316 地下牢
2階は基本的には執務室だった。
役所の機能も兼ねていたようで、大部屋にカウンターなどが並んでいる部屋がいくつかあった。
一応真ん中の部屋が教会っぽく神像が立ってたりもしたが崩れていて男か女かも分からなかった。この大陸に来たばっかりの頃の教会ならその当時の主神の像だろう。
俺の知っている神様はじじいだったんだけど、この世界では女神様が主神らしいからな。神託なんかも女神様かららしいし、あの像も女神様だったのかもしれないな。
3階からは主に寝室などが多かった。それほど大きな部屋はなかったので役人の泊まっていた部屋じゃないだろうか。教会だから神官の部屋だった可能性もあるが。
4階以降は同じ作りで、基本的に何もなかった。風化したのかとも思ったが、それにしては部屋が綺麗すぎる。どの部屋も同じなので、おそらく大陸中央に都を移す際に持っていったのだろう。そう考えないと辻褄が合わない。
どうやら7階が最上階のようだ。
広い部屋が多く、中央には特に巨大な部屋があった。ベッドの跡があったので、おそらく国王の部屋だったんじゃないだろうか。こんなに大きなベッドで何してたんだ。建国時の大変な時期にナニしてんだ。
その部屋にはテラスが設けられており、裏庭が見下ろせた。教会の後ろには道があり、海の方に向かっているようだ。
なるほど、裏口から海に行き、表からは中央に向かっているのか。
最初は裏の方がメインだったのかもしれないな。もしかすると海まで行ったら船の残骸とかが転がってるかもしれないな。
「さて、ここが国王の部屋だと思うんだが、隠し扉でもあると思うか?」
俺の魔力感知ではこの部屋には何もないと感じている。だが、魔力感知では隠し扉は感知できないのだ。魔力で動いてたら可能なんだけどね。
「国王だか教皇だか知りませんが、こんな大きなベッドなんて」
そう言ってリリアが顔を赤くしているが、ナニを考えているのかな?
全員で壁を叩いたりして隠し扉を探すが、見つからなかった。盗賊的な役割の仲間がいないのは不便だな。
だけど自分たちで探せるのは探した。そしてなかった。なら地下を疑うべきだろう。
「ジン様、お腹が好きましたわ」
おお、そうそんな時間か。
「マリア、何か作ってもらえるか?」
「なら一旦馬車まで戻りましょう。教会の中では火を使うのは不安です」
そうだな。1階のキッチンは不潔だろうしな。
「ジン様、料理には手を出さないでくださいね?」
俺、一応料理スキル持ってるんだけど?
「実績が語ってますわ」
はい。黒焦げの炭を作ったのは俺です。
「さて、地下室を探す訳だが、メアリー、城の地下室だと仮定して、どの辺に入り口があると思う?」
「そうですわね。造りが特殊なのではっきりとはわかりませんが、厨房とは離れてると思います。厨房にはGが出ますからね」
そうか、Gはダメだな。
「それに場合によっては地下への入り口が2階にある可能性もありますわ。
地下室に何を置いてるかにもよりますけど。宝物庫なら可能性がありますが、地下牢とつながっている場合は一階ですわね」
え、宝物庫と地下牢がつながってる可能性があるのか?
「ええ、地下室を作るのにはかなりの労力が必要です。それに別の場所に作っても城の基礎が疎かになりますし。同じ場所に固めるのは不自然じゃありませんわ」
なるほど。確かにこの世界、人力での建築だからな。魔法があるとはいえ、城ほどの大きさの建物の基礎だ。地下室があったらその分だけ不安定になるだろう。
「なので、宝物庫と地下牢を分ける場合には地下牢は城の地下ではなく、近くに別の建物を立てて、そこから地下に入るのが普通ですわ。罪人を城に一度入れる必要もありませんしね」
って、それの方が普通では?
「この建物が城か教会かで変わってきますわ。城には地下牢も必須ですけど、教会には必要ありませんから。
ジン様の感知では地下室はわかりませんの?」
「ああ、俺の魔力感知は地下だと極端に感度が悪くなるからな。各階で行った感知では反応がなかったから、特殊な金属で囲われた部屋でもない限りはなかったはずだ」
思い出せば魔の森で毒蛇が泥に塗れていて感知できなかったのがあったな。大量の毒蛇に囲まれて死ぬかと思ったのを覚えている。
「なら一階の間取りを調べましょうか。壁の厚さは基本的に一緒のはずですから、部屋の大きさと間取りから階段があればわかるでしょう。
その場所の壁を破れば、隠し扉なんか探さなくても一発ですわ」
なるほど。力押しだけど、有効かもしれないな。
「なら分散して測量するか。クレアはリリアと左から調べてくれ。メアリーとマリアは右からだ」
「ジン様はどうするんですの?」
「ちょっと集中して魔力感知してみる」
感度が悪いだけで、全く感じられないわけじゃないんだよね。離れてたら分からないけど、真下にあったら流石にわかるんじゃないだろうか?
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