335 現状(2)


「それで最初の襲撃からの経緯を聞きたんですけどいいですか?」


「うん?教会からは聞いてないのか?」


「ある程度は聞きましたが、やはり現場の声というのは重要だと思いますので」


「うむ、そうだな。

 では最初から話すが、最初に襲撃されたのは約1年前だ。西の海から船でやって来たと言う話だな。村の漁師が見たと言う報告が上がっている。


 そして海沿いの山を越えて襲撃があったのはその一月後。魔物を船に乗せて来たのでなければ、この期間に魔物を召喚したと言う事だろうな。


 そしてそれからも魔物の襲撃はあったが、魔族が襲撃に加わったのは3回目の時だ。

 城壁のすぐそばまで魔物に近づかれたが、なんとか撃退した。と言うか、ある程度こちらが耐え切ったら向こうが勝手に引いたと言う感じだだろうか。

 どうもこちらの戦力を測っていたように思う。


 それからしばらくして、漆黒のドラゴンが襲って来た。

 流石にドラゴンの襲撃まで予想していなかったので、地上向けのバリスタを傾けて上空に飛ばしたりして迎撃したんだが、これもある程度被害が出たところで引いた感じがするな。


 それから後は散発的に魔物が襲ってくる程度だ」


 ふむ。こちらの戦力を測ってるね。もしかして魔族の方も十分な戦力がないのかもしれないな。


「高名な冒険者が襲われたと言う話も聞きましたが?」


「うむ、大陸でも優秀なものが何人か行方不明になっておる。

 ただ魔族のせいかと言われると証拠がないのだ。どこかの田舎に隠居しても同じように行方不明だろうからな。

 ただ、依頼の途中でいなくなった者だけでも数人。Sランクだとハマリット殿が行方不明だ。

 かの御仁はアズール帝国で雇われていたので、行方が分からない=死んだと考えていいはずだ」


「Sランクでもですか。確かにSランクでも不意を突けば倒せるでしょうけど、、、」


「うむ。Sランクともなるとその不意を不意を突くのも難しい。そして正面から戦えばいくら魔族とはいえ無事で済むとは思えん」


 まあタスクの街に来た魔族程度ならSランクでなくても倒せそうな気がするが。

 いや、逆に言えば、あの程度の魔族までこの大陸に流れて来たとも言えるか。


「後、聖遺物が奪われたとも聞いてますが」


「うむ、聖遺物の治められた場所に堂々と魔物を引き従えて襲ったそうだ。神殿騎士がいた場所もあったらしいが、全滅だったと聞いている。

 他にもダンジョンで倒された魔物が放置されているとか言う話も聞くから、ダンジョンにも潜っている可能性がある」


 ダンジョンの魔物を倒した?従えればいいと思うんだが。何か条件でもあるんだろうか。


「ギルドで把握してるのはそれくらいだな。

 それで魔族を討伐する目処は立っているのか?」


「いえ、どう言う戦い方をするのかもわかっていませんし」


「そうだな。この首都を襲った魔族は雷系の魔法を使ったな。ただ出撃した騎士団を剣で倒したと言う話もあるから、魔法だけと言うわけでもないようだ」


 魔族は身体能力も高いと聞くし、それだけでも脅威だな。


「他の地域を襲った魔族の能力はそれぞれだな。火系統の魔法もあれば水系統の魔法もあったらしい。魔族にも属性があると言うことかな」


「どの程度の魔法を使ったかわかりませんか?」


「範囲で言えば幅100m位。威力で言えば騎士が動けなくなるくらいだな。一撃で死んだ者はいなかったらしい。死者はほとんどがその後の魔物の襲撃の結果だな」


 幅100mか。結構大規模な魔法だな。雷系の魔法だと死ななくてもしばらくしびれて動けないだろうし。


 俺が幅100mで半殺しする程度の魔法を使うとすると、結構な魔力を消費するな。魔族も連発しなかったみたいだし、その辺が限界だと思っていいだろう。

 もっと魔力があるなら重ねがけして一気に倒してしまっただろうし。


「城壁の中はどうだったんですか?市民に被害は?」


「それが教皇様が城壁に巡らした結界魔法で威力が削がれたのか、何箇所かで火事があった程度で済んでいる。そうなんども使える魔法でもないらしいから、今後も大丈夫かは不明だが」


 おお、教皇様、そんなすごい魔法が使えるんですね。

 俺の結界魔法はそんなに広範囲に広がるタイプじゃないからな。魔力を多めに込めればある程度広がるとは言え、首都全面を覆うのは無理だ。不可能じゃないけど1時間ももたないだろうし、結界を張りながら魔族と戦うなんてできない。


「まあそう言う事なんで、魔族は頼んだ。俺たちは騎士団と協力して魔物から首都を守るからな。ああ、ドラゴンも任せたぞ。Sランクの力を見せてくれ」


 あ、丸投げされた。まあ元々そう言う話だったからいいんだけどね。


「冒険者による防衛は強制依頼ですか?」


「うむ。長期にわたる強制依頼なので罰金で不参加も認めている。結構な額だが、上級冒険者なら払えない額ではない」


「俺も対象に入りますか?」


「いや、罰金を払ったと言うことにしてフリーとする」


「なら大丈夫ですね。何か情報が入ったら教えてくださいね」


「もちろんだ。頼んだぞ」


 情報収集はこんなもんかな。明日は教会に行くし、今日はもう寝るか。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る