝るの?」



「え?」



「私、なんか、謝らせるようなこと言った?」



「いや、言ってないけど」



あれ?言って……ない?



「ねぇ、さっき花子さんが言った『真面目ー』って、どう言う意味?」



『真面目過ぎなあんたの話は面白くない』って意味だと、

私は無意識に思ったんだ……。

だから謝ったの。



花子さんは一瞬、目をパチクリした後、近所のおばさんみたいな仕草で言った。



「や?特に意味はない。そんな事よりあんたさぁ、花子仲間の間でものすっごい、噂になってるよ。便所飯してる子なんて都市伝説だと思ってたのに。本当に居るんだもん。私このバイトやってあと2カ月で丸二年だけど、初めて見たし」



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