283 粉々の魔石
「それでは周囲に魔力のこもった物はあったけれども魔力を保持したまま、と言う事ですね?」
「はい。近くにあった宝物は全て確認いたしました。
そもそも魔力のこもった物が少なかった事もあり、調査は容易でした。あ、ただ、隣の部屋に収められていた魔石がいくつか紛失していたそうです」
だめじゃん。原因それだよ。
「絨毯の上には粉のような物は落ちてなかったですか?」
「粉のような物ですか?あった気もしますが、何か関係が?」
「えっと本当にご存知ない?」
「ええ、絨毯の上に魔石でも落ちてたら流石にわかりますが、粉ですよ?」
「はあ、魔石は魔力を使い切ると、粉上にまで粉々になります。なので、絨毯の上に粉が落ちていたと言うならそれは魔石の破片です」
「はい?魔石を使用すると白くなると言うのは常識ですが、粉になるんですか?」
「ええ、通常魔石の魔力を使い切ると言うのは人間の感覚で捉えれる範囲での使い切る、です。実際には白い魔石には魔力が残っています。
魔石の形すら保てない、つまり粉々になった状態を本当に使い切ったと言うのです」
「ええ!それは新発見です!詳しく教えてください!」
「いや、今言ったことが全てですよ。人間が魔石を使う時には完全に使い切ることは出来ません。そこまで精密な魔力の操作が出来ないからです。ですが、今回のように魔法陣を使う場合は事情が異なります。
魔法陣は指定された物から指定されただけの魔力を取り出します。魔石の魔力容量よりも少なく指定されていれば魔石は形を残しますし、足りなければ魔法は発動しません。
今回のように魔法が発動してさらに粉々になると言うのは、完全に魔石の魔力容量を把握して魔法陣を使ったと言うことです。
私も魔石の魔力容量の計測方法は知りませんが、何らかの方法で判別したんでしょうね。魔法陣の使い方自体にも不明な点がある事を考えると、恐ろしい技術力だと言わざるを得ません」
「おぉ!巫女殿!それは学会に発表しても構いませんか?!」
「はあ、どうぞ。人族の研究者であれば知っている内容ですので、今後の人族との付き合いによってはその辺はもっと詳しく知れるんじゃないでしょうか」
「うむうむ。これは研究のしがいがある!」
「アヴァロンさん、今は転移の魔法陣の話だったと思うのですが?」
「おぉ、申し訳ありません。あまりの大発見に興奮してしまいました。今まで捨てていた白い魔石にまだ魔力が残っているのならまだ使い道があるかもしれません!」
「いや、だから問題は魔法陣でしょう?魔石の研究は後でやってください」
「そうでした。申し訳ありません。えっと、つまり魔石の魔力で魔法陣が起動されて剣が転移させられた、と言う事でよろしいでしょうか?」
「状況証拠的にそう言わざるを得ませんね。どうやって起動したのかは知りませんが、何時間後とか指定して発動したのかもしれませんね。遅延発動の魔法なんて聞いたことがありませんが」
「ふむ、それは要研究ですな。ああ、こうしてはいられません。陛下にご報告しなければ。巫女殿も一緒に来ていただけますかな?」
「もちろんです」
ちゃんと報酬もらわないといけないしね。ん?犯人逮捕が依頼達成だったよな。方法の特定は達成になるのかな?
「ふむ、つまり犯人は宝物庫に入る必要はあったが、なくなった瞬間にはその場にいなくても良かったと言う訳じゃな?」
「はい。どのくらいの期間発動を待機させれるのかは知りませんが、その認識で間違いありません」
「では犯人は過去に宝物庫に入った人間という事じゃな。誰か!宝物庫への入庫記録を追ってこい!」
「陛下、これはそう簡単な話ではありません。
今回は魔法陣を使用した上で、遅延発動を使ったものと思われます。その発動条件はおそらく一定時間の経過でしょう。つまり、魔法を使える人間でなくても魔石と絨毯を剣の下に敷くことが出来れば準備できるという事です。
それに指定の期間が分かりませんので、下手すると10年100年の可能性まで考えないといけません」
「むう。それほど遠大な計画という訳か?」
「そこまでは分かりません。
ティーゲルさんでしたか?その方が魔法使いを招き入れてその場で魔法陣を起動させた可能性も残ってますので」
「そうか。ならば犯人は事実上見つけることは出来んか。ならばやはりティーゲルに責任を取らせるしかあるまい。巫女殿、よくやってくれた。再発防止のために何か考えさせよう。
報酬は、、、いくらじゃったかな?」
「明確には決めておりません。フェリス様の依頼である犯人逮捕の依頼はフェリス様のお小遣いから払われると聞いていますが、今回のように中途半端な情報が判明した場合の報酬は決めておりませんでした」
「そうであったな。ならば金貨20枚を取らせよう。今後の研究で何か新発見に繋がったら追加での報酬も検討するとしよう」
「ありがとうございます」
冒険者として報酬を決めてなかったのは不覚だったね。下手すればただ働きだったし、金貨20枚でももらえただけ良しとしよう。
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