【わたしと花子さん】3








しばらく耳をそばだててみたけれど、やっぱり誰もいないようだった。


きっとお腹の中が空っぽで燃やす物が無いから、何かの音を聞き間違えて、

声が聞こえたような気がしたんだろう。

脳にまで栄養がいかないのだ。




お腹、別に空いてないけど。




そういえば心なしか寒くなってきた。

カーディガンの胸元をかきあわせる。吐く息が白く濁る。




「ん?」




なんで?

夏なのにめちゃくちゃ寒い。

首をひねりながら卵焼きを口へ放り込んだそのとき、左の壁の中に人が埋まって居ることに気づいた。




「え……」




平泳ぎしている人を、真上から見下ろしたら多分、こんな感じだ。

後頭部と尻から始まって、壁から人間が浮き出てきた。

最後、仰け反るようにぐりんっと顔を上げてこちらを見た。



「ひぃっ!」



女の子だった。

やたらに赤い唇がにやりとつり上がる。



「い…ぐっか、あ……」



息が出来ない!

(苦しい!呪いか!)



喉に卵焼きが詰まる呪いをかけられた!?



(まずい…死ぬ!)


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