281 風土病?
「リリア無事か?!」
俺はメイドさん経由でフェリス様に連絡を取り、王宮を出してもらった。やはり許可なしでは夜に王宮を出るのは無理だったようだ。まあ、最悪強行突破するが。
宿の部屋に入ると、メアリーがソファーで椅子に座って寝ており、マリアがベッドの横でタオルを濡らしている。
良かった。まだ生きてる。
「容体は?」
「はい、落ち着いています。ですが、熱さましの薬が聞いてないようでして。今も熱が下がらないのでタオルで冷やしてるんですが」
俺はベッドの横に立ち、リリアのおでこを触る。熱い。7度とかの風邪じゃないな。下手すると9度とかあるぞ?
とりあえず原因がわからないのでは話にならない。
「クレア、何があったのか分かるか?」
「いえ、昼食までは問題なかったのですが、食後のお茶をしているときにだるいと言われて寝てしまわれまして。
メアリーが心配だからと見に行ったら熱を出して寝込んでいたんです。それからはお医者様を呼んだりしていたんですが、処方された熱さましを飲ませても熱が下がらなかって。
教会にも行って、回復魔法をかけてもらったのですが、それも効果がなく、仕方なくこうしてタオルを変えるだけの処置をしています」
「回復魔法は効果がなかったんだな?」
「はい。神官様も回復魔法が効かないなら医者の領分だと言われまして。
その医者によると、人族の病気を見るのは初めてなので確証はないが、風邪か風土病かじゃないかと。体を冷やした感じもなかったので、風土病の方が疑わしいのですが、この半年以上この大陸でいても問題なかったのでそれも変だなと。
それに風土病だと私たちがかかってないのもおかしな話です。
昼食は私たち全員が同じものを食べましたので、食あたりという事もないと思いますし。
とにかく、原因不明の高熱です。このまま続いたら命も危ないので、忙しいとは思いましたが、メアリーがジン様にお手紙を書きました」
なるほど。やはり原因不明か。
「リリアは何か言ってなかったか?」
「だるいと言って寝るまでは普通でした。また、寝てからはまだ一度も起きてないので本人からは何も聞けてません」
むう。本人がだるい以外の自覚症状がないのか、それとも他にも頭痛や吐き気などがあるかとかいろいろあるのか聞けないのは痛いな。
「とりあえず回復魔法をかけるぞ。神官がかけて治らなかったようだから、高位の回復魔法をかけてみよう」
「お、お待ちください。神官様が言うには、低位の回復魔法ならともかく、高位の回復魔法は逆に病気を悪化させる場合があるとか。原因がわかるまでは控えた方が良いと。。。」
むう、それもそうか。
回復魔法は体の回復力を高める効果を持つが、病気の一部には逆に病原菌の力を高めてしまうものもある。
癌などがその代表例だ。癌は細胞の一部が異常になったもののことを言うが、細胞には違いないので、一緒に元気になるのだ。病原菌に負けている患者の病原菌がより力を持ったらどうなるかは誰にでもわかることだ。
毒消しの魔法は?中毒ならそれで治るはず。これなら病原菌を強くする事はないはず。とりあえず試してみよう。
。。。
毒消しってどんな魔法だ?
毒を中和するんだよな?毒ってのは体に害があるもので、実態はなんだ?
毒は回復魔法では治らない。でも解毒魔法では治る。つまり通常の細胞を強化してもダメだと言う事だ。
では何に働きかければいい?
魔法はイメージが大事だ。イメージを強く持てば強く持つほど、自分の思った通りの魔法が発動する。もちろん魔力の強さにも関係するから絶対にイメージ通りに発動するとは限らないのだが、イメージが脆弱ではろくに発動しないのは確実だ。
回復魔法で体力を回復させて毒に対する抵抗力を上げる?でも回復魔法では効果がなかったと言った。では菌を根絶する?いや、体には良い菌もたくさんあるから、やるならどれか指定してやらないと逆に問題がある。
むう、医学も学んどくべきだったか?
出来ないことを言っても仕方がないな。俺は工学部であって医学部ではなかったのだから。
なら強制的に体温を下げる?いや、これも問題だ。人間の体は恒温動物なので、1度の違いで死んでしまう事もある。火魔法か水魔法でなら下げれるかもしれないが、どのくらい魔力をつぎ込んだらいい?何秒保持すれば適温になる?
こう言う事は経験がものを言うので、俺の魔力強度や魔力量は全く関係ない。
いや、待てよ。風邪か風土病だと医者が言ってたと言ったな。それぞれ考えてみよう。
風邪なら栄養のあるものを摂って寝てれば大体治る。風邪も回復魔法では治らない病気の一種だからな。頭さえ守れば問題ないはずだ。
風土病だと?どんな風土病があるのだろうか?
「クレア、医者は風土病にはどんなのがあるか言ってなかったか?」
「いえ、風土病の可能性があるとしか。風土病にもいろいろある上に、原住民はかからないそうですので、あまり症例がないそうです。共通しているのは高熱が出ることだけだとか」
どちらもお手上げか。
ならこのまま見守るしかないのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます