242 ミスギルの街 オークション
「ジン様、博物館で聞いたのですが、明日の晩にオークションが開催されるそうですわ。
博物館に展示するほどでは無い工芸品やダンジョンから出土したアイテムなどが出品されるそうですわ」
「俺たちでも参加できるのか?」
「ええ、入場料として金貨1枚払えば誰でも参加できるそうです」
それは是非参加しないと。
レアなマジックアイテムでもあれば是非購入したい。
翌日の夕方、俺は一人でオークション会場に来ていた。リリアも来たいと言っていたのだが、一人金貨1枚もするのだ。欲しいのがあるならともかく、何の情報も無い段階では払えない。
「はい、金貨1枚確かに。ではこの番号札をお持ちください。入札する際にはこの番号札を上げて反対側の手でハンドサインを出してください。視力のいい獣人が会場中を見ていますので、隅っこにいても参加できますよ」
いくつかのハンドサインを教えてもらって会場に入った。
「12番の商品は芸術家トーマスの描いた油絵で、タイトルは『ひまわり』です」
「103番の商品はダンジョンから出土したミスリルのナイフです。ミスリルの含有率が90%で魔力の伝導率が非常に高い商品となっています。金貨12枚からスタートです」
「次の商品は242番、『預言者の手帳』です。ただこれは鑑定書がついていませんのでご注意ください。開始は銀貨1枚からです。ありませんか?」
何?預言者の手帳だと?タイムリーじゃ無いか。真贋はわからないらしいが、銀貨1枚からスタートだ。落札してみてもいいだろう。
俺はハンドサインを出して入札する。
「銀貨1枚ありました。銀貨2枚出ました。他ありませんか?」
「倍で銀貨4枚、さらに倍で銀貨8枚。他はありませんか?」
なんと競ってくる人がいた。ローブで顔を隠しているのでわからないが、俺の倍入札をさらに倍で返してきた。
こうなると、手帳の真贋も考えなくてはならない。これ以上の価値があるのか?あの競ってきている人は何かの自信があって入札してるのでは?
考えれらえる事はいくらでもあるが、とりあえずはまだ小遣いの範囲内だ。
「倍の銀貨16枚出ました。他はありませんか?銀貨17枚出ました。他はありませんか?」
微妙に上げてきたって事はこの辺が資金の限界か。なら一気に決めてしまおう。
「倍の銀貨34枚!他はありませんか?無いようですので銀貨34枚で落札です。落札者は、このあと引き渡しがありますので、引き渡し所にお越しください」
「では次です。。。」
俺はさっさと手帳が見たいので残りのオークションは放り出して引き渡し所に向かった。
手帳の中身は日記だった。それも食事に関する詳細なレポートだ。
○月○日
今日はオークのステーキだ。塩が少し強めだが、オークジェネラルの肉だというからこのくらいのパンチが必要なのかも知れない。ハーブが使われていないが、珍しい肉の味を前面に出したと考えるのが良いか、経費を浮かせたと考えるのが良いのか。
○月x日
今日はたんぽぽのサラダだ。鶏肉の前菜としてはアリかも知れないが、こんな雑草は一度食べれば十分だ。塩茹でしてあるようだが、ちょっと青臭い。ナバナのサラダの方が合うように思う。
こんな内容が20ページほど書かれていた。
なんでこれが預言者の手帳なんだ?預言者の『預』の字も無いが。
ふと最後のページを見ると、『預言者』とサインが書いてあった。いや、預言者の名前が書いてあったんじゃ無いよ?そのまんま『預言者』って書いてあったんだ。
確かに預言者の手帳だけど、これじゃ詐欺だ。
「すいません、あなたが手帳を落札した、、、おや、あなたですか。昨日ぶりですね」
声をかけてきたのは昨日案内してくれた学芸員の人だ。
「出来れば手帳を一読させていただきたいのですが。もちろんお金は払います。銀貨10枚でいかがでしょうか?」
かぶっているフードといい、多分俺と競り合っていた人だろう。なるほど、歴史がライフワークだとあの『預言者』の響きにつられたのか。
「はあ、これにそんな価値は無いと思いますけどね。どうぞ」
「では、、、これは、、、なんでしょう?」
「さあ?詐欺だと訴えたら勝てますかね?」
「いやあどうでしょうか。確かに鑑定書はついてないと説明されてましたからね」
「やっぱりですか。はあ、無駄な出費をしました」
「まあ、発掘とはそういうものですよ。本物を見るためには偽物を見抜かないと」
俺たちは話してるうちに意気投合して飲みに行った。
「ジン様がオークションから帰ってきませんわ。もしかして美人の奴隷とか購入してたりして。いえ、ジン様はそんな方ではありませんわ」
そんなリリアがいたとか。
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