二 《狂》

ー1ー


タイ バンコクにある病院。

その病院の個室に白人の大柄な男性が横たわっている。

顔がわからないほどガーゼや包帯が巻かれている。

その周りには数名の男女が心配そうな表情で

彼に寄り添っていた。

全員が白人の欧米人。

するとその個室のドアが開き

二人の白人男性が部屋の中に入ってきた。

寄り添っていた全員がそちらに振り向く。

二人とも背の高い人物だった。

一人は肩まで垂らした長い髪の男。

金髪の直毛。

身長は190cmはある。

女性的な顔立ちで青い目をしている。

線は細い。

もう一人は短髪で髪を立てている。

無骨な顔をしているがこちらも青い目に金髪。

身体の線は太く筋肉質。

身長は長髪の男よりも低いが

180cm以上はある。

二人は入ってくると

そこに横たわっている男の前に立った。

何も言わずじっと男を見つめている。

無骨な男が誰がやったのかと

付き添っていた人物達に問いかける。

その問いに対して

細かないきさつを話始めた。

一昨日の夜

観光で来ていた彼らは

夜の街で飲んでいた。

その時同じ店にいた地元の人から

とても強い若者がいるという

情報を聞いたのだと言う。

この街の一角でストリートファイトが

密かに行われており

通称プラチナモンキーという

無敗の王者がいると。

そこで興味をもったのが

今ベッドの上で横になっている男。

興味というより少し面白い半分に

その場所に行ってみようと言い出した。

そして実際に行き彼はその

ストリートファイトに参加すると申し出た。

仲間達はやめるように言ったが

言うことを聞かず彼は闘いに参加した。

そして噂になっていた

プラチナモンキーという若者と対戦し

今の結果になっていると伝えた。

その話を聞くと無骨な顔の男は

不機嫌そうな顔で下唇を右手の親指で撫でている。

“自分で志願してやられたのなら

自業自得だ”と長髪の長身の男が言った。

“しかしやられ方がふざせている”と

無骨な顔の男は言い返した。

“白人の我々に対しての宣戦布告だ”と。

“我々の思想に対する冒涜だ”とも付け加えた。

長髪の男は少し考えて

“では君はこの事に対して何をする気なのか”と問うた。

“白人がこの世界のどの人種よりも優れていることを

知らしめる”

“肉体の強さにおいても”と無骨な顔の男は言った。

“それは仕返しをするということか”と

長髪の男は言った。

“当然”

無骨な顔の男はそう言うと部屋をあとにした。



ー2ー


大和との闘いが終わったすぐあと、

自宅に帰ったバンファムは自身の母親と父親のことで

対話していた。

母親と父親のことをしっかりと話すのは何十年ぶりと

いう位久しぶりの会話だった。

大和との対決のことは正直そんなに大袈裟なことでは

ないし、大和に負けたからどうこうということでも

なかった。

バンファムは母親と心を割って話すキッカケが

欲しかっただけだったのかもしれない。

バンファムは自分が今までどのような想いだったのか、

正直な気持ちを打ち明けた。

自分達の現状に劣等感を感じ、

それに比べて父親の裕福な生活を妬んだ。

やりたいこともできない、買いたいものも買えない、

母親も幸せにすることもできないという現状が

彼に心の余裕を無くさせ、焦りだけを生み、

歪な感情へと変化させていったのだと。

本当は格闘の世界に興味があったわけでもなく、

これしかできないから、やってきた。

他になりたいことはたくさんあったと

母親にありのままを話した。

バンファムの母親は何も言わず、

優しそうな目でただただ話を聞いていた。

というよりは何も言えなかった。

息子の夢も希望も今の現状では叶えてあげられないから。

自分の不甲斐なさと悲しさで言葉を発することが

できなかった。

バンファムが一通り自分の言いたかったこと、

言わなければならなかったことを一通り言い終えると

そのまま沈黙が続いた。

皆が寝静まった静寂した空間の中に

二人の想いだけが鮮明に浮かび上がるように

お互いがお互いのことを分かり合えて、

お互いがお互いを思いやっている。

バンファムの母親はバンファムの想いに

答えるかのように両手を大きく広げて

バンファムを呼び寄せた。

バンファムは母親の胸に吸い込まれるように

引き寄せられた。

母親はバンファムを強く抱き締める。

その時の二人は何も語ることはなかったが、

お互いがお互いの気持ちを深く通じ会えた時だった。



ー3ー


タイバンコクにあるホテルのラウンジ。

そこのテーブルとソファーに数名の白人の男女が

重々しい雰囲気の中、会話をしていた。

そのものたちは一昨日の夜に仲間一人を

ストリートファイトで重症をおってしまったものの

仲間達。

その中の一人の無骨な顔の男は苛立ちを隠せない様子で

仲間達の話を聞いていた。

一昨日の夜のことは喧嘩両成敗であるという意見と

同じ事をやり返すという意見で真っ二つに割れていた。

しかし無骨な男はその話し合いに参加してはいない。

無骨な男の知りたいこと、

それは仲間を重症に負わせたやつがどこにいるかという

ことだけ。

その情報だけが知りたいがため、この場所にいる。

それを仲間内であーだこーだと言っていることに

苛立っている。

主に喧嘩両成敗の意見を訴えているのは金髪の長髪の男。

同じ事を繰り返していればまたそれは螺旋を描いて

自分に帰ってくる。

負の連鎖が繰り返すだけだと彼は唱える。

無骨な男は彼の意見には全く耳を貸さない。

反論もせずただ黙っている。

無骨な男は突然立ち上がり、この場所で

反撃を訴えるの仲間達を引き連れてその場を後にした。

金髪の長髪の男ももう何も言わず、

彼に声をかけることもなく諦めた表情で静かに眼を瞑った。



ー4ー


カオサン・ロード。

23時。

メイン通りから少し奥に入った路地裏。

その場所に無骨な顔の白人男性ともう二人白人男性が

立っていた。

二人の白人男性はストリートファイトの闘技場所は

ここにあり、ここで仲間がやられたと

無骨な顔の白人男性に話をしていた。

冷静な表情で無骨な顔の白人男性はその場所の

回りを眺めている。

今は誰もいなく、いるのは自分達のみ。

今日はストリートファイトは行われていないらしい。

それか場所を移動しているのか。

無骨な顔の白人男性はこの場所にはもう用はないといった

様子でその場所を後にしようと歩き出した。

その後を追って他二人の白人男性達も歩き出す。

路地の細い道を抜けメイン通りに出た彼らは

仲間がやられた日にいた二人の案内で一件のバーに

たどり着いた。

このバーが最初にストリートファイトの情報を

聞いた場所だと無骨な顔の白人男性に伝える。

着くやいなや無骨な顔の白人男性は不機嫌な表情で

中に入っていった。

中へ入ると店内一杯に人々が飲みあかして賑わっている。

無骨な顔の白人男性はまだ数席空いているカウンターの

席には座らず立ったままバーのマスターを呼びつけた。

“プラチナモンキーは今どこにいる”

無骨な顔の白人男性は英語でマスターにそう告げた。

バーのマスターは表情を少しも変えずに

数秒沈黙したのち、知らないと告げた。

プラチナモンキーというのもよく分からないとも

言い加えた。

無骨な顔の白人男性は“わかったありがとう”と言うと

その場を後にしようと出口に向かおうとした瞬間、

バッと振り返り怒りを顕にした表情でマスターの

ベストの襟を両の手で掴みカウンターの奥から

引きずり出した。

カウンターに置いてあったグラスなり酒の瓶なりが

散乱し床に落ち割れる。

その音で騒音とも言えるほど騒いでいた店内が

一瞬にして静まり返る。

無骨な顔の白人男性はマスターの襟を掴んだまま

自分の顔の目の前に持ち上げた。

マスターの足は地面から浮いている。

50は過ぎているであろう年齢のマスターは

顔を真っ赤にさせ恐怖で顔を歪ませている。

“もう一度聞く、プラチナモンキーは今どこにいる”

マスターの顔を自分の顔スレスレに近づけて

悪魔のような表情で無骨な顔の白人男性はマスターを

問い詰めた。

その光景を見るに見かねた男性客の一人が

“あいつならスラム街にいけば会える”と伝えた。

無骨な顔の白人男性は場所を伝えた男性客に視線をずらし、

そのままマスターの襟を掴んでいた手をパッと離した。

マスターは首を撫でながら地面に倒れこんでしまった。

無骨な顔の白人男性はそのスラム街の場所を詳しく話すよう

問い詰めた。

男性客はメイン通りをずっと真っ直ぐ行けばたどり着くと

伝える。

無骨な顔の白人男性は男性客の目をじっと見つめたのち

向き直り何も言わずに店を出て行った。



ー5ー


バンファム達が暮らす集落。

深夜0時を丁度回ったあたり。

殆どが寝静まっている空間の中突如大きな声が発せられた。

“出て来いプラチナモンキー!”

発せられたその言葉は集落全体を異様な空気で包み込んだ。

その言葉は英語ではなくフランス語であった。

集落のあちこちから何事かという様子で人々が

外に出て来た。

無骨な顔の白人男性はまたも

“プラチナモンキー”という言葉を大声で叫んだ。

その時すでに寝ていたバンファムはその叫びに気が付き、

起き上がった。

一回目の言葉はハッキリとは聞こえなかったが

二回目の言葉は聞き取れた。

プラチナモンキーと言っている。

ストリートファイトをしているときに

外国人観光客に付けられた自分の通り名だ。

バンファムは急いで外に出ようとした。

バンファムの母親もその異変に気付き起き上がってきた。

外に出る戸の前でバンファムは母親に自分が様子を

見てくるからここにいるようにと伝え、

バンファムは外に出て行った。

ブンミー達も急いで外に出て来ていた。

その間何度も何度も無骨な顔の白人男性はプラチナモンキー

と叫んでいた。

声のする方にバンファム達が集まった。

無骨な顔の白人男性と一緒だった白人男性達が

バンファムに気付き“奴だ”と“あの腕の長い奴だ”と

無骨な顔の白人男性に伝えた。

無骨な顔の白人男性は一層険しい表情に変わるかと思いきや

表情はかえって冷静さを取り戻したかのような顔になった。

無骨な顔の白人男性は着ていたベストのポケットから

何やら取り出した。

正方形に近い形の小箱。

指輪の箱のように中央から開くその箱を開け、

何かを取り出した。

それはマウスピースだった。

しかしそのマウスピースには鋭い牙が二本

奥歯の少し前辺りに付いていた。

無骨な顔の白人男性は

そのマウスピースを口の中に入れるとまるで猛獣のように

牙を剥き出してバンファムを見つめていた。

バンファムもこの状況を察し戦闘モードに入り

意識を集中する。

無骨な顔の白人男性は少し笑みを浮かべながら

ゆっくりとバンファムの方へ歩みを進めた。

バンファムは先には手を出さないようにした。

無骨な顔の白人男性はにたにたと笑みを浮かべ歩いてくる。

けれど別に構えをとる訳でもなくただ普通に歩いてくる。

とうとうバンファムの目の前まで来てしまった。

バンファムは警戒しながら指の先にまで意識を集中させた。

無骨な顔の白人男性はバンファムよりも少し背が高い。

バンファムを少し見下ろしながら不気味な笑みを

浮かべている。

“喧嘩をしに来たんだ”

無骨な顔の白人男性はフランス語でそう言った。

しかしバンファムにはフランス語は通じていない。

バンファムは目の前の男が何を言ったのかわからないまま

相手の行動に注意した。

その時バンファムの目線が一気に低くなった。

と同時に右膝に鈍い痛みを感じた。

膝に蹴りをもらっていたのだった。

正確にはバンファムの膝を足の裏で押し込むように

曲げられたのだ。

無骨な顔の白人男性は素早い動きで

バランスを崩すバンファムの右腕を右手で絡め取って

その手が首にまで滑り込んでくる。

そのまま腕と首を押さえ込まれ無骨な顔の白人男性に

足を刈られ空中にひっくり返えされてしまう。

そしてバンファムは頭から地面にに叩きつけられた。

かろうじて腕を出してそのまま頭からの落下は防いだものの

頭へのダメージはかなりのものだった。

迂闊だったと後悔し、バンファムは完全戦闘モードに入る。

しかし打撃を得意とするバンファムには今の状況は

相当不利な状況だった。

畳み掛けるように無骨な顔の白人男性はバンファムの

顔を蹴ってきた。

咄嗟に顔面をガードするもガードの上からでも蹴りの威力は

防ぎきれない。

ガードの上からでもダメージが来る。

バンファムは次の攻撃を警戒して身構えた。

しかし無骨な顔の白人男性は攻撃をせず、

逆に後方に下がりバンファムに立ち上がるように合図した。

バンファムはその行動に警戒しながらもゆっくりと

立ち上がる。

無骨な顔の白人男性は腰を落とし胸の前で両腕を構えた。

バンファムはいつもの前屈みのノーガードスタイルを

取った。

無骨な顔の白人男性はちょっとずつちょっとずつ

バンファムまでの間合いを詰めていく。

白人男性がバンファムの攻撃の届く間合いに入った。

鋭くて速い矢のようなパンチが無骨な顔の白人男性目掛け

放たれた。

しかしそれを待っていたかのようにそのパンチは

避けられ、逆に懐に入り込まれてしまう。

無骨な顔の白人男性は懐に入り込むと同時に

バンファムのパンチを放ってきた腕を手で蛇のように

絡め取って間接を決めバンファムを前屈みにさせ、

その勢いでまるで前転させるように一回転させ

背中から地面に倒れ込ませ、自信もそのまま寝そべり

バンファムの腕を決めにかかかった。

アームロック。

それを見事なまでの一連の流れでやってのけた。

人間の間接のウィークポイントをうまく利用した技だ。

無骨な顔の白人男性はバンファムの腕を完全に

決めようとした。

しかしバンファムも左手で右手をクラッチさせ、

右腕を力一杯折り曲げ完全にに決まるのを防ごうとする。

無骨な顔の白人男性はニヤニヤと笑っていた。

白人男性は寝そべらせていた上体を咄嗟に起き上がらせた。

決まりかかっていたバンファムの腕が

一瞬解放されたように思えた。

だが、次の瞬間、無骨な顔の白人男性は口を大きく開け

バンファムの上腕に噛みついた。

長く鋭く尖ったマウスピースの牙が

バンファムの腕に深く突き刺さった。

バンファムの腕から見る見るうちに血が滴り落ちてきた。

無骨な顔の白人男性は腕から口を離すと

バンファムの腕を掴み直し一気にそり返った。

無骨な顔の白人男性の体重がバンファムの腕一本に

のし掛かり、もはや耐えることができず、

バンファムのその長い右腕は無骨な顔の白人男性の

胸の上で真っ直ぐに伸びきってしまった。

と同時に人間の間接が曲がってはならない方向へ

尚も折り曲げられていき、

“ベキッ”という音とともにバンファムの呻き声が

辺りにを駆け巡った。

バンファムの右腕を完全に折った。

無骨な顔の白人男性はバンファムの腕を離し、

スッと起き上がった。

バンファムは右腕を押さえて痛みをこらえうずくまった。

バンファムは立ち上がることはしなかった。

命の危険を感じたから。

腕を平気な顔で嚙みつき、へし折ったこの男に恐怖した。

少し前のバンファムであったらまだなお闘おうとするかもしれない。

しかし今は勝ち負けなどどうでもいい。

自分がいなくなっては母が一人になってしまう。

勝つことよりももっと大事なことがあるからバンファムは

これでこの男が立ち去ってくれるならそれでいいと思っていた。

負けを認めたようにうずくまったまま立ち上がらない

バンファムを見て無骨な顔の白人男性は口からマウスピースを外し、

唾液を地面に吐き捨てた。

少しまだ気が済んではいない様子の表情を無骨な顔の白人男性は

見せていたが、後ろへ振り返りその場をあとにしようとした。

バンファムの仲間達はバンファムの介抱にあたり

追うことはせず、

白人男性達の後ろ姿をじっと睨みつけていた。



ー6ー


バンコクにある観光ホテル。

18時を少し過ぎたあたり。

白人の男性2人と女性2人がホテルから出てきた。

大通りを出て少し歩くと角を曲がる。

どこかに買い物に向かうようだ。

角を曲がって少し歩くと白人男女の後方からおびただしいほどの

足音がけたたましく聞こえてきた。

人がこちらに向かって駆けてきている音。

何事かと後ろを振り返ると10数名はいると思われる男たちが

手に木の角材や短い鉄のパイプなどを持って迫って来ていた。

白人男女は身の危険を感じすぐに駆けだして逃げた。

本当に自分たちが狙われているのかどうかは定かではなかったが

彼らに心当たりはあった。

その白人男性2人は2日前に無骨な顔の白人男性とともに

バンファムの元に行った2人だったから。

男性2人は女性2人をかばうように逃げたがそれでは逃げ切れるはずもなく

あっという間に追いつかれ一瞬にして鈍器などで打ち抜かれてしまった。

頭や腕、足、腹には蹴りを入れられ集団で暴行を受けた。

男性2人を狙った犯行のため女性には手を出すものはいなかったが、

女性の一人が男性の一人をかばうためその男性の上に

覆いかぶさってしまった。

狂気の中に身を投じてしまった女性は頭や体数箇所を鈍器で

殴られてしまった。

女性に危害を加えてしまったことに気がついた彼らは

我に返り暴行をやめたがすでに男性2と女性1人は頭や体に無数の傷、出血、打撲で

気を失ってしまっていた。

誰からともなくその暴行を加えた数10名の男たちは急いで逃げて行ってしまった。

暴行を免れた女性の一人は泣き叫びながら、気が動転した様子でスマートフォンを

取り出し仲間へ電話をかけ助けを求めた。

電話を切ると彼女は泣きながら崩れ落ちてしまった。



ー7ー


フランス郊外の墓地。

少し薄曇りの空の下100人近い白人の老若男女が集まっていた。

それぞれ喪服に身を包み一つの墓の前で悲しみを顕にしていた。

墓石には“セシリア エヴァン”と書かれてあった。

セシリアの家族であろう女性が墓石の前で泣き崩れ、青年が彼女を支えるかのように抱き寄せていた。

セシリアは観光で訪れていたタイで集団の男達に暴行に会い、命を落とした。

彼女はその時暴行を加えられていた交際相手をかばうため交際相手の男性に覆い被さり頭を金属の棒か何かで強打されてしまった。

その影響で彼女は帰らぬ人となってしまった。

暴行の現場にいたのは男性2人と女性2人。

男性2人は重症ではあるが命に別状はなく、もう一人の女性は無傷だった。

暴行犯は女性に危害を加えるつもりはなかったようだ。

現地で一緒だった金髪の長髪長身の男性と無骨な顔の男性もその参列者の中にいた。

金髪長髪の男性に一人の男性が近づいてきた。

ブラウンの髪をきちっと横で分けている清潔間のある男性だった。

青い瞳で端正な顔立ちをしている。

細身だが肩の筋肉がスーツの上からでも浮かびあがっているのがわかる。

かなり引き締まった体をしているように思える。

身長は175センチくらい。

“ゼロさん”とその男性は金髪長髪の男性に声をかけた。

“ルーマニアのグレゴールです”と彼は自己紹介をして。

グレゴールは今回の件をゼロに問いただすように話始めた。

ここに集まっている人々はセシリアの親族、友人、そして関係者達だが、その関係者の大半が“アダマンタイト”という

白人史上主義団体のメンバー達。

セシリアもそのアダマンタイトのメンバーだった。

タイへの観光旅行もアダマンタイトメンバー同士の旅行だった。

アダマンタイトとは地球上もっとも硬い鉱物とされているもの。

団体名に秘められた意味に絶対的、揺るぎないものという意味が込められている。

白色人種が身体的にも知能的にも最も優れている揺るぎない存在であるという意味となる。

発足者、発足した年月などの詳細は不明となっているがヨーロッパを中心とした白色人種のいる国に数千人規模のメンバーが存在している。

現在アダマンタイトの最高幹部に位置しているのが金髪の長身長髪の男性“ゼロ”。

フランス人の牧師であった。

彼の思想は常に中立を保ち争いを良いこととしない。

それまで差別的な考えが少なからずあったアダマンタイトの思想を彼は変えた。

彼の考えは人は常に罪を犯している、そのやってきた罪を償うために考えを改め、素晴らしい人種であろうとするために努力しなければならない。

人は常に他人の痛みを感じながら生きなければならないと伝え続けた。

彼の思想は多くのメンバーからの信頼を集め、世代交代が行われた4年前に32歳の若さで団体の最高幹部となった。

その最高幹部にグレゴールは今回の事件の是非を問うている。

この件をどう解決するのか、メンバー達の納得のいく解決策はあるのかを問いただした。

異国でアダマンタイトメンバーが何者かに命を奪われたという情報は瞬く間に世界にいるメンバーにも届いた。

多少なりとも偏見のあるメンバーが多い中で白色人種が命を奪われたという出来事は許すまじき出来事だった。

しかも命を落とした人物は何の罪もない女性であったこともあり、重大な問題として取り上げられていた。

ゼロはグレゴールの問いに対して“このあとに全体で話し合いを行う”と言ってその場での言動は避けた。

グレゴールは何も言わず、頷きもせず数秒間ゼロの顔をじっと見詰めその場を去っていった。



ー8ー


フランスのトゥールという場所にとても歴史を感じさせる重厚で繊細な装飾が施された

美しい建物があった。

まるで古城のようなその建物が白人至上主義団体“アダマンタイト”の本部となっている。

建物の周りには広大な中庭が広がっていた。

入り口の巨大な鉄格子がゆっくりと開く。

そこに何台もの車両が列をなして入ってきた。

どれもロールスロイスやベンツ、ベントレーなどの高級車ばかり。

車は広大な中庭を走り中央の建物へと向かって行った。

建物へ到着すると入り口の前で後部座席からおりてくるもの、

直接駐車エリアに車を停め、建物へと向かっていくものとそれぞれが車からおりて

その建物の中に入って行った。

重厚な扉を開くと広々とした赤い絨毯の敷き詰められたスペースの中央に

壮大な雰囲気のある階段が現れる。

人々はその階段を登り、上の階へ上がって行った。

3階の一室に皆が集まった。

大きな楕円形の机の周りに50席程の椅子が並べられている。

それぞれの席にそれぞれが着席していく。

暗黙の了解のように上座の席を残して。

上座の二席を残して席が全て埋まった。

着席しても皆沈黙のままだった。

数分後最後の2名がその部屋に現れた。

最高幹部のゼロと無骨な顔の男性が入ってきて対曲線上の上座にそれぞれが着席した。

二人が着席してまもなく議題がとりだたされた。

その内容はもちろん“セシリア エヴァン”についてこと。

セシリアが命を落とした理由はタイでの暴行が原因で、

その発端は仲間達が興味本位で行った路上での格闘。

ゼロと無骨な顔の男性もその旅行に参加していたがストリートファイトに参加した時は一緒ではなかった。

ストリートファイトに参加したのはあくまでも同意の元でどんな目に遭おうとも

そのもの達の責任であるのは確かであると議題では納得されていた。

しかしその後のことが問題になる。

無骨な顔の男性、彼の名は“ドミニク フォーレ”。

ドミニク フォーレが仕返しをしたことがそもそもの原因であるとなった。

まずそのことについての責任を問われた。

ただそのことについてのことは親族、関係者に謝罪をして誠意を見せよということにほかならない。

本題はここからになる。

セシリア達を集団で暴行した人物達について。

その人物達はドミニクが仕返しをした人物の仲間であることがアダマンタイトメンバーでの

調査で判明したことがその場で話された。

暴行犯はマスクなどで顔を隠すなどのことをしていなかったことから

無傷だった女性は何人かの暴行していった人物の顔を見ていた。

そこから人物を特定することができた。

そこまでいけば警察で犯人逮捕が容易にできる。

そこでドミニクが話を始めた。

その内容は現地の警察には犯人の特徴なども一切伝えさせていないというものだった。

それはどういううことか。

当然のごとく問われていた中、グレゴールだけが大きな声を出して笑い出した。

皆の注目を浴びて、少し恐縮した様子で口を瞑ったグレゴールは息を改めて話し出した。

グレゴールは世の中には善と悪が共存していると述べた。

ドミニクが今やろうとしていることは善か悪かとメンバーに問い出した。

ドミニクがやろうとしていること。

犯人を自分たちの手で捕まえて裁きを与えようということではないかとグレゴールは

ドミニクに質問して返した。

ドミニクは腕を組みながら大きく頷いた。

すぐにゼロが反論した。

また同じことをしようとしているのかと。

その言葉にグレゴールが割って入ってきた。

“それこそが全員が納得のいく解決策ではないのですか”と言った。

“彼らに罰を与えるのは当然の報いであり、その責任がある

そのことを知ることによって人はやっと自分のした過ちに気付くのではないでしょうか”と語った。ゼロが話し出す。

“憎しみの連鎖は何も生まない、どこかで誰かがそのことに気が付き大きな心で全てを受け入れなければ明るい未来はやってこない”と言った。

その言葉に対してメンバーからの声があがる。

“何の意味もないものが犠牲になって気付くもなにもないではないか”

“警察に捕まったからといって彼らがその罪に気付くかどうかも疑問に思う”

“グレゴールの言うとり罰をを与えられるのは当然であり、そのあとに警察なり裁判所なりで裁きを受ければいい”

皆グレゴール、ドミニクの意見に賛同するもの達ばかりだった。

さらにグレゴールが語り始める。

“先程皆様に問うたこと、セシリア エヴァンの命を奪ったもの達に罰を与えることは

善なのか悪なのかということに対し、私は悪ではなく、善なのではないかと思う”

“命を奪ったという圧倒的な悪に対し、罰という善で人の痛みをわからせ、そのもの達を正しい道に導くのだ”

“綺麗な所しか見ようとせず、その脇にあるドブ川やゴミ溜めを見て見ぬ振りをして

綺麗事だけを述べているのはただの偽善に過ぎない”

グレゴールははっきりとではないがゼロの思想を否定してみせた。

“我々の思想は変わるべき時が来たのではないか”

グレゴールは最後にそう言い放った。

ゼロはそれでも違う方法があるはずだと反論したが、

グレゴール、ドミニクのやり方に皆が賛同しゼロの話には耳を傾けるものは誰もいなかった。

グレゴールは尚も話を続けた。

“我々が白色人種で生まれた意味、それは人を正す道しるべになる為ではないかと思う”

“我々はホーリーヒューマンであり、我々が人の世を正す運命にあるのではないか”

“この事件をキッカケに神が我々に気付けとおっしゃられているのではないか”

少し脱線したかのようなグレゴールの話もその時のメンバー達には受け入れられ、絶賛の声があがった。

この時点でゼロの威厳が徐々に失われつつあるのを当のゼロ自信が感じていた。

と同時にアダマンタイトのゼロが築き上げた思想が変わりつつあるのを感じた。



ー9ー


バンファムとの件ですっかり友人関係を築いた大和とブンミーは

ブンミーの案内でバンコクの寺院などの観光地を紹介してもらっていた。

バンコクは厳粛な場所がとても多く大和は身が引き締まる思いを感じながら歩いていた。

ブンミーからバンファムはあの日大和との闘いの後、母親と話をしてからは心境が変わり、

意識も目標も変わったという。

生まれ持った身体的能力とセンスを生かして総合格闘技の世界に進むという。

ムエタイの選手として活躍するには父親の件も何かと問題になる恐れもあり、

年齢的にも今から踏み入れられる世界ではないようだ。

総合格闘技の道に進み、選手として稼げるようになり自分の人生を母親に見てもらうのだという。

もう一つ気になることも聞いた。

それはバンファムが何者かと闘って敗れ、腕の骨まで折られたのだということ。

仕返し的な形だったという。

相手は白人の欧米人男性でかなりの手練れのようだったそうだ。

大和が思い当たるのは大和との対戦の前にバンファムに敗れた白人男性の仲間という位しか

思い当たる節はない。

しかしそれ以前にもバンファムは何人もの白人との闘いを行なっているので真相はわからない。

バンファムもその白人男性の身元を突き止めたり、復讐するつもりもないと言っているようだ。

すっかり夕方になり辺りが少し夕暮れが差した頃ブンミーは大和にバンコク市内にある

日本料理の店に案内するからそこで食事をしないかと提案した。

実はブンミーはその日本料理店でアルバイトとして働いているのだという。

そこのオーナーのタイ人男性は日本で和食を勉強してバンコクで和食の店を出したのだそうだ。

そのオーナーは日本人の女性と結婚しており、オーナーの奥さんからブンミーは日本語を教えてもらったという。

大和は快くその誘いに賛同しブンミーのアルバイト先である日本料理の店に行くことになった。



ー10ー


ブンミーのアルバイト先である日本料理のお店〈凛〉。

そこで大和とブンミーは食事を楽しんでいた。

料理は寿司や天ぷら、煮魚、茶碗蒸しなどが並べられていたが、どれも少しアレンジが加わっている。

しかしどれも本格的な味わいで美味しかった。

ブンミーの友人ということで店のマスターもマスターの日本人の奥さんも大和にとても良くしてくれていた。

マスターは〈ランナム〉さん、奥さんは〈みゆき〉さんという。

大和はまだブンミーに自分がここに来た理由を話してはいなかったがみゆきの質問もありここに来た理由を偽りなく話した。

親友の悠士の命を奪ってしまったこと。

そんな自分を許すと言ってくれた悠士の両親のこと。

軽蔑されても仕方のない内容のことを大和は包み隠さず話した。

別に人に好かれるために旅を始めた訳でもないし、そのことで後ろ指を指されたとしてもそれは受け入れなければならない現実だからそれでいいと大和は思っていた。

しかしブンミーもランナムもみゆきもその話を聞いてからの態度は今までと全く変わらなかった。

逆に大和の方が拍子抜けした感があるくらいだった。

みゆきはそのことについて一言“あなただから皆が愛してくれるんだよ”と大和に言った。

他の誰よりもその罪を深く受け入れ、誰よりも自分を責めている。

そんな真っ直ぐな大和だからこそ、悠士も悠士の両親もブンミーもランナムも愛せるんだとみゆきは言ってくれた。

大和はその言葉に深い感謝の気持ちとその気持ちに答えるためにももっと自分を成長させなければという気持ちで一杯になった。

ブンミーは大和と酒を酌み交わしてまた楽しく飲み始めた。

〈凛〉に来てからすでに3時間が経過していた。

ブンミーは少し飲みすぎたようだ。

少し酔いを冷ましてくると言って店の外に出ていってしまった。

その間大和とみゆきが話をしていた。

二人が話をしている最中、突然ブンミーの声が聞こえた。

何か口論しているような口調だった。

大和とランナム夫妻は慌てて外へ出てみるとブンミーが何人かの黒い覆面を被った人物達に車の中に押し込まれているところだった。

大和は咄嗟に駆け寄りブンミーを車の中に押し込もうとしている覆面の人物の肩を掴んで止めようとした。

しかし覆面の人物は大和の掴んだ手を腕で払い、両手で大和の胸辺りを叩き、押し退けた。

バランスを崩した大和に対し覆面の人物は前蹴りを腹部に打ち込んできた。

大和は腰を落とし、腕でその蹴りをガードする。

大和は一歩前に踏み込み右の廻し蹴りを放った。

覆面の人物は後方に下がりかわそうとしたが車のドアに当たりかわしきれず、咄嗟に腕で大和の蹴りをガードし防いだ。

ブンミーは車の中にいる数名の人物に押さえ込まれ身動きがとれない状態だった。

大和は押し込もうとしてしていた覆面の人物が怯んでいる隙に車の中にいるブンミーの服を掴み外に引きずり出そうと引っ張った。

しかし、大和の首を押し込もうとしてしていた覆面の人物が腕を絡め締め上げてきた。

完全に決まってしまっている。

大和はブンミーの服を離さないまま、首を締め上げている覆面の人物を後方に押し出し、車のドアに打ち当てた。

それでも覆面の人物は首を離さない。

もう一度ドアに打ち当てた。

それでも離さない。

大和はブンミーの服を掴んでいない方の手で首を締め上げている覆面の人物の腕を掴み、一瞬上体を沈ませ跳ね上がり覆面の人物を背負い投げのようにして上に投げ飛ばした。

覆面の人物は車のボンネットの角に背中を強打し、大和の首を絞めていた腕がはずれた。

一気に大和はブンミーを引きずり出そうとした。

背中を強打した覆面の人物は車のボンネットと開いているドアの上部に手をかけ、両足を宙に浮かせた。

そのまま両足を車の中にいるブンミーに打ちあててきた。

ブンミーを抑えていた覆面の仲間の一人もろとも車の奥に勢い良く押し込まれた。

その勢いでブンミーの服を掴んでいた大和の手が引き剥がされてしまった。

引っ張った勢いをそのままに大和は後方に仰け反ってしまう。

咄嗟に何かに捕まろうと大和は背中を強打した覆面の人物の覆面に手をかけた。

が、覆面がいとも簡単脱げてしまい、その人物の顔が晒された。

その人物の顔はあまりにも特徴的でいたが、人とは見分けがつかない顔だった。

スキンヘッドで顔自体に頭蓋骨のタツゥーが描かれていた。

骨格、体のガタイ的に男だった。

大和は仰け反った勢いを殺せないまま車から少し離されてしまう。

その隙にスカルファイスの男は車に乗り込みドアを閉めた。

すぐさま車は勢い良く走り出した。

大和は後を追ったがクラクションを鳴らしながらスピードを出して走り去った車には追いつけなかった。

その際車のナンバーを確認しようとしたがナンバーに何か貼られていて隠されていた。

大和は一旦ランナムの元に戻った。

ランナムとみゆきは店から持ち出してきたのであろうフライパンやホウキなどを手に持ち

動揺した様子で立ち尽くしていた。

応戦するつもりだったようだがそれを使うことができなかったようだ。

大和はすぐに警察に通報するようみゆきに言った。



ー11ー


ブンミーが何者かに拉致されて1時間が経過していた。

大和、ランナム夫妻やその場に居合わせた通行人などに警察が事情聴取をしている。

大和が覆面を剥ぎ取ったスカルファイスの男は骨格や肌の色から白人の欧米人と思われる。

大和はそのことをみゆき経由で警察に伝える。

さらにブンミーの友人のバンファムが何者かの欧米人男性から腕を折られたことも伝えた。

このタイで欧米人から立て続けに襲撃を受けているのは明らかに関係性が疑われる。

より詳細な内容を警察に伝えるのはバンファム達にも影響が及んでしまう恐れがあるため欧米人から執拗に襲撃を受けていることだけを伝えた。

何故執拗に襲撃を受けているのかという問いに対してはわからないと答えた。

ここに居ても埒が明かないと感じた大和はブンミーの住む集落に行くことにした。

集落に行きバンファムと会って話して、何かの手がかりを得ようと考えた。

大和はみゆきに一緒に来てもらうよう頼んで日本語のわからないバンファムに通訳してもらうことにした。

みゆきも了承してくれ、大和とみゆきはタクシーを拾いバンファムの住む集落に向かった。

タクシーを走らせ20分ほどするとバンファム達が住む集落が見えて来た。

集落に到着したタクシーから降りるとすぐに大和とみゆきはバンファムの住む家に走った。

すると集落の人間達が大勢外で集まっていた。

その中にバンファムの母親の姿もあった。

大和とみゆきはバンファムの母親の元に駆け寄りみゆきが事情を聞いた。

その内容はバンファムも正体不明の覆面集団に拉致されたということだった。

バンファムだけではなくバンファムの仲間も全員連れて行かれたという。

集落に訪れたその集団はバンファム達の居場所を全て把握しているようで、

家の中なり、外なりにいたものを拳銃を突きつけ脅し車の中に押し入れて行ったそうだ。

バンファムは家の中に居て、ノックされドアを開けたところを拳銃を鼻先に突きつけられそのまま連れ去られたという。

バンファムは母親に心配をかけないようにと思ったのか、“心配ない”と母親に言って車に乗って行ったらしい。

車にバンファム達を乗り込ませると一人の覆面の人物は集まって来た集落の人間に持っていた拳銃を投げつけたという。

その拳銃をバンファムの母親から大和は見せてもらった。

それは精巧に作られたおもちゃの拳銃だった。

よくサバイバルゲームなどで使われるガスを使用してBB弾といわれる玉が発射されるものだった。

これはただの遊びだとでも言いたいのであろうか。

ただの遊びにしては大掛かりでなによりバンファムは実際に腕を折られている。

関係性があるかどうかは定かではないが、無事では済まないような気がしてならなかった。

大和は集落の人間に心当たりはないか聞いてもらうようみゆきに頼んだ。

みゆきはタイの言葉でそのことを皆に伝えた。

すると集落の人間の一人から新事実が語られた。

バンファムの仲間達はバンファムの腕を追った白人男性の居場所を突き止めていたという。

どういう方法で突き止めたのかは定かではないが泊まっているホテルを突き止めた。

バンファムの腕を折った白人男性は帰り際バンファムの顔に唾を吐きかけて去って行ったのだそうだ。

そのことに激怒した集落に住むバンファムと交流のある仲間達が集団で突き止めたホテルから出て来たその白人男性の仲間を暴行したのだという。

バンファムの仲間達が暴行後、集落に戻ってきてそのことを話していたところを聞いたと一人の集落の人物は語った。

その青年達が片っ端から連れ去られて行ったことから、そのことがきっと原因なのではないかとその人物は推測した。

さらに衝撃的な事実を聞いた。

その暴行を受けた白人の女性の一人が亡くなってしまったということ。

殺人事件としてタイのニュースにも取り上げられていたようだ。

おそらくバンファムの仲間達が暴行した白人だとその人物は言った。

集落の批判を避けたいがために今まで誰にも言わなかったのだという。

しかし事の重大さを感じ、耐えきれなくなり今話したそうだ。

みゆきもそのニュースのことについては知っていたが、まさか自分の知り合いが関係していたとは夢にも思わなかったようで、

動揺を隠しきれず手で口を押さえ、今にも泣き出しそうな顔をしていた。

大和はみゆきを落ち着かせようと背中をゆっくりと摩った。

そして大和はみゆきに“きっとバンファムとブンミーは暴行のことは知らない”と言った。

大和はブンミーからバンファムの腕を折った人物のことを、身元を突き止めたり、復習つもりもないと言っていた。

ブンミーがそんなことをするような人間にも思えないし、今のバンファムもそんなことをするとは思えない。

おそらくバンファムの他の仲間達が自分の仲間が唾を吐きつけられて屈辱を味あわされたことに対し逆上してやったことだと大和は思った。

しかもその時居合わせた集落の別の人の話では白人男性はバンファムに唾を吐きかけてはいないという。

バンファムではなく地面に唾を吐いていたのだそうだ。

その白人男性は牙が付いたマウスピースを付けていたため外したときに出た唾をただたんに地面に吐き付けていたのだという。

彼らは地面にかけた唾をバンファムに吐きかけたと勘違いししてしまったのだ。

なんにしてもこのことは隠しているわけにはいかない、警察に事情を話すと大和はみゆきに伝えた。

みゆきもゆっくりと頷き、集落にいる人たちにタイ語で話しをした。



ー12ー


草木が生い茂り、舗装もされていない場所だった。

バンコクから30kmは離れている。

そこに3台のワンボックスカーと4台の乗用車が止まった。

時刻は深夜の1時あたり。

しばらくすると中から何人もの人が一斉に降りて来た。

車から引きずり出されるように10数名の若者も降ろされる。

その中にブンミーとバンファムの姿もあった。

その全員が後ろに手を回され両の親指と人差し指をインスロックで固定されていた。

バンファムは右腕にギプスを巻いているためロープで体を縛られ固定されていた。

バンファム達は一箇所に集められた。

その周りを取り囲むかのように車から降りて来た人物達が立った。

その人物達は皆白人の男性だった。

皆手に拳銃を持っている。

白人達の一人がバンファム達の側に近づいて来た。

顔にスカルファイスのタツゥーを施した人物だった。

頭蓋骨そのものの顔で本来どんな顔をしているのかわからない。

スカルファイスの男は手に持った拳銃を肩にトントンと当てながらバンファムの仲間の一人に近づき額に銃口を突きつけた。

それを見て焦ったブンミーは“やめろ”と大声で叫んだ。

が、スカルファイスはためらいもなく引き金を引いた。

“バシュン”という音とともにバンファムの仲間の一人がうめき声をあげた。

額に激痛が走ったようだが無事だ。

額から“ポトン”と丸い玉が地面に落ちた。

その拳銃は本物ではなくモデルガンであった。

してやったりの顔でスカルファイスはにっと口角を上げてニヤけた。

それで満足したかのようにクルッと後ろに振り返り、ポケットからスマートフォンを取り出した。

そのスマートフォンで何かのアプリを起動し、それに対し喋りだした。

発した言葉は英語だった。

一通り喋るとスマートフォンを一回タップした。

するとスマートフォンからタイ語で言葉が発せられた。

その内容は

“君達は私達の親愛なる友人の命を奪った”

“そのことについて私達の国に来て親族、友人、関係者に直接謝罪をしてほしい”

“勿論君達の命を奪うことはしない、謝罪をして少しばかりの罰を受けてもらったら全員無事に帰国させる”

“あと、これはお願いではない、強制だ”

“君達に断る権限はない”

というものだった。

バンファムとブンミーは目を丸くした。

何のことだかさっぱりわからなかった。

そんな中バンファムの仲間の一人がそのことに食って掛かってきた。

“お前達が俺達のことをバカにしたことがそもそもの原因だ、自業自得だ”

と言った。

バンファムとブンミーはその言葉を聞いてスカルフェイスの言ったことが事実であることを認識した。

“wait wait wait wait wait”

スカルフェイスは明るい口調で食って掛かってきた人物にもう一度スマートフォンに同じ事を言うようにジェスチャーした。

バンファムの仲間は声を荒立て同じ内容のことを叫んだ。

“uh~”

と鼻歌混じりにスカルフェイスは録音されたその内容をアプリで英語に翻訳した。

その後フランス語にも翻訳した。

最大の音量で英語、フランス語に略されたその内容が静まり返っている空間に響き渡る。

その内容を聞いた一人の白人男性はそのことを言ったバンファムの仲間に殴りかかろうとしたが、スカルフェイスが間に入り阻止した。

スカルフェイスはまたニヤけた顔でスマートフォンに英語で何かを語った。

その内容をタイ語に翻訳し流した。

“だったら今度は君達の身内の誰かを私達が殺す番だね、順番からいって”

という言葉がスマートフォンから流れてきた。

“待ってくれ”

そう叫んだのはバンファムだった。

バンファムは大体の内容は飲み込めた。

おそらく自分の腕を折った白人達を仲間達は襲ったのだろう。

そして誰かを殺した。

バンファムの仲間達は異常にプライドが高く、人にバカにされるのを一番嫌う。

それが他の国の人間だとしたら尚更のことだろう。

自分もそうだから。

しかし今は母親を最後まで守りたいと気持ちの方が強い。

バンファムは仲間達に“奴らの言うとおりにしよう”と言った。

当然仲間達は反論した。

“何をされるかわからない”や

“殺されるかもしれない”など。

その言葉にバンファムは一言叫んだ。

“自分達のやったことに責任を取れ”と。

自分達がその責任を取らなければ、自分達の大切な人に危害が及ぶ可能性がある。

そうスカルフェイスは言っている。

自分達がやったこたは自分達だけで責任を取る、どんなことになってもそれは自業自得だと。

他の人間を巻き込むなと言ってバンファムは仲間達を説得した。

バンファムはスカルフェイスにスマートフォンで喋らすように顔でジェスチャーした。

スカルフェイスはニッと口角を上げてスマートフォンをバンファムの口元に近づけた。

バンファムがスマートフォンに喋りかけ、その内容が英語、続いてフランス語に翻訳された。

それは

“あなた達の大切な友人の命をを奪ったことに対し、謝罪し罰を受けます”

“そして一つ約束してほしい”

“私達の家族、友人には何も危害を加えないと”

それを聞いたスカルフェイスは満面の笑みを浮かべて指でOKサインを作りウインクした。

スカルフェイスはまたスマートフォンに喋り始めた。

それを翻訳し再生する。

“それでは君達をこれから解放する”

“一週間後の13時にスワンナプーム空港で待ち合わせをする”

“その間にパスポートを各自用意すること”

“そこからフランスに君達は向かう”

と言った。

さらにスカルフェイスは続ける。

“私達のことについて少し話す”

“私達は〈L.L.L〉という組織に属している”

“ヨーロッパを中心とした白人諸国に数千人のメンバーが所属している”

“メンバーの中には政界、警察関係の人間もいる”

“財力に関しても君達の数千倍はあるであろう”

“それがどういうことを意味するか”

“君達や君達の関係者を消すことも容易にできるということ”

“君達がもし一人でも一週間後の13時に集まらなければ、君達も当然のことながら、君達の家族や関係者の命を数名奪うことにする”

スカルフェイスはそう言うとメンバーの一人からデジタルカメラを受け取った。

するとバンファム達の顔を一人づつ撮っていった。

バンファム達は総勢で11名いた。

スカルフェイスはカメラをメンバーの一人に渡し、またスマートフォンに喋り、翻訳し再生した。

“私達は君達の情報を現地の警察に伝えていないので、普通に生活していて問題はない”

“フランス大使館の方から警察の方にこの件に関しては捜査をしないよう通達してある”

“勿論君達がちゃんと集まって私達の国で謝罪し罰を受ければ約束通り君達も、君達の家族も関係者も誰も殺すことはせず、君達もちゃんと帰国させるから安心してほしい”

そう伝えるとスカルフェイスは車に戻るよう手で合図した。

スカルフェイスも乗用車の中に入り、バンファム達はワンボックスの車に乗り込まされ、全員が車に乗り込むと再び車は走り出していった。



ー13ー


大和とみゆきは一旦〈凛〉に戻ってきた。

集落で得た新事実を聞いたみゆきが少し体調を崩してしまった。

みゆきを店の奥で休ませ、大和はランナムにも事情を話した。

ブンミー達が殺害されてしまう可能性があるため事を急がなければならなかった。

大和はランナムに警察にその事情を話し、ブンミー達を拐った犯人の特定を急いでもらうよう頼んだ。

ランナムもすぐに了承し、2人は早速警察に向かうことにした。



ー14ー


バンコクの警察署の応接室に大和とランナムは座っていた。

その前に恰幅の良い制服を着た男性警察官が座ってランナムの話している内容を聞いていた。

男性警察官はランナムの話しを細かくメモに書き取っていた。

ランナムの話しを一通り聞き終えると警察官は早急に彼らを捜索すると約束した。

そして後は警察に任せるよう大和とランナムに言い、夜も遅いから早く帰るよう促した。

大和は殺人事件の重要な情報だというのに、あまりにも粗雑な対応に違和感を感じながらも警察署をあとにした。


大和とランナムが警察署を出ていったあと、対応した警察官は、ランナムから聞いた内容をメモした紙を乱雑に手に持ち真っ二つに破った。

さらにもう一回、またさらに破りそばにあったゴミ箱に捨て去った。



ー15ー


大和とランナムはみゆきのこともあり、〈凛〉に戻った。

平日の夜中の2時を少し回った時間ともあって辺りは静まり返っていた。

みゆきは閉店した店のテーブル席の椅子に一人で座っていた。

みゆきに警察に行き事情を話してきたことを伝え、次に何をすればいいのかを3人なりに考えていた。

そんな時、静まり返っていた空間に車の排気ガスの音とエンジンの音が聞こえてきて、1台のワンボックスカーが店の前に停まった。

すると車のドアが開き、中から人が一人下りてきた。

店の窓ガラス越しに見えたその風貌に大和達は見覚えがあった。

車から下りてきたその人物はブンミーだったのだ。

ブンミーが下りるとそのワンボックスカーのドアはすぐに閉まり、そのまま走り去ってしまった。

大和達は慌てて店の外に出てブンミーに駆け寄っていった。

ブンミーも大和達に気付くとゆっくりと歩み寄ってきた。

みゆきは真っ先に走り出し、泣きながらブンミーをすぐに抱きしめた。

大和もランナムのみゆきもブンミーが無事でいたことを心から喜び、安心した。

とりあえず大和達はブンミーと一緒に店に戻り、事情を聞くことにした。


大和、ランナム、みゆき、ブンミーは店のテーブル席に座りブンミーからの話しを聞いていた。

ブンミーに話によれば、ブンミーと同じ集落に住む同世代の若者達がバンファムが突然現れた白人男性に腕を折られた時、その白人男性がバンファムに向かって唾を吐きかけて自分達人種をバカにしていったことがどうしても許せないと、その仲間達は白人男性達の顔を覚えて後日探し回ったのだという。

そしてその白人男性達が泊まっていたホテルを見つけ出し、襲撃を企て、実行した。

しかし殺すつもりはなかったという。

女性にも危害を加えるつもりもなかったようだ。

頭への攻撃はしないようにしていたのだというが、腹や腕、足等にはおもいっきり攻撃を振るった。

女性は突然男性のお腹あたりに覆い被さってきたという。

そのため止める間もなく女性の頭をおもいっきり角材や鉄のパイプなどで叩いてしまったのだそうだ。

それで女性に致命傷を与えてしまった。

ブンミーとバンファムはやはりそのことを知らなかった。

彼らの話しで初めてそのことを知り。

さっき下りた車の中でより詳しい話を聞いたという。

そしてブンミーを突然連れ去った人物達についてもブンミーは語った。

やはり彼らはその襲撃をした白人達の関係者達だった。

彼らは自分達の国に来て謝罪するように言ってきたそうだ。

一週間後の13時に全員を空港に集め、そのままフランスに連れていくという。

謝罪し罰を受けるよう強制した。

さもなくば家族や関係者に危害を加えると。

脅迫的な要求だが、自分達がやってしまったこともあるし、きっと警察に行っても取り合ってくれないだろうという。

彼らは何らかの組織に属していてその組織の人脈などを使って根回ししているとブンミーは言った。

大和は先ほどの警察官の対応が頭に過った。

どちらにしても下手なことをして家族や関係者に危害が及ぶのをどうしても避けたいという。

彼らの言うとおりにするしかないとブンミーは語った。

大和達は当然のことながら行くことをやめるよう説得した。

一週間の間に何かを良い方法を考えようと言った。

ブンミーは少し手を震わせながら俯いてしまう。

静まり返った店の中に絶望という感情が辺りを多い尽くしているようだった。



ー16ー


スワンナプーム国際空港。

アダマンタイトがバンファムらをフランスに連行する当日の朝だった。

時間は午後の12時半辺り。

アダマンタイトの関係者が空港のロビーでバンファム達の到着を待っていた。

20名近くはいる。

数名は普通の身なりをしているものもいるが、その殆どが体のどこかにタツゥーが入っていて目付きも悪い。

一般の人間には思えない風貌をしていた。

その中に当然スカルフェイスの姿もあった。

スカルフェイスはそうでもないが他のもの達は約束の時刻近くになっているにも関わらず誰も現れないことに苛立ちを隠せずにいた。

スカルフェイスは落ち着いた表情で、しかも少しニヤけながら確保した際にバンファム達を撮った写真を手に持ちながら顔を楽しそうに確認していた。

そんな中空港のロビーに3人組の男が現れた。

スカルフェイスはその3人に注目した。

手に持っていた写真を確認する。

バンファムの仲間達だった。

スカルフェイスは腰をかけていたソファーからスッと立ち上がり満面の笑みを浮かべ迎え入れた。

するとその後続々とバンファムの仲間達が空港のロビーに現れ出した。

バンファムとブンミーも他の仲間3人と共にロビーに到着した。

スカルフェイスは人数と撮った写真で最終確認をする。

人数と顔写真が一致した。

結局最善の方法はこれしかなかった。

最終的にバンファムが決断した。

家族や関係者にこのことを伝えているものもいれば伝えていないものもいた。

バンファムは母親にこのことを伝えた。

もう自分の思っていることは何でも話すと決めたから。

バンファムは女性を殺害した暴行事件には関わっていない。

しかしそんな言い訳が通用する訳もない。

ことの発端はバンファムにあるのだから。

しかしブンミーは違う。

暴行事件にも関わっていないし自分の知らないところで勝手に行われ、バンファムの仲間という理由だけで連れていかれるのはおかしいと大和、ランナム、みゆきはバンファムに抗議した。

しかしそこで反論したのは当人のブンミーだった。

自分だけがそのことから逃れることはできないと言った。

仲間だからと。

同じ痛みを感じているから仲間でいるのだからと。

結局皆の説得を押し退けるようにバンファム達はフランスに行くことを決断した。


空港のロビーでアダマンタイトの関係者からバンファム達にフランス行きのチケットが渡されていく。

その時その集団の中に一人の男が近づいてきた。

その人物を見てブンミーが目を丸くした。

大和だった。

大和は英語でスカルフェイスに直接話しかけた。

交渉したいと持ちかけた。

スカルフェイスは大和の顔を見て何か見覚えのあるような表情をした。

そしてブンミーを連れ去る際に邪魔をしてきた人物だということを思い出したようだった。

大和は話しを進めた。

大和の伝えた内容は。

そちらの一人をここに残せという内容だった。

その際パスポートを自分が預かると。

ブンミー達が無事帰国した際に返すと言った。

スカルフェイスは少し顔をしかめた。

アダマンタイトの関係者達はその話しを聞いて無視して先を急ぐようスカルフェイスに促していた。

“もしそれができないということは、あなた達は彼らを無事帰国させるつもりがないということになる”と大和は話した。

別に残った人を拘束したり、監視するつもりはないと、

彼らが戻ってくる間、観光でもなんでもしていればいいと言った。

本当に彼ら全員を帰国させる気があるのであればできるはずだと大和は強い口調で言い放った。

スカルフェイスはその言葉に対し困惑するどころか笑った。

するとスカルフェイスは仲間の一人、その中でもタツゥーも何も入っていない、至って普通の白人男性の腕を掴み大和の目の前に差し出した。

そして彼をここに残すと言った。

それではパスポートを預かると大和は言い、その白人男性からパスポートを受け取った。

するとスカルフェイスが突然大和に対し、

“そのパスポートは他の連中に預けろと”言った。

大和はその言葉の意味が解らなかった。

スカルフェイスは

“そうなるとチケットが1枚余るから代わりにお前が来い”と言ってきた。

フランスを観光でもすればいいと。

大和は少し考えた。

自分一人が何かできるかどうかはわからなかったが何かができる可能性も0ではないと思った。

大和はわかったと答えた。

ただし、彼らと一緒に行動すると付け加えた。

スカルフェイスはにっと笑い、一時間後に飛行機が出るからすぐに用意してくるように促した。

大和はすぐにその場をあとにした。

空港内を進むとランナムとみゆきもその場所にいた。

大和はランナム達と合流し、先程の事情を二人に話し、ズボンのポケットからボイスレコーダーと残ることになった白人男性のパスポートを取り出してランナムに渡した。

先程のやり取りを大和はボイスレコーダーに録音していた。

もし残った白人男性が盗難として届け出をした場合、自分の意思で渡したとする証拠となるためだった。

実は近くでランナムにもそのやり取りを動画撮影して証拠として残しておくように伝えていた。

自分も一緒にバンファム達と動向することになったと二人に伝え、大和はすぐさまタクシーで泊まっているゲストハウスに向かった。


搭乗ギリギリに大和は現れた。

ボストンバッグとパスポートを持って。

そこにはスカルフェイスのみが大和を待っていた。

大和をニコニコした表情で見つめるスカルフェイスからチケットが渡され、大和は搭乗の手続きをしていった。

大和がその便の最後の搭乗者だ。

大和の手続きが済み、全員がフランス行きの便に搭乗した。

そしてフランス行きの飛行機は大和達を乗せて飛び立っていった。

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