259 休暇
「マリア、お前はいいのか?」
一応マリアもついてきているが、リリアが張り切っているので、一歩引いてついてきている。
「ええ、私は大丈夫です」
あまり大丈夫そうに見えないから聞いてるんだが。
「疲れてないか?」
「ちょっと寝不足なだけです。大丈夫です」
「帰って寝ててもいいんだぞ?」
「いえ、私はジン様の奴隷です。お役に立って見せます!」
どうやら俺を見失ったのがトラウマになっているようで、俺から目を離そうとしない。昨夜も遅くまで俺の部屋の前をうろうろしていたらしい。
せめて美味しいものでも食べさせてやろう。
「ジン様、マリアったら、毎日ダンジョンの入り口に入り浸ってたんですのよ。入り口の兵士さんに頼んで、出てきたら知らせてもらえるようにしていたのに」
「だってリリア、ジン様がいなくなったんですよ?前の時と違って、危険なダンジョンの中でいなくなったんです。それも何日も戻ってこなかったし。ダンジョンの中でお待ちできない以上、せめて入り口でお待ちするのは当然です!」
リリアとマリアが俺がいなかった時の状況を教えてくれる。
二人とも各方面に働きかけて救助隊を出してもらおうとしたが、この大陸ではリリアの貴族の身分は通用せず、マリアの交渉では金銭的な問題でうまくいかなかったらしい。
探索者ギルドも毎日のようにある不帰還者にいちいち対応してられないと言う事もあり、救助隊を出すには結構な額を納めないといけなかったらしい。
俺は小遣い程度のお金は渡してあるが、救助隊を組めるほどの金は渡してない。
なので、セルジュ様経由で、さらに使節団という立場のある組織を経由する事でなんとか救助隊を組むことができたとか。
ちなみに探索者ギルドの資格は失っていない。
冒険者ギルドと違って、探索者ギルドは初心者への入場制限はするが、入場制限の他は制限がないので、帰ってこなくても自己責任として放って置かれる。
当然、死んだものも登録されたままになるのだが、これは放置らしい。
「それで半年もの生活費はどうしたんだ?」
「はい、装備を売ったり、国から持ってきた宝石を打ったりして工面しました。この街の貴族にも多少の借金をお願いしましたし」
「借金したのか?ならとっとと借金を返してしまおう。何言われるかわからないからな」
貴族の借金は恐ろしいんだよ。借金を肩に何言われるかわからないからね。
貴族の屋敷に行き、借金を返す旨を伝えたら、金貨20枚を請求された。借金したのは10枚だったらしいが、利子らしい。まあいい。危急のは足元を見られるものだからな。
貴族はあっさりと払った俺に驚いていたが、自分から言い出した金額をさらに吊り上げる事もできずに借用証を返してきた。
よし、これで俺がいない間の精算は終わったな。
今回のは俺が悪いとはいえ、結構金を使ったので、残りが心許ない。探索者ギルドで何か仕事でもないかな?
マリアを連れて探索者ギルドに行き、仕事を探す。探索者ギルドでは冒険者ギルドと違って仕事の斡旋というよりも、ダンジョンの素材を転売する商業組織という面が強い。
なので、掲示板に貼られているのは、素材の依頼ばかりだ。
俺たちはまだ6層までしか行ってないので、その中ではそれほどの依頼はない。この街全体のギルド員はもっと深く潜るのが多いそうで、大体10層まで潜らないと、生活できるほどには儲からないそうだ。
6層でもゴブリンアーチャーなど、面倒な魔物が出てきたんだけど、獣人はそのくらいは自力で避けるらしく、大した敵扱いされていなかった。
命中率は悪いけど、矢は矢だ。当たれば痛い。当たれば、か。はあ、獣人の反射神経舐めてたかも。
とにかく稼ぐには10層まではいかないといけない。
「マリア、クレアがいないけど、とっとと10層までいくぞ。生活費くらい稼げるようにならないと、ジリ貧だ」
「はい!頑張ります!」
頼りにされたのがよほど嬉しかったらしい。
「ジン様と二人きり、、、二人きり、、、」
「うん?何か言ったか?」
「いえ、なんでもありません!」
「そうか、ならいいんだが」
マリアが何か呟いていたが、なんでもないらしい。
「クレアがいない分、俺も戦闘に参加するから安心しろ。ゴブリンと戦うのも飽きてきたからとっとと階段見つけて階層を降りるぞ」
「はい!頑張ります!」
肩に力が入りすぎてる気はするが、まあダンジョンに入ったら落ち着くだろう。
「じゃあ行くか」
「へい。あれとこれと、、、こんなもんでしょうか。使い方はわかりますか?」
「いや、教えてくれ。なんとなく分かるが、違ったら困るしな」
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