262 真珠
はあ、いったん枕は諦めるか。
ダンジョンの硬い地面に枕があるとぐっすり寝れると思うんだが。
いや、ぐっすり寝たらダメなのか?一応魔物の巣だからな。
人間大陸では当たり前に宿屋にあったから、流石に持ち歩いてなかった。
「なら他のを買いに行くぞ」
枕がダメでもあれならいけるだろう。
俺たちは武器屋に来ていた。
「親父、あれをくれ」
武器屋の親父に欲しいものを指す。
どうでもいい事だが、なぜ店番を親父ばかりやってるんだ?看板娘とまでは言わないが、おばちゃんでもいいだろう?
「ああ、あれか。弟子が作ったもんだが、それでも良いか?」
「ああ、長いのと短いのの2つくれ」
「縁がうねってるのと真っ直ぐなのが有るが、どっちがいい?」
「うねってる方だな。どの位の重さまで持てる?」
「肉一塊りがやっとだな。それ以上は曲がっちまう」
なら十分だな。貝とるだけだし。
「それにしてもあんな長い『トング』、何に使うんだ?小さいのなら料理に使うんだろうが。。。」
そう、俺が買おうとしているのはトングだ。
焼肉なんかでひっくり返すのによく使うやつだ。わかりにくかったら、ゴミ拾い用のやつでもいい。
「ああ、ダンジョンで真珠貝を採る事になってな。これなら水面からでも採れるだろう?」
「真珠貝?昔真珠が取れたって噂になったことがあったが、狙ってるのか?」
「欲しいって依頼があってな。どの位深いのか知らないけど、あったら便利だろう?」
「まあ確かに。だけど、採れなかったからって返品は受け付けねえぞ?」
「もちろんだ」
弟子の作ったものという事で、2本で大銅貨7枚に負けてくれた。
カチカチさせて先っちょがちゃんと掴めるか確認すると少しずれていたが、まあ髪の毛摘むんじゃないし大丈夫だろう。
「ジン様、よくわからないのですが、それが貝を採取するのに役に立つのですか?」
「ああ。貝ってのはな、結構ゴツゴツしててな。皮の手袋をしてても切り裂かれる時も有るんだ。だから出来るだけ手で持たない方がいいんだ。
これで掴んで地上に出して、中を確認する。それが安全に採取するコツだ」
「なるほど。でもそれなら、普通の革手袋じゃなくて、魔獣の皮を使った手袋でも良かったのでは?」
「ここが人間大陸ならそれでもいいが、この大陸では強力な魔獣の皮が滅多に出回らないから、手袋なんかにはしないそうだ。
オーガの分厚い皮では手袋なんか出来ないし、手袋が作れるほど薄くて丈夫な皮は強力な魔物からしか取れないからな。
魔の森でならそれくらいの魔物はいるだろうが、この大陸では魔物を探すの自体が難しい。
もっと階層を降りたらいるのかもしれないが、、、今回には間に合わないからな。もっと降りて皮が手に入ったら作ってもらおうか」
ゴブリンやオークの皮は脂が多すぎて革細工には使えない。
オーガ辺りになると防寒具として使われるが、分厚く、重い。
毛のあるタイプの魔獣の皮は手袋には合わないし、水棲の魔物の皮は硬くて使いづらい。薄くて頑丈な皮というのは結構条件が厳しいのだ。
「よし、これで今回の攻略に必要なものはいいな。じゃあ、街の外に出るぞ」
「え、もうする事ないのでは?」
「ああ、買い物は終わりだ。ちょっと魔法の練習だ」
「はあ」
マリアは俺がなんで今さら魔法の練習をするのか分かってないが、俺からしたら当然の行為だ。
なんせ、飲み水を出す以外に水系の魔法を使った覚えがない。
今回は湖での戦闘が予想されるので、水系以外の魔法は使いづらい。水上でならどの系統でもいいが、水の中では他の系統は全くと言っていいほど役に立たない。よほど魔力を注ぎ込めば別だが。。。水の中で火を燃やしてもね?
俺は街の外で<水魔法>を試していた。
基本のウォーターカッター?とかだ。そんな名前の魔法があるのかは知らないが、イメージしやすい方がいいだろう。
それと<風魔法>の障壁だ。結界と言って方がいいかもしれない。
普段は攻撃を防ぐのに使うが、今回は自分を覆うように囲んで空気を保持するのに使う。水中で呼吸が出来ないと戦闘時間が数十秒を超えたら窒息して死んでしまう。
一応周囲に障壁を張り、<水魔法>で水を浴びても水は入り込まなかったが、水に潜ってもちゃんと機能するかはやってみないとわからないな。
さて、魔法の練習も終わったし、宿に戻って休むか。
「マリア、起きろ。宿に戻るぞ」
俺が魔法の練習をしている間に暇だったのか、うとうとしてたのだ。目に隈作ってたし、仕方がないだろう。
「も、申し訳ありません!」
マリアが地面につくほどに頭を下げてくるが、人が魔法の練習をしてるのをみてるだけなんてつまらないだろうし、仕方ない。
「もういいから、さあ行くぞ」
宿に戻ったら、リリアに自分用の真珠も頼まれた。。。100個に一つの確率だよ?それも魔物対策しながら。今度にしない?
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