310 木工


「結論は出ましたか?」


 俺は王宮に結果を聞きに来ていた。

 ただ、陛下の顔を見て、まだ決まってないのは明らかだ。困った顔をしている。


「それなんじゃが、ドラゴン探索も含めて待ってもらえんか?」


「はい?」


「先日宰相を罷免した影響が出ておってな、予算の執行に不備が多いのじゃ。どうやらあの元宰相が不正をやっていたようで、現在調査中なのじゃ。

 その関係でほとんどの出金にストップがかかっておっての。

 王家からの支払いなら関係ないんじゃが、今回は国の依頼じゃからな。すでに達成済みの依頼ならともかく、まだ止めれるものは止めるようにする事になったのじゃ」


 はあ、そんな程度で決まってる出費を制限するなんて国のやる事じゃないだろう。来年の予算編成なら分からんでもないが。


「では、キャンセル料として最低依頼がく白金貨1枚の2割、金貨20枚と上乗せ分の白金貨5枚をお願いします」


「キャンセル料じゃと?」


「ええ、私はすでに一度森の向こうまで行っています。宰相のせいで戻ってきはしましたが、依頼は実行途中です。つまり依頼はすでに受注済みです。

 それを依頼者の都合でキャンセルしたのならキャンセル料を払うのは当然です。旅の準備にも金はかかっているのです。一方的な都合でキャンセルは受け入れられません」


 元々旅行くらいの気分だったからキャンセルされても良いんだけどね。大分この国のいい加減さも見えてきたし、ちょっと揺さぶってみよう。


「というか、依頼が達成したものに支払いが出来て、未達の物には払えないって何ですか?これから達成の報告される分はどうなるんですか?」


「いや、じゃから宰相が、、、」


「宰相が不正をしたのと依頼は別物です。依頼を発注する前ならともかく、契約した以上は報酬は払ってください」


「いやしかし、、、」


「陛下。財務省がどれだけ権力を握っているかは知りませんが、宰相一人が不正をしていた程度で国費が動かせなくなるなんておかしいでしょう?それほど王家の権力は低、、、」


「巫子殿!それ以上は許さんぞ!」


 おっと怒った。まあ煽ったんだけどね。探索者って依頼のキャンセルって受注後にも出来るのかな。


「山の探索の依頼は続行してくれ。森の探索は落ち着き次第探索者協会に依頼を出す。聖遺物はもとより教会からの依頼だからそのままのはずじゃ。報酬は一時的に王家から支払う。

 それなら良いじゃろう?」


「ええ、結構です。

 ああ、確認してませんでしたが、ドラゴンを討伐した場合、報酬はありますか?」


「、、、考えておこう」


「はい、では行ってまいります」






「ジン様、森の探索があると言ってませんでしたか?」


「ああ、あれは無くなった。宰相が不正をしていたせいで予算の執行に制限がかかってるんだとさ」


「はあ?たかが宰相一人の不正で国全体の予算が滞るのですか?」


「メアリーそう言ってやるな。この国は他に競争する国がないために何事も緩いんだ。判断も甘い。

 なんでも最近は魔物がテリトリーから出てくるのがいるそうだから、なんらかの決断は強いられるだろうけど、今まではこれでやっていけたんだろうしな」


「はあ、これもお父様に知らせないといけませんわね。まさか不正一つでお金が使えなくなるなんて。そもそも宰相が不正をしてるって事自体がおかしいんですわ」


 まあそうなだけどね。平和が長いと腐敗するんだよね。戦争がない状態で1000年だ。腐敗どころか国が滅びててもおかしくない年月だよね。


「まあ俺たちがするのは、山周辺の旅行だ。こっちは期限も区切られてないし、のんびり行こう」


「今度は遊具をたくさん持っていきましょう。いくらなんでも暇すぎますわ」


「ああ、今日はその辺買いに行っていいぞ。何ならこの間の五目並べ用の遊具でも作ってもらうか?毎回紙に書くのは面倒だろう?」


「え、あれって紙に書いて遊ぶ物じゃないんですか?」


「いや、本来は罫線が引かれた板に、黒と白の石を置いていくのが正式な作法だ。馬車の中でも遊べるように工夫が必要だが、作ろうと思えば作れるぞ?」


「それはいいですわ!あれは奥が深いですから。何度やっても飽きませんわ」


「分かった。じゃあ、明日の出発も伸ばす事にしよう。腕のいい職人は、、、いや、自分で作るか。説明するのが面倒だ」


「え、ジン様は木工もされるんですの?」


「ああ、簡単なやつならな」


 実は俺は木工のスキルは持ってない。鍛冶や彫金はあるんだが。

 だけど、五目並べの板くらいは日曜大工の範疇だろう。多少出来が悪くても仲間内で遊ぶ分には問題ないだろうしな。スキルが取れればめっけもんだ。




、、、取れませんでした。。。


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