282 病因


 そのまま徹夜で看病したが、リリアが起きたのは翌朝だった。


「あれ、皆さんどうされたんですか?」


 リリアが起きて最初のセリフだ。


「リリア、熱はどうだ?吐き気は?頭痛は?他に痛いところはないか?」


 俺がマシンガンのように問いかけると、リリアは驚いたような顔をして不思議そうに笑う。


「えっと、お腹は痛いですが、熱は、、、そういえばちょっとボーッとしますね。あるかもしれません」


「クレア、水を寄越せ、氷を入れてもっと冷やすんだ」


「はい!ついでに水を取り替えてきます!」


「急げ!それとマリア、医者だ!腹痛に効く薬を持って来させろ!」


「はい!熱さましも依頼します!」


 俺たちは急に動き出し、バタバタしていた。


「リリア、昨日はだるいと言ってましたけど、どう怠かったのですか?」


「メアリー、それはその、ちょっと耳を貸してください」


 何か言いにくいことでもあるのか、メアリーを近くに呼んで耳元で話し巣ようだ。


「実は、、、生理が、、、不順で、、、」


「まあ、そうだったの。なら寝てれば治りますね。心配したんですよ。皆にも謝らないと」


 俺にはリリアの声が聞こえなかったので、何が安心なのか分からない。


「どう言うことだ?」


「ジン様、心配ありませんわ。寝てれば治ります。医者には痛み止めをもらうだけで良いでしょうね。リリア、何か食べやすいものをもらってきますね。ジン様はついていてあげてくださいな」


「ああ」


 何が起こっているのかは分からないが、看病するのは問題ない。


「ジン様、水を替えてきました」


 クレアが戻ってきたが、リリアは頭を冷やすよりも体を拭きたいらしい。まあ汗かいただろうからな。でも熱が高い時って体を拭いたら余計に熱上がらないか?


「ジン様、大丈夫ですわ。体を拭きますので、ちょっと部屋を出ていてもらえますか?クレアは手伝ってちょうだいね」


 リリアは自分の病気が何か分かっているようだが、何も分からない俺には心配だけが募る。


「リリア、病気は、、、」


「それは、、、」


 部屋の外にでた俺には分からないが、クレアには話しても問題ないと言うことだろう。





「ジン様でしょうか?」


「うん?そうだけど?」


「宮廷魔術師長のアヴァロン様が調査に進展があったのでお越しいただきたいとの事です」


「後だ」


「はい?」


「後にしてくれ。今は立て込んでいる。問題が片付いたら王宮に出向くから、今すぐには行けないと伝えてくれ」


「あの、でも、宮廷魔術師長の召喚ですよ?陛下に謁見する権限のあるお方ですよ?すぐに行かないのですか?」


「もっと大事な用事だ。それでも用があるならこっちに来るように伝えてくれ」


「はあ。お伝えしますが、、、本当によろしいのですね?」


「問題ない」


 アヴァロンさんの用事とは多分剣のあった周りのアイテムの魔力の件だろう。そんな事は後で充分だ。リリアの病気の方が優先だ。呼んだのに来ないと怒るようならそれまでだ。獣人とは縁がなかっと言う事だろう。



「ジン様、お医者様です」


 マリアが医者を連れてきた。


「熱は下がりましたかな?ふむ、少しは落ち着かれたようですな。どれ、、、まだ熱があるようですので熱さましを出しておきましょうか。

 え?なんですと?。。。なるほど。そう言う事もあるかもしれませんな。獣人にはあまりいないので詳しくはありませんが、症例としては聞いたことがあります。

 なるほどなるほど。勉強になりますな」


 どうやら医者には話せるような内容らしい。なぜ俺には話せん?


「あなたがご主人ですかな?奥様を大切にしてあげてください」


 そう言って医者は帰っていった。

 なんだ?俺だけが除け者じゃないか。




 俺は宿屋の食堂で一人水を飲んで時間を潰していた。

 病気の原因を女性陣で共有するとか。なぜ女性陣だけが病気の事を聞けるのかは分からないが、俺がいると邪魔らしい。


 俺はイライラしながら待っていると、朝きた役人がまた来た。


「ジン様、宮廷魔術師長様からの伝言でございます。いつでも構わないので時間ができたら来て欲しいと」


「ああ、分かった」


 どうやらアヴァロンさんはちゃんと物事の順番がわかる人らしい。これで強制的にでも連れてこいとか言われていたなら王都ごと滅ぼしてやるところだ。



「ジン様、ご心配をおかけしました。もう大丈夫ですのでお仕事に戻ってくださって結構ですよ」


 なんだ?結局俺には原因を話してくれないのか?


「女性特有の病気?です。もう大丈夫ですよ。今日寝てれば熱も下がるでしょう」


 なんか知らんが、もう心配はいらないらしい。


「そうですよ。ジン様が横にいては治るものも治りませんわ」


 メアリー、俺が治療の邪魔になるような事は言わないでほしい。これでもリリアを心配してるんだ。


「ジン様、リリアは大丈夫です。お医者様もおっしゃられてたでしょう?」


 マリア、事情がわかってるなら安心できるかもしれないけど、何も話してもらえない俺は逆に安心できないんだが。


「リリアの事は任せてください。お腹の痛みもマッサージで治ると思いますし」


 クレア、マッサージなら俺が、、、ダメですか。そうですか。俺リリアの夫だよね?退けものにされてるんだけど?



 女性陣全員に言われてはどうしようもない。大人しく王宮で仕事をする事にした。

 治療にお金がかかるとか言われた時になんとかなるように稼いでおかないとね。俺が出来る事はそれくらいだ。




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