270 獣人大陸のお金
「ジン様、お金がありません」
リリアが言ってきた。
「ジン様がいない間の半年の間、お預かりしていたお金でやりくりしていましたが、底をつきました。ジン様に補填していただければと思うのですが」
ああ、そういう事か。そういえばそんなに渡してなかったな。よく半年も保ったものだ。
「ああ、すまなかったな。心細かっただろう。これでなんとかしてくれ」
金貨を10枚渡すとリリアがほっとした表情になる。よほどお金に困ってたんだな。うん、お金の話は完全に俺が悪い。非常用のお金も多少は預けてあるとはいえ、半年も無収入で過ごせるかというと疑問だ。
「どこかで借金とかはしてないのか?渡したお金だけではやっていけなかっただろう?」
「ええ、貴族の方と商人にいくらかお借りしています。セルジュ様が獣人国の身分証明書を発行してもらっていたので、なんとか借りる事ができました。セルジュ様個人の借金となってしまいましたが」
これはセルジュ様には頭が上がらないな。使節団経由での俺の捜索といい、そのための資金捻出といい、リリアたちの生活費といい、世話になりまくってる。
借金に関しては出来るだけ早急に返却したいものだ。この世界の借金の利子は上限が決まっていないので、10日に1割どころか1日1割でも許されてしまうのだ。
「利子なんかは聞いてるか?」
「セルジュ様がお一人で契約してしまったので、そこまでは聞いていません」
言わないって事はそれなりに不利な条件なんだろうな。利子が膨れ上がる前に返さないと。
ちなみに俺の現在の所持金は金貨30枚ほどだ。もちろん獣人大陸のお金、という前提だが。発情期の件での報酬以外まともに稼いでないからな。
仕方ないな探索者ギルドで何か良い依頼がないか見てみようか。
『幽霊屋敷の調査 解決してくれれば金貨10枚 一晩問題がなかったら最低でも銀貨10枚保証』
まだやってるのか、あの婆さん。なんとか解決したいんだろうけど必死だね。いや、一晩もたないのを前提にすれば大した出費じゃないのか。違約金は探索者から取ってるんだもんな。
『ダンジョン11層での鉱物採取の護衛 銀貨20枚 3名〜』
ふむ、護衛依頼か。悪くはないな。マリアとクレア連れていけば3人になるし。でも制限時間が書かれてないんだよな。鉱物が見つからないからと長く拘束されても困るしな。
『タピオカの採取 実一つにつき銀貨1枚』
タピオカ?あのタピオカか?あれは炭水化物の塊だと聞いた事があるんだが、実?この世界のタピオカはタピオカという名前の植物らしい。ちょっと興味が湧いてきたな。それに一粒銀貨1枚だろう?100個で金貨1枚。美味しいのでは?
「この依頼を受けたいんですが」
「採取依頼ですね。それでしたら受注の必要はありません。素材を納入していただく際にまだ依頼が出ていればそれで決済されますので」
「納入の段階で既に誰かが達成していたら?」
「残念でしたね。次回のご利用をお待ちしております」
なるほど。事前に受注する形にすると、達成できなかった場合に違約金を取らないといけないし、そのパーティに依存してしまう。なんせそのパーティが達成するか失敗するかが判明するまでは他の探索者はその素材を持ち込んでも利益にならないのだから。
「早い者勝ちという事ですか?」
「言葉を選ばなければその通りです。依頼を幅広く把握して一品特化ではなく、複数の素材を集めてくるのがセオリーです。深い階層では特定の素材だけに限定して潜る場合もありますが。
依頼が出てなくても汎用性のある素材でしたらギルドで引き取るものもありますので、その辺りを確保しておいて赤字を回避する事が多いでしょうか。
でもあなたは魔力なしの10級なのですから、そんな事は心配する事ではありません。ゴブリンと戦っているのがお似合いです」
ひどいな。これでも13層まで行ったんだが。
「ギルドの記録にはそんな情報は載っていませんが?何か納品しましたか?」
む、クロードさんから直接依頼を受けたからギルドは通してないな。なら俺が13層まで行った事自体が証明できないのか。真珠の入ってなかった貝とか納品してもダメなんだろうな。
まずはそれなりの階層に潜れるのを証明してから高額依頼を狙った方がいいか?いや、依頼を先に受ける形じゃない以上、別に階層の証明は不要だ。とっとと素材をとりに行った方がいい。
タピオカは候補に入れるとして、他の依頼も見ておこう。
『オークキングの睾丸 1セット金貨20枚 至急』
お、オークキング倒すだけで金貨20枚か。美味しいな。
「オークキングって何層にいるんですか?」
「あなたが行けない位の下層です。10級は10級にあった場所で稼いでください。私はそこまで暇じゃありませんので」
おいおい、10級は仕方ないにせよ、質問には答えようよ。別に10級がオークキング倒しても問題ないだろう?というか、倒したら実績になってランク上がるんじゃないの?
「確かに倒せればランクは上がりますが、死ににいくようなものですよ?ギルドとしても10級とはいえ消耗率は抑えたいのですが」
消耗率いうな。物になった気分になる。数字上の計算しかしないのはよくないですよ。
「はあ、仕方がないですね。オークキングは20層に出ると言われています。トップパーティが準備を整えてようやく勝てる相手です。あなたが勝手に死ぬのは止めれませんが、私の手を煩わせるのはやめてください」
はいはい。この受付嬢、最初に魔力測定した時からなんか俺に厳しいんだよな。魔力がないとそんなに価値がないのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます