314 ワイバーン
「ジン様!」
俺が寝てるところで起こされた。まだ日は登ってないようだが。
「何かが飛んでます。大型の魔物のようですが」
何?ドラゴンが出たのか?
俺は御者台に出てマリアの指差す方向をみる。
確かに何かが飛んでいるようだ。鳥にしては大きすぎる。
俺は<光魔法>で強力な光を生み出し、宙に打ち上げる。
そして見えるのは、10匹ほどのワイバーンだった。
ふう、ドラゴンじゃなかったか。さすがにドラゴンが10匹もいたら逃げるので精一杯だっただろうしな。隠れる場所もない山裾で馬車を守りながら戦うなんて無茶だしな。
ワイバーンは光に驚いたのか、旋回して山の方に戻って行った。
「ワイバーンか。ドラゴンと見間違われる可能性もある、か」
「そうですわね。空を飛ぶ魔物なんて見る機会はそうないでしょうし。大型の空飛ぶ魔物を見たらドラゴンだと考えてお不思議はありませんわ」
メアリーも起きてきたのか、去っていくワイバーンを見ている。
「ワイバーンか。食べれるのかな?」
「たとえ食べれてもジン様は料理しないでくださいね」
え?ダメ?料理スキルの出番だよね?
「先日、卵をダメにしましたよね?オーク肉も」
あれは肥料だったんだってば。
「スープの味付けは?」
不可抗力です。香草と雑草の見分け方なんか知らないよ。
「薬草の見分け方は初心者講習で習うはずですよ?」
俺、そんなの受けてないよ。
「はあ、ジン様はお強いのに、何か抜けてますね。一度初心者講習を受けてみてはどうですか?」
うん、それは検討しよう。探索者協会の初心者講習ならお断りするところだが、冒険者ギルドのなら得るものがありそうだ。
「じ、ジン様はすごいんです!」
リリア、何がすごいんだ?俺の癒しのためにも言ってくれ。
「夜になると、、、」
「あーーーー」
俺はリリアのセリフを遮るように大声を出した。
「ジン様!ワイバーンが戻ってきてしまいますわ!大きな声を出さないでくださいまし」
ああ、そうだった。いや、リリアが変な事を言いかけるのが悪い。
「えっと、森で探索中に夜になった時の話なんですけど。ジン様は夜目が効くようで、灯りもなく魔物を倒されたりしていて。とても勇気づけられましたわ」
ああ、そういう話か。それなら話しても良いかな。
「それなら私もあります!私とクレアと三人でダンジョンにいた時ですが、、、」
うん、その話も大丈夫な奴だな。というか、ある話以外は全部大丈夫なはずなんだが、なんで誤解をうけるような言い方するかな?
「いえ、本当は自慢したくて」
リリア、心の声が漏れてますよ。
「リリア、今度話してくださいね」
メアリー、聞かなくてよろしい。
「今後の参考にさせてもらいますわ」
メアリー!聞かなくてよろしい!リリアも話すんじゃないよ?
「ゲフン。ゲフン。それであのワイバーンはどうしますか?
夜が明けるのを待って討伐しますか?」
「いや、今回は討伐依頼じゃないし、あのワイバーンも悪さをしたわけじゃないしな。
それに今の国王の感じだと、倒しても追加の報酬は期待できないし。
ここは放置でいいだろう」
フェリス殿下はあれだけ優秀なのに、他のメンツはなんで使えないかな。フェリス殿下からの依頼だったら討伐してしまっても良かったんだけどな。
この大陸ではワイバーンすら倒したという話を聞かないから結構貴重な素材だと思うんだよね。下手すれば王族の鎧にでも使われるんじゃないだろうか?
「では警戒を続けるという事で。クレア、ちょっと早いですけど、交代良いですか?」
「もちろんだ。昼までは私が担当しよう」
基本奴隷の二人が夜でメアリーとリリアが日中となっている。忘れそうになるが、一応立場があるからね。
俺?起きてるときに見張る程度かな?さすがにずっと魔力感知するのは現実的じゃないし、疲れるからね。この旅は休暇も兼ねてるんだ。ゆっくりしないとね。え、俺だけがゆっくりしてても良いのかって?良いんだよ。
「じゃあ、ジン様、五目並べでも、、、」
「あー、俺はもう寝るかな。まだ眠いしな。ああ、残念だなー」
俺はもう五目並べはしない。そう決めたんだ。
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