第8話 魔物のペット?

 ケンちゃんは、真っ直ぐに木々のある方へ走って行きました。



「それでは、お嬢様は護衛騎士2人の後ろから進んでくださいませ」


 3歳の私は、ジュディと手を繋ぎユックリ歩きます。



「ジュディ、ひろいから、とおくまで、よくみえるね」


「はい、そうですね」



「ジュディ、わたしたちは、ぶきをもってないの」


「はい、持ってませんね」



「まものが、きたら、どうするの?」


「はい……、どうしましょう?」



「私達が守りますから安心して下さい」

 ルイスが言った。


「うん、おねがい」

「お願いします」



 マリエルが草原を見てると、半透明の緑色や黄色の丸い光が所々に見えます。

 小さな文字も表示されていました。


「エイルちゃ~ん、ポワンってみえる、まるいヒカリはな~に?」


『緑は薬草や食用で、黄色は鉱物資源だよ。マリエルちゃんにもそれが見えるんだね?』


「うん、みえるよ」



『私の親友マブダチだからかなぁ。そういう影響があるとは思わなかったな……』


「そうなの~。しゅうせい、してもいいよ~」


『親友のままにしたいから、このままにしとくね』


「うん、ありがと~」



「お嬢様、もしかしてエイル様が近くにいらっしゃるのですか?」


「ううんっ、いないよ。おはなし、してるだけ」


「お嬢様は、天界と交信できるのですか?」


「わからない。エイルちゃんは、てんかいに、いるの?」


「そうだと思います」



『天界? 私が居るのは異空間だから、ここに神様はいないよ』


「ふ~ん、ありがとう。いくうかん、だって」


「……そうですかぁ」




「まものが、でるまで、サイシュウしましょうか」


「はい」



「ジュディ、ここ」

「まぁ、ミントですわ」


「ジュディ、ここ」

「まぁ、セージですわ」


「ジュディ、ここ」

「まぁ、バジルですわ」


「ジュディ、ここ」

「まぁ、レモングラスですわ」


「ジュディ、ここ」


「……これは、雑草ですね」


 そこは黄色にポワンと光っていました。



「ルイス、ここ掘って」


「はい、お嬢様」


 ルイスは小型のつるはしでザクザクと掘り始めました。

 疑う事も無く、一生懸命掘り続けます。


 カッツーンッ!


 大きな塊に当って土から掘り出し、土汚れをこすり落とします。

 野球のボールぐらいの石から土を落とすと、金色の地肌が見えてきました。


きんです」


 ロベルトとルイスとジュディは思わず顔を見合わせた。



「本物だと思いますが、この大きさだと、私の年収ぐらいの価値はあるでしょうね」

 ロベルトが言いました。


「お嬢様、他にもありますか?」


「う~ん。このちかくには、ないわ」


「そうですか」


「やくそうは、いっぱい、あるわよ」


「はい」



 そんな会話をしていると、ケンちゃんがこっちに向かって、猛スピードで走ってきました。

 腕には茶色のウサギ?を抱いています。

 そしてケンちゃんの後を4匹の角ウサギが追いかけて来ました。ウサギとは思えない程のスピードです。


(マリエルは兎が遅いと思っていますが、実際の兎は速度40キロ以上で走れて、100メートルを9秒で到達できるそうです)



「た、たすけてぇぇっ!」

「ケンちゃん、ファイヤーボールよ!」


「ファイヤーボーールッ!」


 ボッ、シュゥゥゥッ、バァンッ!


 ファイヤーボールが先頭を走ってた角ウサギに当り、一発で倒しました。

 しかし、次の角ウサギによって、ケンちゃんが突き飛ばされます。


 ドンッ! ヒュゥゥゥンッ。


 ケンちゃんの体は軽いので、空中に舞い上がりました。

 残った角ウサギ3匹は、そのまま真っ直ぐこっちに走ってきます。



「ヒッ!」

 ジュディが小さく声を発しました。



「つのウサギを【ブラインド】!」


 ピッキィイイイイインッ!


 マリエルは3匹の角ウサギに目潰しの魔法を掛けました。


「「「キュキュゥゥッ!」」」


 角ウサギ達はパニックを起こし、通り過ぎたり、回ったり、止まったりしています。


 ロベルトとルイスが、それを剣でサクサクと処分していきました。




 ケンちゃんがお尻を押さえながら返って来ます。


「いや~、マイッタマイッタ」


 ケンちゃんのお尻を見ると、角で穴が開いていました。


「ジュディ、針と糸を持ってるでしょ?」


「はい、ケンちゃんのお尻を縫うのですね」


「うん、おねがい」


 ジュディはいつも針と糸を持っているのです。




「ケンちゃん、さっきなにか、もってたでしょ?」


「あっ、そうだった。ぶつかった時に離しちゃった!」


 ロベルトとルイスは角ウサギを解体してるので、3人で探しに行くことにしました。



「お嬢様、あそこに何か居ます……」

 ジュディが指差しました。


「俺が、角ウサギにいじめられていたのを助けたんだよ」


 そこには茶色のウサギ?の様な動物がうずくまっていました。

 しかしその動物には角が無く、耳も小さかったのです。顔はウサギに似てるし、2本の出っ歯もありましたが。



「サイズは同じぐらいですけど、角ウサギではありませんね」

 解体を終えたルイスが後ろから覗き込みました。


「犬でも猫でもないですね」

 ジュディが応えます。



「「カピバラ!」」


 マリエルとケンちゃんが幼い頃に一緒に行った動物園で見た、カピバラの子供でした。


 カピバラは大人しくジットこっちを見ています。

 マリエルが撫でると、気持ち良さそうに目をつぶりました。



「おうちに、いっしょに、いこうね~」


「お嬢様、それをペットにするのですか?」


「うん」


「そうですか……」


 ジュディは思いました。又、変なのが増えたと。

 それは、この異世界に居るはずの無い動物なのでした。



「ジュディ、あつめたやくそうを、ケンちゃんにたべさせて」


「はい……お人形さん、お口を開けて下さい」


「ア~ン」


 ジュディは集めた薬草を全部ケンちゃんの口に入れました。



「ケンちゃん、おいし~い?」


「味が無いね」


「そう!? ニガクなくて、よかったね」


「うん」



 マリエルは、カピバラを抱き上げようとしましたが、重くて持ち上がりませんでした。


「ルイス、おもいから、だいてちょうだい」


「はい、お嬢様」


 カピバラはルイスに大人しく抱かれました。



 ロベルトがマリエルに聞きます。


「お嬢様、今日はこれで帰りますか?」


「うん。ペットをゲットしたから、かえります」


「はい、わかりました」



 私達は馬車に乗ってお城に帰りました。






「エイルちゃん、こんばんは。

 草原で、薬草と金を採取しました。

 ケンちゃんに薬草を食べさせたけど、味がしませんでした。

 マジックバッグに入ったのでしょう?

 それからカピバラをペットにしました。

 いつも見守ってくれて、ありがとう。

 おやすみなさい。

 親友マブダチのマリエルより」




「マリエルちゃん、こんばんは。

 ケンちゃんが可哀想だから、薬草を食べても苦味を感じない様にしときました。

 あと、ケンちゃんのケガを直す為の【復元】と、ケンちゃんの汚れを落とす為の【洗浄】と【乾燥】のスキルを上げましょうね。

 そして、この世界にカピバラはいません。大事にして上げてくださいね。

 おやすみなさい。

 親友マブダチのエイルより」

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