309 報告
「なんとゴブリンエンペラーとな?それは真か?」
「ええ、ゴブリンが大量にいて、その後ろから出てきたのがゴブリンエンペラーでした。正直ゴブリンの数にしては上級すぎる魔物な上に、途中のジェネラルなどがいないのが不審な点ですが。
ああ、森に入ったのではなく、向こうが森から出てきました」
「ゴブリンが森から出たというのも問題じゃが、ゴブリンエンペラーとはな。ワシもこの大陸に来る前の先祖が戦ったという書物を読んだ事がある程度じゃが。今の我が国の戦力では到底勝てん相手じゃな。早々に討伐してくれた事礼をいうぞ。
何か証明できるものはあるか?」
「それでしたら死体を持ち帰ってますのでお引き渡しできます」
「うむ。確認出来次第褒章を出そう」
「陛下」
「うん?」
「書物でしか確認したことのない魔物をどうやって確認するんですか?確か高レベルな鑑定士はいなかったと思うのですが?」
「うむ。まあそうじゃが、種族くらいは分かるじゃろうて。分からんでもゴブリンより強力な事がわかればなんとでもなる」
そんなもんかね。
「では私はドラゴン探索に戻ります」
「まあ待て」
「何か?」
「そのゴブリンエンペラーの出た森の調査も引き受けてはくれんか?」
「それは構いませんが、ドラゴンと聖遺物、森とどれを優先しますか?」
「森じゃ。ドラゴンはいてもいなくても、我々にはどうしようもないからの。むしろ王都の近くの森からゴブリンが出てきたことの方が問題じゃ。先日のスタンピードの件もある。最近の魔物の動向には不穏なものが多い。
実は他にも街道で魔物に襲われたなどの被害が報告されておる。件数は少ないが、今までほとんどなかったことから考えると異常じゃ」
他の場所でも魔物がテリトリーから出てきてるのか。ドラゴンといいエンペラーといい何が起こってるのやら。
「それで、森で何を調査すれば良いのでしょうか?いくらなんでも森全てをくまなく探索するのは現実的ではありませんし、何かガイドラインを示してください」
「そうじゃのう。巫女殿の魔法で何か出来ぬかのう?」
「探索は可能ですが、私の知っている魔物に限ります。なので、この大陸の魔物と同じか確証がない以上、全域の探索は難しいかと思います」
「巫女殿の知っておる魔物なら森をくまなく探査できるのか?」
「時間はかかるでしょうが、可能です。ただ、その時間は月単位で必要になりますが」
「うーむ、他の異常も考えるとそれほど時間をかけるのもどうかと思うしの。わかった。中心部分あたりを探索して強力な魔物がいないかだけ確認してくれ。
北の山に行く途中で森を横断するば時間も短縮できるじゃろう」
「陛下、分かってて言ってますよね?森の中を馬車が走れないことくらい分かってますよね?歩いて行ったら森の探索するよりも山に行くのにかかる時間の方がもったいないです。
森を探索する間、馬車を守るのに必要な兵士を貸してください。森の探索が終わったら結果の報告はその騎士から聞けば時間も短縮できるでしょう。
それと報酬はどうしますか?」
「ふむ。騎士は準備させよう。出発を明後日に延ばしてくれるか?
それと報酬じゃが、見つけた場合に、、、」
「陛下。森の探索は成功報酬制では受けれません」
「なぜじゃ?山のドラゴン探索は引き受けてくれたじゃろう?」
「あれは私の希望に合致したからです。一方的な依頼なら成功報酬制は受けません。これは冒険者なら当たり前のことです。
発見できなかった場合の費用削減を目指すのは良いですが、それと私が依頼を受けるのは別問題です。
成功報酬にするなら発見した場合の討伐です」
当然だな。山の方はドラゴン見たさと、旅行がしたかったので、ついでに依頼料がもらえるなら、という程度で受けたが、ただ時間を浪費する探索に成功報酬なんてやってたら、いくら働いても金にならない。
「むう、しかしのう」
「では、森の方は誰か他の者に頼んでください。
まあ他にゴブリンエンペラーがいないと良いですね」
「まあ待て。お主の希望はわかった。じゃが他の探索者で遂行可能かを確認してからにしたい。1日時間をもらえんか?」
「ええ、どうせ騎士を待たないといけませんから1日くらいは待てます」
「なら報酬の話はその時で頼む」
「承知しました」
多分探索者じゃ実力が足りないだろうけどね。ただ探索だけだと割り切ったら受ける可能性あるだろうな。ゴブリンエンペラーがたまたま発生した異常だと考えれば、あの森にはゴブリンしかいなかった事になるし。ゴブリンならさすがに探索者でも勝てるだろうしね。
「それでどうなったのですか?出発の準備は出来てますが?」
「ああ、出発は明後日に延期だ。ゴブリンの出てきた森の調査を受ける可能性がある。その場合騎士を派遣してもらうから明日は休みだ」
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