319 ドラゴンの報告


「それとドラゴンはいませんでした。報告終わり」


 すっかり忘れていたが、ドラゴン探索は終わってるから報告しないとな。ちょっと空気を読めやと言う感じはあるのだが、王様の呟きを聞いてても何も進まないので、自分の用事だけでも済まさせてもらおう。


「うん?ああ、そうか。それは良かった。

 宰相がいない場合、貴族会議は誰が召集するのじゃったかな?」


「陛下、それで報酬ですが、、、」


「まあ待て、予算の執行は、、、」


「王家が立て替えて払ってくれるんでしたよね?」


「う、そうじゃったな。じゃが、これから何かと入用じゃし。。。」


「それはそちらの都合ですよね?この件はこの件で報酬を貰いたいのですが」


 先に貰っとかないと、払われないような気がするので、ここは強引にでも話をつけておかないと。


「うむ、分かっておる。分かっておるんじゃが、、、」


「分かってるなら払えますよね?」


「分かった。払おう」


 うん、最初からそう言えば良いのに。

 さて、これで俺の仕事は終わったな。あとは任せて帰ろうか。夕食は何かな?


「待った、巫子殿、まだ話は終わっておらん」


「え?依頼の報告はしましたし、報酬の話も終わりましたよね?まだ何かありましたか?」


「魔族の件じゃ。暗躍してるとなればこれからさらに被害が出る可能性もある。巫子殿には是非とも協力をお願いしたい」


 そう言われると思ってたけど、今のこの国だと報酬が払われる気がしないだよね。


「依頼の内容と報酬は?期限は?」


「うむ、そのだな、魔族への対応が終わるまで国の顧問として、、、」


「お断りします」


 冗談じゃない。魔族への対応が終わる?一体いつのことだ?それに国の顧問って公務員の給料なんてたかがしれてるだろうに。


「給料は2倍、、、」


「お断りします」


 単発の依頼なら受けても良いんだけどね。ゴブリンエンペラーの討伐とか。あれは簡単だったな。報酬はもらえなかったけど、依頼だったら結構な金額になってたんじゃないだろうか。


「ここは国への忠誠心を、、、そうじゃったな、巫子殿はこの国の住人では無かったの」


 その通り。国交も結んでいない国に義理はない。まあ人族の国にも義理はないんだけどね。リリアのお父さん位は気にするけどね。


「帰って良いですか?」


「うむ。何かあったら相談させてもらおう」


「ええ、報酬を用意してから呼んでください」



 俺は帰りに白金貨6枚を受け取って家に戻った。


「お帰りなさい。教皇様はどうでしたか?」


「ああ、依頼は失敗になった。だけどペナルティーはない事になったよ。あの教皇様は大した人物だ」


 あの国王を見たからかもしれないが、教皇様が大人物のように感じた。神聖魔法の実力は知らないけど、懐の深さは十分だと思う。


「それは良かったですわね。

 そうそう、次の船でセルジュ様が戻って来られるようですよ」


 おお、そうか。

 俺の探索のために金策に走っててくれたらしいし、お礼を言わないとな。久しぶりだけど元気にしてるだろうか。








◆◇


「獣人大陸にはまだ着きませんの?」


「申し訳ありません。風の具合がよくないようで、遅れております。

 何せまだ航路が決まっておりませんので。数年もすれば風の向きなどの情報も把握出ると思いますが」


「そう。仕方ないですわね。

 ジン様を早く発見しないと。人族大陸に現れたと言う魔族に対処できるのはおそらくジン様だけ。あの方を見つけることが最優先ですわ」


 まだジンが戻ってきた事を知らないセルジュ様でした。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る