288 閑話 デート(2)
「ここがおすすめのお店です!先日の月間ポッターに紹介された流行のドレスを売っている店です。ここならクレアさんに合うドレスが見つかるはずです」
月間ポッターですか。話からするとファッション系の雑誌でしょうか。この大陸の常識には詳しくないですが、そんなのも出版されてるのですね。もしかしらたら人族の大陸よりそういう面では進んでるのかもしれませんね。
「すいません、この人に合うドレスを選んでもらえますか?」
「はい、いらっしゃいませー。お美しい方ですね。わかりました。腕によりをかけて選ばせてもらいます!」
店員さんに選ぶのを任せるのは初心者としては正しいのですが、予算を言わないのは減点ですね。私にいいところを見せたいのでしょうけど、金銭管理の出来ない人とは結婚できませんよ?
「このドレスなどはいかがでしょうか?今流行のレースの刺繍がされていますので、上に淡い色のカーディガンと合わせると良いかと思います」
「カーディガンも見せてもらえますか?」
「もちろんです、こちらの黄色のはいかがでしょうか」
「素敵ですわね。首元が寂しい気がしますが」
「それならこの首飾りはどうでしょうか?シンプルなチェーンですが、ピンポイントに宝石が埋め込まれていますので、お似合いになるかと思います」
「袖がないので手元も寂しいですね」
「腕輪などいかがでしょうか。こちらは金で作られておりまして、ドレスの色とも合うかと思います」
「パーティーに出るのにあと何がいるでしょうか?」
「ハンドバッグでしょうか。こちらの白に金のあしらいの物がドレスに合うかと思います。本当は同じ白でもこちらの方がおすすめですが、こちらは少々お値段が高くなりまして」
「あら素敵だわ。マルフォイさん、どうでしょうか?」
マルフォイさんは私のドレス姿を見て呆けています。それほど似合ってないのでしょうか。
「天使だ、、、天使が降臨した、、、」
いえ、別の世界に旅立たれているようですね。
「マルフォイさん、このドレスが気に入ったのですが、買っていただけますか?」
ちょっと胸を強調してみます。私の胸はそれほど大きくはありませんが、今のマルフォイさんには効果的でしょう。
「は!も、もちろんです!このドレスをください!」
「アクセサリーもいいかしら?」
「もちろんです!俺に任せてください!」
さっき聞いたのですが、このドレス、ドレスだけで金貨1枚するそうです。アクセサリーも合わせたら金貨3枚だとか。
マルフォイさんは金額も聞かずに買ってしまったも良かったのでしょうか。こんなに簡単に散財させられるとは思ってなかったのですが。
「では店員さん、このまま出かけたいので着ていた服は預かっていてもらえますか?明日にでも取りに来ますので」
「承知しました。お支払いはマルフォイ様の商会宛でよろしいですか?」
「ええ!アドモンド商会のマルフォイまでお願いします!
さあ、クレアさん、せっかくドレスを着たんですから馬車で移動しましょう。実はレストランを予約しています。2階の見晴らしのいい部屋ですので食事を楽しめるかと思います」
そう言って手を取ろうとしてきますが、気づかないふりをしてさっさと店を出ます。後ろでは空の手を見てションボリしたマルフォイさんがいますが、知ったことではありません。ドレスの実物を手に入れた以上、この店に用はありません。
「クレアさん、今日はコース料理を頼んでありますので楽しんでください」
「あの、私は奴隷ですのでマナーとかを知らないんですけど、、、」
「わかってます。そのための個室ですから。マナーなどは気にせず自由に楽しんでください」
それを聞いて安心しました。傭兵時代にはレストランなんて用がなかったですからね。最近はジン様の付き添いで良い物を食べさせてもらっていますが、本来なら残り物を食べれればいい方です。
「食前酒はいかがしましょうか?」
店員さんがオーダーを取りにきました。
「一番美味しいものを」
「かしこまりました」
マルフォイさんは見栄を張っているようですね。お酒なんて一杯で金貨とかかかるものも珍しくないのに一番美味しいものだなんて。それとも事前に指定してあるのでしょうか?
「ここのレストランは月間ポッターで紹介されていた店で、美味しいワインを出すので有名なんです。貴族の方もお忍びで来られるとか。この部屋はそのための部屋だと聞いています」
月間ポッターはファッション系だと思ったのですが、グルメもあるようです。
「ご馳走様です」
「食事は楽しんでいただけましたか?」
「ええ、満足ですわ。特にワインが美味しかったですわ。もういっぱいいただいても良いかしら?」
「もちろんです。もう一本頼みましょう。さあ、どうぞ飲んでください」
食事の最中から思ってましたが、やたらとお酒を勧めてきますね。これは酔いつぶそうとしているのでしょうか。私はこう見えて結構お酒には強いですよ。
うん、高いワインなんでしょうね。ワインの値段はわかりませんが、これだけ飲みやすいワインです。結構高いんじゃないでしょうか。ツケにするんでしょうけど、後で払いが大変ですよ。
「クレアさん!その、隣の宿に部屋が取ってあるのですが。。。」
なるほど、そういうつもりでしたか。最初のデートで物にしようなんてせっかちですね。私はジン様に処女を捧げる覚悟で奴隷になったのです。他の方にはあげませんよ?
「ごめんなさい。今日は帰らないといけませんの。他の方にもマルフォイさんの素晴らしさを聞かせてあげたいですわ」
「そ、そうですか。いえ、それは明日でもいいのは?!せっかくいいワインを飲んでいい気分なんです。ぜひ泊まっていきましょう」
だんだん露骨になりますね。
これは非常手段を使った方がいいでしょうか。
「わかりました。ではちょっと化粧直しに行ってきますね」
「おお、分かってもらえましたか!ええ、化粧直しですね。行ってらっしゃい」
喜んでますね。そんなに女に飢えてるんでしょうか。
私は部屋を出てトイレに、向かわずに出口に向かいます。
「お帰りでしょうか?」
「ええ、狼さんに襲われそうなので大人しく家に帰りますわ」
「そうですか。本日はありがとうございました」
そう言って店員さんが送り出してくれました。あとは店員さんがうまくやってくれるでしょう。
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