317 魔族
集中して魔力感知を行うと、中央付近に魔力を感じた。
普通にその辺に存在している魔力と似通っていたが、少し違う。偽装されてる可能性もあるな。
「なんか中央付近に何かあるな。測量はそこを中心にやってくれるか?」
皆を集めて測量場所を指定する。
すると、執務室の間に1箇所、幅1メートルくらいの不明な空間があるのが分かった。
「ここか。隣の執務室からこっち側の壁を調べてくれ。隠し通路があるかもしれない」
自分はこっちの執務室の壁を調べる事にする。
剣の鞘で壁を叩いてみたりするが、特に変な音がするわけでも無い。まさか三階から階段が降りてきてるとか無いよな。最悪最上階からと言う可能性もあるが。
「こっちには怪しい扉はありませんでした」
「なら壁を壊すか。聖遺物は持って帰るし、宝物があっても持って帰る。なら入り口が壊れてても問題ないだろう」
俺は皆を下がらせ、風の刃を範囲を狭めて発動する。
ずがっ!
かべに斬撃が食い込むと、一番深かった場所が向こうに通じていた。
最悪階段の基礎、と言う可能性もあったので僥倖だろう。
「よし、もうちょっとだな」
何度か場所を変えて風の刃を叩きつけると、人一人が通れるくらいの穴になった。
中を覗き込むと、地下に向かって階段が続いている。
「ビンゴ。クレア、俺が最初に行くから、念のために最後尾を頼む」
そう言って、真っ先に階段を降りて行った。
「すごいなこれは」
階段を降りると木製の扉があったと思われる場所があった。もちろん朽ちているので、扉としての用を果たしてない。
扉の向こうには木箱に詰められた金貨が大量に積まれていた。そして中央にはいかにも、と言う感じで台座があり、短仗が一本置かれていた。
下敷きになっていた布も風化しているし、木の台座もいつ壊れてもおかしくない。
短仗は明らかに魔力を発しており、そのマジックアイテムとしての存在感を表している。
「こんなにはっきりとして魔力を感じれなかったとは。俺も焼きが回ったな」
多分部屋に何か仕掛けがあるのだろうが、専門家でもない俺が調べても分からないだろう。獣人の研究者が喜んで調べるだろうし、そっちに任せればいい。
とにかく短仗を確保してしまうのが先だ。
短仗に手を触れようとした時、後ろから声がした。
「こんなところに隠し扉があったとはね。君たちには感謝しても仕切れないよ」
男の声だった。
振り返ると、優男が立っていた。だけど、獣人じゃない。頭から2本のねじ曲がった角が生えている。背中には蝙蝠の羽と、これまたいかにもな格好だ。
コスプレでもない限り、これは魔族というやつだろう。それとも角に蝙蝠の羽って言う種族が獣人にはあるのか?
「見つけた早々で悪いけど、その杖は渡してもらうよ」
そう言って一瞬消えたかと思うと、俺のそばに気配を感じた。
思わず飛び退ると、魔族の男が短仗の横にいた。短距離転移?そうとでも思わないと、俺の目の前で移動したはずの男の軌跡がわからないはずがない。
そして俺は飛び退ったのを後悔した。
すでに魔族は何か布のようなもので短仗を包んで手にしていたのだ。
「これで計画が進むね。魔王様も喜ばれるだろう」
すでに魔族は俺たちに気を配っていない。
溜めも何もなく、風の刃を発動した。
そして、魔族に当たった瞬間に弾かれた。
まさか魔法を弾かれるとは思わなかった。ドラゴンでさえ弾かずに鱗で耐えてたのに、この魔族は魔法自体を弾いてきた。
たとえ溜めのない、軽い攻撃だったとしても、耐えるのと弾くのでは意味が変わってくる。
弾かれたと言うことは、少なくともそれだけの魔力を持っていると言う証拠だ。それとも専用の魔法でも施していたのだろうか。
「ふふ、そんな魔法は効かないよ。出直してくるんだね」
そう言うと、男は何やら呪文を唱え始める。
これはまずいな。俺は魔力を込めて風の刃を放つ。一つだけでなく複数。
そして全てが弾かれた。
「じゃあね」
魔族は一瞬で消えてしまった。転移だろう。
部屋の中はしんと静まり返っていた。
それはそうだろう、魔法を弾かれるのもそうだが、転移を使うのも初めて見るだろうし。
まあ、一番ショックだったのは魔族の存在だろうが。
「あ、あれは、魔族、でしょうか?」
マリアに聞かれたが、俺も自信はない。
「多分?」
「そ、それに聖遺物を、、、」
「ああ、持って行かれたな」
「ジン様!何を悠長に言ってるんですか!魔族ですよ、魔族!」
「ああ、魔族だな。存在が証明されたのは良いことだ」
俺は魔法を弾かれた方がショックだ。ドラゴンにもダメージを与える魔法が弾かれたのだ。どれだけ魔力を持ってるのかと言いたくなる。
「宝物を回収して戻るぞ。魔族がこの大陸に来ている事を報告する必要がある。
あとは依頼の失敗も方向しないとな。ミッション失敗のペナルティってあったっけ?」
俺たちは急いで王都に戻る事にした。お宝は全て俺のアイテムボックスの中だ。
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