第38話 マリエル生還
『サンクトガレン城』の中での兎人族と犬人族の立場がマルっと、入れ替わりました。
全ての兎人族は奴隷から解放されて、替わって犬人族が奴隷に成ったのです。
奴隷に成ると首に黒い首輪のような太い線が現われます。
奴隷は主人の命令に逆らえません、逆らうと首輪が締まるのです。
奴隷には一般奴隷、犯罪奴隷、戦争奴隷があります。
一般奴隷は金銭的な理由で売られた者ですが、逆に金銭で買い戻す事も出来ます。
犯罪奴隷は罪を犯し裁判で奴隷にされた者で、刑期を終えれば解放されます。
戦争奴隷は戦争で捕虜になった者で、敵国との交渉で相手側の捕虜や金銭と交換されます。政治情勢次第で解放される事もあります。
今回のケースでは、戦争奴隷として扱われるそうです。
兎人族の習慣を尊重して、領地内に自治法を定める事を国王様に認めて貰えたらと思っています。
人族とは生態も習慣も違う所があるらしいのですが、勿論基本はアストリア王国の法律に従って貰います。
お城の占領事後処理をミミちゃんに任せて、兎人族の村が有ったフランク国の砦を攻略しに行きました。
今回は辺境伯軍と国境警備隊も一緒です。
お城に治安維持の為の兵士を残して出かけました。
兎人族の兵士に道案内を頼み山道を進みます。
砦では既に城が奪われた事が分かっているらしく、逃げる者、守備する者、うろたえる者等が雑然としてました。
まず、私とお父様で10メートルぐらいの
防壁の上から矢を撃ってくる敵兵も
防壁の上の敵兵が居なくなったら、
破壊した防壁の手前にある空堀を土属性魔法で埋めます。
私達は向かって来る兵士を魔法で撃退しながら砦内に進入しました。
敵兵は犬人族の兵士が殆どで、魔法適正が低い様です。
フランク王国の人族兵士も居るようですが、せいぜい初級魔法しか使ってきませんでした。
それでも歯向かう強そうな兵士に対して、私が【ブラインド】や【石化】で無力化すると、
基本的に、敵兵は殺さずに無力化していきました。
犬人族は従順で働き者なので、戦争奴隷として働いて貰いたいと、ミミちゃんが言っていたのです。
大人しくのんびり屋の兎人族は、あまり兵士や労働には向いてないのです、とも言っていました。
結局『サンクトガレン城』周辺にあった2つの砦を含めて、元兎人族の領地を1日で取り返す事が出来ました。
「マリエルは、先に別荘に帰っていなさい。無事な姿を早くお母様に見せてあげるように」
「はい、お父様」
「ワシは国境警備隊と一緒に、フランク王国に対する守備固めをしなければならないから、ここに残らねばならぬのだ」
「はい、お父様。助けて下さり有難うございました」
「うむ、マリエルが無事で良かった、それだけでワシは満足だ。早くお母様に顔を見せてあげなさい」
「はい」
ミミちゃんのお父さんで兎人族の王様にも、お礼を言われました。
「マリエル嬢、ありがとう。10歳の御令嬢がこんなに強いとは誰も思わなかったであろう。ましてや囚われた非友好国のお城で無双するとはのう」
「どういたいまして。お恥ずかしい所をお見せしてしまいました」
「マリエル様、有難う御座いました。落ち着いたら、改めてお礼の為にウォルフスベルクにお伺いします」
「ミミちゃん気楽に遊びに来て下さいね、ごきげんよぅ」
「ごきげんよぅ」
ケンちゃんが【転移門】を開きます。
「リヒテンシュタインに【転移門】オープン!」
ブゥウウウウウンッ!
「じゃあ、ミミちゃん。又遊びに来るね~」
「は~い、ごきげんよ~う」
リヒテンシュタインの『別荘』と言う名のお城の庭に【転移門】が繋がりました。
「ただいま~」
「マリエル!」
「お母様!」
私はお母様と抱き合いました。
「無事でしたか? 怪我はしてませんか?」
「はい、お母様。ご心配かけてすいませんでした」
「いいえ、無事で良かったです」
王子達5人とグレーテちゃんとモモちゃんも迎えに出て来てくれました。
「「「おかえり~」」」
「よかった、よかった」
「優勝おめでとう」
「お城を奪ったんだってぇ!」
皆から、色々と一遍に話しかけられました。
「皆さん、とりあえず屋敷に入って、食事をしながら御話ししましょうね」
「はい、お母様」
「「「は~い」」」
私達は屋敷に入り、食事をしながら帰還のお祝いをする事になりました。
私とピーちゃんとケンちゃんとスズちゃんは、まず汗を流して服を着替えます。
その間に大広間に祝宴の準備がされました。
「マリーお帰り~。そして優勝おめでと~ぅ」
「「「おめでと~」」」
「ありがと~」
私達は子供なのでジュースで乾杯しました。
沢山の料理と果物がテーブルの上に並んでいます。
「マリー、領土を広げて帰ってくるなんて凄いですわ!」
「グレーテ、たまたまそのようなシチュエーションに成っただけですのよ」
「でも、マリーの実力が無かったら、逆に領土を失う所だったよね」
とレクシ王子。
「マリーを人質に取ってレオポルド領を乗っ取るつもりだったんだよね」
と宰相の息子ブラン。
「競争中の事故もその為に計画してたのかなぁ?」
と騎士団長の息子ロズ。
「だったら、この近くに共犯者が居るかもしれないね」
と将軍の息子セフィ。
「じゃあ、コッチでも調査しないとね」
と侯爵の息子レイ。
「それにしても、マリーは国王から報奨や褒美が貰えるだろうね」
とレクシ王子。
「まぁ、それはお断りしたいです。私だけが活躍した訳ではないのですから。責任者で保護者のお父様でお願いしますわ」
「ふふふっ、マリーは相変わらずですね。一応マリーの意向は伝えときますけど、決定するのは父上ですからね」
「はい、お願い致します」
その時ルイスがトロフィーを持って大広間に入ってきました。
「お嬢様、事故の為に表彰式に出られませんでしたけど、こんなに大きなトロフィーを頂いたのですよ」
「マリー、おめでとー」
「「「おめでと~」」」
「みんな、ありがと~」
その晩は、従魔騎乗競争の優勝と、『サンクトガレン城』攻略と、生還の話題で、遅くまで盛り上がりました。
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