255 リッチ
さて、降りてくる階段しか見つかってないので、ここは中央に何かあると考えるのが自然だろう。なかったら泣くよ?
まずは保存食を置いた場所が中央と仮定して部屋の中央くらいの距離を進む。
思った通り、壁があった。四角く囲まれており、部屋になっているようだ。向からして最初に降りてきた階段の正面に扉があるな。
大きさは一辺が10メートル位だろうか。部屋としては大きい方だと思う。
扉に罠は、、、分からないから開けてしまおう。
ガチャッ
ドアノブついてるよ。何気に現代的だな。
中に入ると、中央にいくつか机があり、壁には本や薬草などが置かれている。
机の上には実験室のようにいろんなものが置かれていた。一番中央にある大鍋は何を煮立ててるんだ?
「誰じゃ?!」
おっと、住人がいたのか。
「私はトラップに引っかかった一介の冒険者です。外に出れる方法を探してるのですが?」
後ろから声をかけられたので、振り返りながら言い訳を述べると、そこには骨と皮だけの体にローブを纏った魔物がいた。
「なんじゃ、冒険者か。
人間を見るのも数千年ぶりかのう。良い良い、茶でも進ぜよう」
なんだかフレンドリーな魔物だ。
鑑定すると、リッチとでた。アンデッドの王様じゃないか。やばいやつだよ。この世界ではどうだか知らないけど、一説によると、魔術を極めた人間が不死になる事で生まれるのがリッチだとも言われていたはずだ。
「お主、勝手に鑑定するのは礼儀知らずじゃぞ?」
気付いてましたか。すいません。
「すいません、リッチとあったのは初めてだったもので。
ところで、ここはどこなんでしょうか?」
「まあ、茶でも飲んで落ち着くが良い。
最近の外の様子なんぞ聞かせてくれてもいいんじゃぞ?」
何やら茶色い飲み物を渡された。ビーカーに入れて渡すのはやめてほしい。お茶だと言われても怖くて飲めません。
「まあ、なんじゃ、ワシも元は人間じゃ。お主の懸念も分からんでもない。じゃが、ここは素直に口をつけた方がいいんじゃないかの?」
なら普通にコップに入れて出してください。
この実験室のような場所で、中央では訳のわからないものを煮立てているのに、怪しい茶色い液体を出されても飲めません。
「ほれ、ワシが先に飲もうじゃないか。
どうじゃ、大丈夫じゃろう?安心して飲むが良い」
アンデッドが大丈夫でもこちらは人間です。
「ふむ」
ゾクッ
俺の体を魔力が駆け抜けていった。
なんだ今のは?今までいろんな魔法を見てきたけど、こんな感触は初めてだ。
「なるほど。この世界の者じゃないか。
ならばその異常な魔力もわからんでもないな。どういった経緯でこの世界にやってきた?
次元の狭間に落ちたか?召喚されたか?それとも自力で転移したのか?」
なんで異世界出身だって分かったんだ?さっきの魔力か?
「そんな不思議そうな顔するでない。ただの鑑定の魔法じゃ」
「え、鑑定ってスキルじゃないんですか?」
「スキルにあって魔法にないなんて誰が決めたんじゃ?あってもおかしくなからろう?」
まあそうだな。
「それでどうやってこの世界にきた?」
「召喚、でしょうか。自力で来たわけではないのでよく分かりませんが」
「そうか。それは難儀な事じゃのう。うんうん」
リッチと対面してお茶を飲んで雑談してるなんて人に言っても信じてもらえないだろうな。
「お主の疑問に答えておこうか。
この空間はダンジョンにくっつくようにして存在する別空間じゃ。
ワシの研究所といったところじゃの。
どこから入った?転移の罠にでもかかったか?」
「いえ、6層の部屋の隅にあったトラップから転げ落ちてきました」
「あそこか。そういえば塞ぐの忘れておったの。
あそこは昔、外との行き来に使っておった道での。転移出来るようになってからは使っておらなんだが。
ワシ以外が通るとトラップが発動するはずじゃが、もう壊れておったのかもしれんの」
「いえ、転がり落ちたと後に、崩れ落ちるように穴が塞がりましたので、それがトラップなんだとしたら、生き埋めになる前にうまく転がり落ちたという感じでしょうか」
「ふむ。まあそういう事もあるじゃろう。まあ運が良かったの」
「それで、ここからの出方なんですが。。。」
「うむ。出入口はお主が転がり落ちたというその穴が一つだけじゃの。
ワシは転移で出入りしとるから不便は感じ取らんし、余計な者が来ないからその方が都合が良いしの」
やっぱりあれしか出入口はないのか。
「じゃが、帰りはワシが送ってやろう。
久々に会えた人間じゃ。そのくらいはサービスしてやろう」
「じゃあ、早速お願いします」
「まあそう急ぐでない。
まずは茶でも飲むがいよい」
いやにお茶にこだわるな。ビーカーに入ってるお茶なんて飲みたくないけど、ここは素直に従っておくか。正直この空間では戦っても勝てないだろうしな。
俺の<暗黒魔法>はレベルだけのハリボテだしな。
この魔物はリッチなんだし、<暗黒魔法>はお手の物だろう。
「ではいただきます」
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