263 夢
さて、一応6階で、前回トラップに落ちた部屋まで来たのだが、トラップはなくなっていた。あのリッチが取り外したのだろう。
他には道がないと言ってたので大丈夫だとは思うが、壁に背中を預ける時はつい触って確認してしまう。
「マリア、大丈夫か?」
今、マリアはゼェゼェいいながら座り込んでいた。
ちょっと急ぎすぎたかもしれない。
期限がある上に、確実性のない採取依頼なので、道程を急ぎ、採取の時間を確保しようとしたのだが、マリアの体力の事を忘れていた。
別にマリアが特別体力がないわけではない。だけど、ほとんど小走りで駆け抜け、戦闘は最低限、魔石も肉も皮も放置で走ってきたのだ。まだ魔力操作がうまくないマリアでは、十分に身体強化が出来ず、今の状況になる。
障壁の練習で結構魔力操作がうまくなってるはずなのでいけるかと思ったが、身体強化の魔力操作と障壁の魔力操作は感じが違うらしく、うまく出来ないそうだ。
体の中で魔力を移動させるか、外で移動させるかの違いだけだと思うのだが。
「マリア、今日はここで休むから少し休んでろ」
俺は薪を取り出して火をつける。
地面が硬いので、串などは刺せないが、代わりに横に薪を何本か積み上げ、串を横に並べて焼く。
薪を十分に離しておかないと火が移るので、結構距離をあけたが、串の長さ的にギリギリだった。
あとはスープか何かあればいいんだけど、火の上は串が陣取っているので、鍋をかけれない。
仕方ない。鍋に水を入れて<火魔法>で直接熱する。普通に魔法を使うと簡単に蒸発してしまうので、繊細な調整が必要だ。
野菜をたっぷりと入れた野菜スープだ。味は塩胡椒で整えるだけだが、野菜の旨味が出て美味しくなるだろう。
「申し訳ありません、もう大丈夫です」
マリアが復活してきた。でもまだ怠そうにしている。動けるようになったと言っても疲労は取れてないのだろう。
「大丈夫だ。あと少しで出来るからもう少し休んでろ」
明日も同じようにして移動するのだ、少しでも体力を回復させておいて欲しい。
食事の後、交代で寝るのだが、マリアを先に休ませた。さすがにね?
俺の方に長くなるように時間を調整し、俺も横になる。
頭の下には毛布を丸めたものを入れている。
今までのダンジョンではそんな事しなかったが、枕を見つけた事で枕熱が高まっているのだ。枕が変わると寝れない人だっているのだ。枕は正義だ。
その夜、俺は夢を見た。
細く長い道を延々と歩く。
白い道以外は真っ暗だ。
枝分かれもなく、ひたすら真っ直ぐの道だ。
振り返りたい気持ちが湧き上がってくるが、振り返ると大変な事になりそうな予感がする。
道の途中に石が落ちていた。
白い道の上に真っ黒な石。不自然極まりないが、それを踏まないように気を付けて進む。
また石が落ちている。
だんだんと石が落ちている間隔が短くなってきた。
そしてある時、白い道が黒い石でいっぱいになり、跨いで避けることも出来なくなった。
踏んででも進むか、止まって考えるか、振り返って後ろを確認するか。
もう少しで黒い石でできた道に差し掛かってしまう。考える時間はそれほどない。
振り返るのは嫌だ。止まるのは負けた気がする。進むのは危険な気がする。道を外れたら何が起こるか分からない。
決断の瞬間。。。。。。
はっと目覚めた。
何か夢を見ていたようだが、覚えてない。ただ寝汗をかいていたようで、布で体を拭う。
マリアは火の前でうとうとしていた。
マリア、見張りは大事だよ?
交代の時間ではないよだが、マリアが眠いのは間違い無いので交代する事にした。起きて寝直せるのは平和な世界で生きている人だけだ。
「マリア、起きろ!見張りが寝ててどうする!?」
「あ、ジン様申し訳ありません。変な夢を見てしまいました」
「夢?」
「はい。ジン様がどこか遠くに行ってしまう夢です」
「それは夢だな。何度か行方不明にはなったがちゃんと帰ってきたぞ?それともいなくなるんじゃなくて死んでしまう夢か?」
「そんな夢は見ません!ジン様は死にません!」
いや、私失敗しないですから、みたいに言われても。俺だって死ぬときは死ぬよ?多分。
それにしてもマリアも夢か。
サッキュパスとかいないだろうな?あれはエッチな夢を見せるんだっけ。
マリアには神託のスキルはなかったはずだし、当然俺にもない。なら偶然か。
俺は一本道に障害がある夢、マリアは俺がどこかに行く夢。うん、全く関係ないな。
「マリア、あとは俺が見張るから寝てていいぞ。疲れてるだろう?」
「申し訳ありません。最近よく寝れなくて」
「そういう時もあるさ。ゆっくり寝ろ」
依頼の最中だからダンジョンを出る訳にもいかないが、少し長く休憩をとるくらいなら構わないだろう。
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